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いのち、かがやく 深呼吸 いま、「協同」が創る2017全国集会

滋賀の生協 No.178(2017.12.21)
いのち、かがやく 深呼吸 いま、「協同」が創る2017全国集会
第15分科会「協同組合の歴史的・社会的使命を問う」
市民主体の社会づくりの担い手として、協同組合を展望する

2017年10月8日(日)9時30分〜15時30分 龍谷大学瀬田キャンパス
toku178.png第15分科会では、「市民主体の社会づくりの担い手として、協同組合を展望する」をテーマに、JA福井市、福井大学学術研究院、滋賀県生協連、ワーカーズコープ労協センター事業団神奈川、JAおうみ富士の5団体の事例報告に基づき、ICA第6原則「協同組合間協同」、第7原則「コミュニティへの関与」の具体的展開を探りました。

 なぜ協同組合は生まれたのか
◆協同組合研究所理事長
 島村 博氏
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 1980年代以降、小さな政府、公営企業の民営化、行政機能のアウトソーシング化などが推進され、誰もが居場所や役割が持てる「社会国家」からの離脱が始まります。公共領域の削減で、技術や就労経験のない若者、女性、高齢者、障がい者などの使い捨て労働が一般化し、格差や貧困の拡大固定化がもたらされています。

 こういう状況下、90年代半ば以降、国際社会は協同組合に対し、熱い共感と期待を表明します。国連では毎年のように協同組合に対する年次報告書が出され、ILOは「新協同組合勧告」を、2001年から2年にわたる論議の末採択。それに引き続き、ILOとICAの共同活動の強化、持続可能な開発目標(SDGs)の設定と協同組合の役割が記されました。

 翻って、わが国の協同組合はこのような関心や期待に対し、必ずしも足並みがそろっているとは思えません。TPP批准に対する対応でも、協同組合陣営が総体として明確な意思表示を行うに至らなかった。協同組合はこの社会において何を果たさなければならないのかという点で必ずしも合意が得られていないという事の証だと考えています。

 協同組合、協同組合法制というのは、どういう状況の中で成立したのか。

 プロイセン協同組合法、フランスの協同組合の規定に関する法は、それぞれ1867年3月、7月に制定されたものです。

 イングランドの協同組合法は、1852年に「産業節約法(the Industrial and Provident Societies Act)」という名で制定されています。Providentとは節約。共同購入で、消費物資を市場価格よりも安く手に入れる協同組合という意味です。
Industrialとは製造業、事業者、労働者の協同組合という意味です。プロイセン協同組合法も、フランス協同組合法も、生活協同組合についての記述はありますが、冒頭に置かれているのは、労働者協同組合です。

 往々にして、協同組合の発祥は生活協同組合と語られがちですが、労働手段も生産手段も所有しない働く者が、劣悪な市場経済の下で生き延びていくためには、自分たちで協同して仕事を起こさなければならないという時代があって生活協同の設立という動きが、また、独立自営農民の貧困化があって農民の信用組合、農業協同組合の設立という動きがくるわけです。日本では労働者協同組合は新参者の協同組合ですけれども、欧州では労働者協同組合が、時代の流れの中で必然的に先行して登場したものだということです。

 2点目は、フランスの国会やプロイセンの下院・上院の議事速記録をみましても、「社会的貧困の克服に向けて協同組合が納めてきた成果は明白である。これを制度として法で認める必要がある」となっています。協同組合は、出発点から貧困の克服や、労働法の及ばない働き方の社会的保護を課題として登場してきたという事です。

 3点目は、協同組合は株式会社に先行して、「準則主義(行政機関の裁量や許認可によらずに法律の規定に則っていれば法人格が付与される)」により設立が認められています。欧州では、旧体制(アンシャン・レジーム:フランス革命以前)の象徴としての認可制をいかに退けていくかということで、国会の論戦が広げられます。

 4点目は、労働者協同組合では、女性たちには民法上の契約を締結する能力がある者として、組合加入契約、自らの労働条件の向上に対する意思表明、組合の運命を決する議決への参加が認められていた。国家行政、国家組織先行して、協同組合ではすでに女性の地位が認められていたということです。

 こういった時代に、協同組合、特に労働者協同組合は、単に自分たちの労働条件、生活条件の改善のみならず、社会革新も射程に収めていました。しかし、1871年、パリ市民の武装蜂起と政権奪取、その後の軍事力による粉砕という「パリコミューン」で悲劇的な幕を迎えます。私はこの時期までが労働者協同組合の「第1の時期」と総括しています。全うな働き手として認められることなく、生活の維持ぎりぎりの労賃で働かせる粗野な労働市場、「商品市場に対する対抗物」として、初期の協同組合、労働者協同組合は存在していた。

 その次の「第2の時期」では、株式会社に代表される「営利組織に対する対抗物」、非営利の共益団体として自分たちを再構成し、欧州では1980年代まで続きます。

 そして、「第3の時期」。1980年代以降は、新自由主義の労働と、生活と、地域社会の生存生活環境の破壊の中で、「公共的役割」をも自らの役割とする時代がやってきた。

 20世紀と21世紀の間では、ヨーロッパで「社会的経済」「連帯経済」という経済観念も登場してきます。単なる非営利の共益組織にとどまらず、社会的に有用な事業を行い、なおかつ労働市場から排除されている方々の労働の機会を創出し、地域社会の持続可能な発展を促す。これが社会的経済、連帯経済の属性です。協同組合に限らず、営利企業も社会的に有用な事業を行う場合には、連帯経済の1翼とカウントします。

 協同組合が営利企業の対抗物として自らの存続の意義を示すのではなく、営利企業が協同組合に対し己の存続意義を証明しなければならない時代がやってきたと、私は考えています。商品市場に規定されない労働秩序を作り上げる機会が社会的に認められる時代がやってきた。その1つの仕組みとして、私たちは日本で労働者協同組合の法制化を求めている。その意味では時代に最も即応する社会システムとして期待されるものではないだろうか。

 同時に、原始協同組合運動が担っていた、社会的貧困との闘いという機能を、1980年代以降、猖獗(しょうけつ)を極めている新自由主義の経済合理主義に対する対抗物としての役割を、新しい局面で担う時代が来た。新自由主義が貧困をもたらしたという指摘は簡単ですが、実は新自由主義自身が自らを否定する社会的経済、連帯経済をこの社会に行き渡らせ、醸成しつつあるということだと思います。

 JA福井市の地域包括ケアシステム構築に向けた構想と課題
〜限界集落での活動を事例として〜
◆JA福井市殿下ふれあい支店長
角野 淑枝氏
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 今日お話する高齢者福祉活動に携わる組織は、「JA女性部」が2,260人、助け合い組織である「ふれあいわかば会」が254人です。

 高齢者福祉の重点活動は3つです。

 1つは、生きがいづくり活動。高齢者が目標をもって毎日の生活が送れるように、また社会的にも家庭内でも存在感を自覚できるように活動を組織し、啓発を進めます。営農指導としての生きがい農園、年金友の会の万年青年活動、グランドゴルフ等のスポーツです。

 2つ目は、健康を守る活動。健康で社会生活が送れるよう、地域全体で支える活動です。JA各組織、県厚生連、福井市保健センター、地区社協等と健康推進会議をつくり、健康教室、健康診断・人間ドックの受診促進等、健康モデル組織活動と連携しながら進めています。

 3つ目は、生活援助・介護活動。1人暮らしや介護を必要とする高齢者に対する支援です。

 「ふれあいわかば会」は、1995年「地域の高齢者は地域で守ろう」をスローガンに35人で発足しました。

 1998年には、「自分が元気・家族が元気・地域が元気」を合言葉に「いこいの場」「1声かけ運動」がスタートし、26地区の組織になりました。

 2008年に、ヘルパー養成が終了しまして資格取得者は200余名となりました。

 現在の活動は、訪問による話し相手・安否確認・情報提供を行う「1声かけ運動」。支店や集落センターに集いミニディサービスを開催する「いこいの場」。年間を通じて定期的に開催する「いこいの場」活動である「みんなの広場」。支店を会場とした年金受給者「万年青会」向けの「いこいの場」活動である「なごみの日」。特定健診、ディサービス事業の協力をいただいた「ボランティア」等です。

 私たちの高齢者支援活動は、組合員や地域住民が自分自身の生きがい活動と自己実現するための活動として継続されています。また、支える人、支えられる人の枠を超え、お互い様(相互扶助)の精神で地域交流を促進し「地域力」の強化が図られてきました。

 JA福井市福祉活動の使命は、1つは、地域に見合った福祉活動の継続です。地域によって状況は1律ではありません。まず要望や思いを把握する。そして、出来ることを出来る人が、共に手を携えながら、継続して活動が進められるようサポートする。

 2つ目は、地域包括ケアシステムの構築です。組合員、地域住民、行政、地域包括支援センターとの接点を増やす事が必要です。助けあい活動、営農活動、生活文化活動、健康管理活動等をとおして地域の情報を共有しながら進めていくことが大切だと思っています。

 JA福井市の地域包括ケアシステム構築に向けた構想と課題
◆福井大学学術研究院医学系部門 看護学領域地域看護学
北出 順子氏
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 福井市の地域包括ケアの話です。

 私は、福井大学で、公衆衛生看護学で保健師の養成をしております。

 保健師は看護師と違い、地域を基盤に健康問題を考えます。ですから、地域の情報収集、人々の暮らしぶりや価値観を学ぶ「地域診断」を行います。全国の大学で、学生に地域診断の機会を提供していますが、時間は限られており体験程度にとどまっているのが実情です。

 本学では、2007年より保健師過程の授業(3年前期・選択制)の1環として福井市内の各地域に出向き、地域診断演習を行っていまが、教員主導での地域診断の体験しかありませんでした。そこで、2015年から学生の夏休み期間を利用し、福井市内の地区に出向き、「地域診断合宿」と称した学習の機会を設けています。

 「地域診断演習」は、20人弱の学生が、約3時間で下調べし3時間地区に出向きます。しかし、これだけでは足りないので、夏休みを利用した「地域診断合宿」も実施しています。参加者は、保健師志望の看護学生、地域医療を志す医学生、関心を持つ卒業生等です。本年度は福井市内の49地区の中の1地区、殿下地区で実施しました。地区を歩いて住民の方と話をする機会も設けています。参加者は、卒業生と話せることや、病院での患者さんがどんな風に入院してきて退院するのかという話も聞けるので非常に有益だと話しております。

 保健師を志望している学生は、授業と演習・実習を交互に重ねますので、得られるものが非常に多かったという意見でした。

 医学生にはこういう演習・実習はございません。「専門職が知識のない一般住民に対して指導しなければならない」と習っているようですが、「住民が持っている力というのもある。専門職と住民が、お互いに得意分野を出し合っていく。そのためにまず相手が住む土地と文化と価値観を知らなくてはいけない」という意見がございました。

 専門職をしておりますと「正しいことはこれだ」と一方的に押し付ける機会が多くなりがちです。しかし、人それぞれ幸せは違いますので、「私が思っていることが万人に通じるわけではない」という限界を知ります。「何が幸せなのか」を、まず相手から知る機会を提供していただいていると認識しております。

 最近我々の業界では「他職種で協同しなさい」と言われております。これはもちろん一般の住民の方も含む「様々な人々と協同できる下地づくり」が必要になる。

 JA(特に単協)の、地域の隅々にまで出ていらっしゃる活動は、1つは地域医療・地域保健・地域福祉等を学ぶ学生たちにとって非常に貴重な教材の機会となっています。

 もう1つ、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の実際を目の当たりにできる。これも学べる場として提供していただいています。

 そして、最終的には行政と協同できる組織づくりに貢献していただきたい。地域の隅々にいきわたるサービス、見守り活動等、行政ができない事、限界を担う組織の役割を学ばせて頂いて、手をつながせて頂く役割が大きいなと思っております。

 いろいろな協同組合があるという事も、この協同集会で分かりました。いろいろな方々と力を合わせて、お互いにできることをやっていきたいと考えました。

 協同組合の歴史的・社会的使命を問う
IYC記念滋賀県協同組合協議会のとりくみから
◆滋賀県生協連専務理事
西山 実氏
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 滋賀県生活協同組合連合会は1981年8月設立。2017年3月末現在、地域生協、共済生協、大学生協、医療生協、職域生協、住宅生協等で構成される14生協(会員生協11、協賛会員3)、組合員41万4000人、総事業高428億円、出資金総額132億円の連合会組織です。ワーカーズコープも賛助会員として参加頂いております。

 滋賀県生協連の重点課題は、教育研修活動と会員生協の活動支援・交流連帯活動、県行政や諸団体とのネットワークを通じた地域社会づくりへの貢献、会員生協や地域諸団体との協力による消費者問題・平和・福祉・環境・防災・食の安全安心の取り組みです。

 2012年は「国際協同組合年(IYC)」でした。テーマは「協同組合がよりよい社会を築きます」でした。これは協同組合がもたらす社会的経済的発展への貢献が国際的に認められた証で、特に協同組合が貧困削減・仕事の創出・社会的統合に果たす役割が着目されたものです。この国際協同組合年を契機として、全国で県内組織が作られました。

 滋賀県においても協同組合間の協同・連帯の活動を創りだし、IYCが掲げる目的達成に向けて「IYC記念滋賀県協同組合協議会(2012年国際協同組合年滋賀実行委員会」を立ち上げ、国際協同組合デー記念学習講演会「地域から再生可能エネルギーの普及〜安全で持続可能なエネルギー社会に向けて〜」を開催しました。又、ファイナルイベントとして、「協同組合がよりよい社会を築きます〜琵琶湖の水環境と農林水産業を考える〜」を開催しています。森林と琵琶湖の関係、林業女子の活動、漁場の環境悪化と漁獲量の減少の関係等を、次世代を担うJA、漁協、森林組合の青年に語り合っていただきました。

 2014年には、地域との連携でつくる協同組合のバリューチェーン(価値連鎖)で、作る側、売る側、使う側、食べる側の持続可能なコミュニティづくりの学習を行いました。2015年は、フェアトレードの現状に学び、日本の農林水産業の生産分野と消費者・地域との連携のあり方や、協同組合が担うべき役割と機能は何かを考え合い、持続可能な協同の価値を追求しました。2016年は、TPP批准が大きな影響を及ぼすということで、グローバル社会、経済至上主義の協同組合への圧力があるととらえて、農業政策だけでなく、TPP問消費者の暮らしへの影響について考える機会を持ちました。

 この間の政府主導による「農協改革」については、滋賀県農業協同組合連合会・滋賀県生活協同組合連合会・滋賀県漁業協同組合連合会・滋賀県森林組合連合会の4者で、「①私たちは、ICAが定める協同組合の定義・価値:原則に基づき運営されている②それぞれの協同組合の事業は、その構成員である組合員が決定するものであり、政府等の意志で決定されるものではない③協同組合は、所得格差や地域格差が広がっている中で、安心して暮らせる社会の実現を目指す上で大きな役割を担っており、ユネスコ無形文化遺産に登録されたように国際機関からも大いに期待されている④政府には規制改革の名の下に協同組合の自主性・主体性を制限するのではなく、協同組合の発展・成長を促すような政策を求める⑤今後とも、それぞれの協同組合の期待に対して10分に応えられるよう取り組んでいく」という内容の共同声明を採択し、協同組合組織としての宣言掲げました。

 2015年に、被ばく・終戦70周年を迎えましたが、私たちは「戦争の記憶をつなぐ会」を立ち上げ、戦争の記憶、体験談を聞き、広げる活動を続けております。

 また、消費者市民社会の実現を「消費者ネットしが」というNPOを支え、消費者市民社会、エシカルな消費者社会に向けて、共同で学習やシンポジウムを開催しております。

 滋賀県とは「高齢者に向けた消費者被害 防止のための啓発に関する協定書」をコープしが、と健康医療生協が締結しました。

 大学生協では、消費者被害の未然防止のためのキャンペーンを行っています。また、滋賀医科大学での、がん患者さんやそのご家族さんを支援し、地域全体でがんと向き合い、がん征圧をめざすチャリティーイベントにも参加しています。

 コープしがでは、2012年国際協同組合年から、4つのJAと相互連携を強める目的で、生産現場に消費者が出向き、田植えから収穫まで1連の作業に関わり、生産の現状を知る機会を設けています。また、1人暮らしの老人に、夕食弁当を週5日間宅配していますが、その中で、安否確認を行っております。東近江市の委託事業として、「見守りおむつ宅配便(乳児おむつ等支給事業)」を行っています。市内在住で満1歳未満の乳児を養育しているご家庭に、毎月、乳児に必要なおむつなどを宅配し、声をかける中で必要に応じて市の子育てサービスへつなぐ橋渡しを「見守り」として実施しています。電力の小売が全面自由化されたことに伴い、可能な限り環境に配慮した電気を供給し、環境に貢献することも含めて「コープでんき」のご案内をさせていただいております。

 2012年は、私たちにとっても貴重な年でした。農協との関係は以前からありましたが、この年を通じて生協連、農協、漁協、森林組合だけでなく、いろいろな協同組合組織との連携ができました。今まで生協の組合員と労金の相互利用というのはありませんでしたが、国際協同組合年を機に、生協の組合員が労金を利用できることになり、近畿労金と2府4県の生協との連携が強まりました。

 最後に、協同組合の良さを誰が知らせるのか。協同組合が良い、価値があると認識した者が発信しないと誰も聞いてもらえません。生協の価値を見出した私たち自身が発信しなければいけない。そんな問題意識を最後に発言させていただいて、報告とさせていただきます。

 神奈川県協同組合連絡協議会の取り組み
◆ワーカーズコープ労協センター事業団 神奈川事業本部本部長
尾添 良師氏
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 2012年の国際協同組合年をきっかけに、IYC神奈川県実行委員会が結成され、その連携が大きく発展しました。

 IYCの取り組みを1緒にしていく中で、「ワーカーズコープを加入させたい。必ず生協連にとって意味がある」と当時の専務におっしゃっていただき、2013年、神奈川県生協連に賛助会員として加盟しました。

 神奈川には、労働者協同組合が私たち以外に、ワーカーズコレクティブ(生活クラブ)、ワーカーズコープ・キュービック(ユーコープ)があります。

 この3つの団体で、2012年から、就労経験のない若者や雇用機会に恵まれない状況にある若者が、活躍できる場をつくりだすプロジェクト、「くらしのサポートプロジェクト(買い物サポートや、生活サポート等)」という事業を1年間の委託事業としてやりました。それをきっかけに、昨年再び、中間的就労(すぐに 就労することが難しい方に、準備段階として、公的支援も受けながら、日常生活での自立や社会参加のために働くこと)ではなく、「就労支援そのものを自前でやろう」ということで「働楽(はたらっく)就労支援センター」を立ち上げました。

 そして、2017年、「神奈川県協同組合連絡協議会」が発足しました。

 神奈川の協同組合提携は組織的には、1982年の農協・生協・漁協の県組織実務担当者による研究会の設置まで遡ります。そして、1986年に農協・生協で「神奈川県協同組合提携推進協議会」を発足、1987年には農協・生協・漁協組合員の交流を目的として第1回「協同組合のつどい」が開催され、1988年に県漁連が正式加入しました。

 一方、2012年、IYC神奈川県実行委員会が結成され、その後、労働者福祉協議会、労働金庫、共栄火災海上保険、消費者団体連絡会やNPO等、27団体が参加する「神奈川県協同組合連絡会」という後継組織できました。この組織と「神奈川県協同組合提携推進協議会」で、「神奈川県協同組合連絡協議会」を発足させたわけです。

 2016年8月末に、提唱者である生協連の事務局長とJA改革対策本部長から、「今後神神奈川県協同組合連絡会のあり方を変えたい。漁連、森林組合、労協、ワーカーズコレクティブを幹事団体に入れたい」という話がありました。その時、JAの方が「私たちが期待しているのは地域づくりだ。生協では組合員以外の活動が難しいし、農協は株式会社化しているという悩みもある。今農協は改革段階ではあるが、協同組合のアイデンティティをどのように組合員に伝え、行動していくかという事を悩んでいる。なので、地域づくりに期待する労協にどうしても入ってもらいたい。労協を幹事団体に入れるのは、農協にとっては起死回生の策だ」と言われたことが印象的でした。

 「協同組合運動の発展と住みよい地域社会づくりに寄与する」を目的とし、協同組合提携の道筋を3つにまとめています。

 1つ目は「地域農林水産業・地域経済の振興」。農業と都市が共存できるまちづくり、新鮮・安全な地域農水産物の供給と消費拡大、事業の相互補完・共同利用の促進。

 2つ目は「健康で心豊かなくらしの創造」。地域福祉ネットワーク構想づくりと活動の促進、健康づくり運動の推進、地域における交流促進。

 3つ目は「平和で緑豊かな環境の形成」。自然環境を守る構想づくり、大規模災害の対応と対策構想づくり、国際交流の促進。

 参加組織は、神奈川県内の農協、漁協、森林組合、労働者協同組合など83組織。代表にはJA県中央会の髙桑光雄会長と県生協連の當具伸1会長が就任。県域の協同組合提携組織で単位組織を会員とするのは全国で2例目。全国初の取組みとして協同組合に造詣の深い大学教授6人がアドバイザーとして加わっています。

 主な活動としては、毎年開催され今回で30回目となる「協同組合のつどい」を、連絡協議会として初めて開催し、約200名が参加しました。漁協と農協の連携の話、3つのワーカーズの発表。その他の取り組みで、森林組合の森林散策や茶摘み体験、160人参加の地引網体験には、漁協だけでなく農協も野菜を提供してバーベキューも行いました。

 今後の計画は、関東学院大学の公開講座に私たちが参加したり、地産地消、TPP問題、協同労働の協同組合法制化の学習会もやりたいと思っています。「協同組合フェア」等も地域ごとにやっていこうということです。賀詞交歓会などの交流会、認知度を上げるための愛称募集ホームページの開設等も計画しています。

 例えば、やまゆり生協と1緒に立ち上げた保育園や「子ども食堂」等、お互いの取り組みに学び自分たちの地域でやっていく、私たちも協力してパルシステムを退任された理事が武蔵小杉で保育団体の活動をする、私がパルシステムの外部理事になる、JAから紹介された日本情報学会理事に情報の指導を受ける、協同組合法制化の学習会をワーカーズコレクティブや生活クラブと60名の参加で開催する等の繋がりが生まれてきています。

 今後は、代表者でなく、300万人組合員自体が繋がることが最も大事だと思います。農協や生協の事業所どうしももっと繋がり、例えば私たちが高齢者の「足」の問題で悩んでいる鎌倉の地域には、農協、漁協、医療生協、生協もあるので、生協の垣根を取っ払って仕事を作るなど、そういったこともやっていければと思っています。

 最後になりますが、これは神奈川県連絡協議会だけではなく、生協連としてでもあるのですけど、労福協やYMCAと1緒に、神奈川県連絡協議会よりももっと大きな枠組みで「フードバンクかながわ」を作ろうということで来年4月からスタートする予定です。そういうことで、協同組合連携にとどまらず、「地域を良くしたい」と願う人たちと沢山連携して社会を変えていきたいと思っています。

 協同組合だからできること
◆JAおうみ富士 食育園芸部長
川端 均氏
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 ファーマーズマーケットの運営担当をしています。

 オープンしたのが10年前です。100人の農家でスタートしました。今571名です。私どものお店は、「つなげる。食べる。まねく。つくる」がキーワードです。朝、農産物直売所に荷物が寄ってきます。その荷物を使って、弁当も農村のお母さん方が作ってくれます。メインはバイキングでお料理を提供して楽しんでもらいます。

 大根を作る人も、大根を料理する人も高齢化してきています。それを農村だけでカバーできません。そういう状態ですので、やはり農村に人を送ってもらえるようにならないと草も生えてしまうという危惧があります。

 ということで、20年先を見通しています。若者・大学生に「大根や水菜やニンジンを作ろう」と言っても作りません。でも、「何が食いたい」と言ったら「鍋が食いたい」「じゃあ鍋を食えるようにしよう」というプロジェクトを動かすと、90日間、鍋を食べるための作付けが始まります。この列大根、この列水菜、この列人参、この列白菜と植えてもらうんです。そして収穫の時に列の先に鍋を置いて。列ごとに、みんな1つずつ違う野菜を持ち寄って「これはおれたちが作った鍋や」と言って食べます。

 「青空フィットネスクラブ」。これはコープしがさんとのタイアップの端緒となりました。現在参加者は主婦の方々50人。農業をやっているおじいちゃん、おばあちゃんが動けなくなれば私たちが守をしなければならないので「教えてください」という方もいらっしゃいます。マンション住まいで「土がないところなのでお手伝いに来ました」毎回、大阪から犬を連れてこられる方もいらっしゃいます。年間約20回、ある意味レクレーション的にやりながら、ホンマものを作っていただいています。

 私どもの直売所の構成員は60歳の方が3分の1。定年退職をされて「少し農業をやってみようか」という方が増えています。農業はやっているのですが、商品はできておりません。慣れるまでには3年から5年掛かります。

 若者が4分の1。但し面積はでかいです。農業の法人化、担い手づくりが進んでいますので、そういう若者が結構います。しかし、この人は見渡す限りキャベツ、この人は大根となるので、いろいろな弁当が作れません。効率を求めるとそうなってしまいます。

 実際に農村を支えてくれる70代、80代の「匠」と呼ばれる方々。この方たちに「一般衛生管理」と言っても聞く耳を持ちませんが、事故も起きません。ここをどうするかが我々の仕事になります。これを「農育」と位置付けています。

 これは我々だけではできませんので、7、8人の龍谷大学の学生に来ていただいています。「農ディレーター(農業をコーディネートする人)」を目指してもらいたいと思っていますが、その前に「畑のガイド(畑の案内人)」になってもらいたいということで、野菜を作ってもらっています。これは私のお店の売り上げです。

 「ファーマーチャレンジ隊」は、コープしがと4つのJAでやっています。「芋焼酎1210」は、2012年10月に協同組合年で調印をし、協同組合間連携で300人のコープ組合員とともに作った焼酎です。9800本のサツマイモを組合員に植えて収穫してもらい、欲しいだけ持って帰ってもらおうと思ったら、小さなサツマイモしか持って帰らない。「なんでですか」と聞いたら「2人暮らしやから」「料理しなくてもチンできるから」。ということで、地元の酒蔵さんに相談して生まれたのが「芋焼酎1210」です。

 20年先の方々、数年でリタイヤされて故郷に帰る方々、学校の先生、いろいろな方々を交え、田植えから始まっていろいろな活動をしている。これを運営しているのは集落営農の農家です。「100人田植え」で募集しましたら200人参加して握り飯が足らなくなりました。

 都市周辺の13万8000人、4万4000世帯の人々の中に、ファーマーズマーケットはございます。農家は571人。畑にモノはありますが、農家は手がないので出荷ができない。生産量の限界です。おいしいものを食べたら「もっと食べたい」とお客さんは来て下さるのに、何も売っていない。これではいかんので「せめて土・日なんとかしよう」と、長靴、手袋、ヤッケを店に用意して収穫をしてもらう。利点は自分が収穫したのでノークレームです。これをエスコートする「畑のガイド」を、大学生の方々にお願いをしています。

 このように、農業を知らなくても、種の撒く時期や方法等は、農家先生がいますので問題はないです。「参加をしよう」「少し暇になってきたらやってみよう」という目線を持ってもらうことが大事ではないかと思います。

 年間3000名の来店客以外の訪問者の1割、昨年は420名が海外の方です。そういう人を対象に、地域の食産業やホテル業の方々と連携をし、エリアで対応できるよう工夫をしています。うちのお弁当にはご飯が入っていません。「和食文化」をキーワードに、巻き寿司つくり体験をしていただいています。「農業体験」はつぶすまえのいちごを穫ってきてもらい、餅つきをしていちご大福をつくります。これで2時間ぐらい遊んでもらえます。春は、カッパを着て畑の菜の花を摘み取っていただき、ハンカチ、バンダナ、スカーフを草木染にして持って帰っていただきます。

 多様な人々の輪を作ろう。農業をやったことはないけど、いろいろな技術を持っておられる方の輪ができれば、普通の大根も素晴らしい大根に変わるかもしれない。20年先を見通して高齢者と子どもたちのつなぎ役になろう。そして、他産業からの要望を受け、ノーと言わない店づくりを考えています。

 地域の課題ごとにどう取り組んでいくか
◆龍谷大学農学部教授/日本協同組合学会会長
石田 正昭氏
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 コミュニティ、日本語に訳すと地域社会、communityの「com」とは「〜になる」という意味です。「unity」は「1つ」という意味です。従ってcommunityとは、その構成員の人たちが「1つになる」ということです。

 我が国の場合、都会にしても、農村にしても、そこに住んでいる人が同じようなタイプで、くらしもよく似ていて黙っていても1つになれた。お節介なおばさんもいて、いろいろな助け合いの仕組みが備わっていた。しかし現代は、働き場所もバラバラで、必ずしも同じタイプの家々で成立しているわけではない。だからこそ、助け合う、支え合う、分かち合う、つながる、あるいは、SDGsで使われている「包摂」につながってくる。これらの言葉は全部コミュニティと同意語だと、私は思います。

 昨日の全体集会で、山極壽1先生がゴリラの話をされました。人間とチンパンジーはどこが違うかと言うと、チンパンジーは求められたら助けるという能力は持っている。しかし、ホモサピエンスは、相手がどんな状態になっているか、どんなことを求めているかを察して、「共感」し、手を差し伸べることができる。人間は、助け合うことが出来たから生き延びてこられた。しかし、現在はお互いに関与しない。これは「退化危機」だ。そして、助け合いとは「身体と5感の協同だ」「体を使って1緒になって何かをするということが協同の原点だ」というお話でした。

 協同という言葉をお互い認識し合う場合、身体の協同、1緒に汗をかく。そういうワーカーズというのが非常に重要な存在にあるのではないかと思います。

 農協でも生協でも、まわりに働く人達の小さな協同をいっぱい作って、本体と1緒に地域を良くしていくという大きな課題があると思います。しかし、現在の協同組合は、法律も管轄省庁も縦割りになっていますし、農協法で農事組合法人ができますから、ほとんど農事組合法人で組織を作っている。これを、観光部門でも、レストラン部門でも、企業組合、株式会社ではなく、ワーカーズが農協や生協の接着剤になれば、世の中に協同組合の存在意義が知られてくるのではないかと思います。

 もう1つは、農協や生協のまわりに作っている小さな協同、その人たちの思い、わが地域に住んでいる人たちの共通の優先課題は何なのかを突き詰めて欲しい。

 そして、それを誰がやれるのか。どういう能力を持っている人がいるのか。どういう課題を解決してほしい人がいるのか。これをリストアップして突き合わせ、うまくつなげて解決できる仕組みを作らなければならない。

 そして、それを継続する事業として成立させる。それは行政の支援も必要かもしれません。ボランティアが必要かもしれません。有償労働でやるような形、あるいは寄付というような形もあり得る。

 3点目は、「協同組合間協同」です。生協組合員が年金を受け取る、マイホームのローンを組みたい、貯金をしたいというような時に農協と連携する。夕食サポートは、農協がやるより生協にやってもらって、農協が組合員の注文を集めて発注する。こんなことができれば良いと思います。現実にJAおうみ富士、こうか、グリーン近江とコープしがが繋がっておられますが、県下全域で当たり前のようにやれなければいけないと思います。農協のSS(サービス・ステーション)を生協の組合員が利用する。葬祭市場もあります。そういう細かく今やっている事業を取り出して、お互いがやっていることを理解し合えば、もっと違った手の組み方があり得るのではないでしょうか。

 地域の課題ごとにどう取り組んでいくかが、協同組合の価値を産みだします。そのために、トップ層が日常的に顔を合わせて語り合えるような関係を作る必要があると思います。接着剤はワーカーズです。と申し上げて私の話を終わります。

(文責・事務局)