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二〇一五年度国際協同組合デー記念講演会(4)

滋賀の生協 No.172(2015.11.2)
二〇一五年度国際協同組合デー記念講演会
コーヒーのフェアトレードとコメの産消提携
~農業を買い支える仕組みと協同組合~

二〇一五年七月四日(土) 滋賀県農業教育情報センター第三研修室

講師 辻村 英之氏
(京都大学大学院農学研究科准教授)

   産消提携の度合と理念

 二〇〇九年の妥結価格(頑張って、生産者が作り続けられる、消費者が食べ続けられる価格)を見てみますと、生産原価(生産者の立場・事情が反映した、容易に生産・生活を持続できる価格)からは約三〇%低い。しかし、市場価格(消費者の立場・事情が反映した、容易に契約量(一〇万俵)を消費し切れる価格)から考えると、一二九%の価格が実現している。市場価格から二九%引き上げることができる背景には、生活クラブ生協組合員の、「生産者を支えたい」という産消提携の価値観・理念・思いがある。実際、組合員たちは、たいへんだけど頑張って、「理念で食べている」という表現をされています。この提携理念が、「前決め」や「全量買取り」についても、かなり高い提携度合での買い方を可能にしている。

 最近、チラシやインターネットで毎日情報を集め、安売りをしているスーパーでしか買い物をしないという「安売りハンター」と呼ばれる消費者が増えているそうです。この「よいものをより安く」(効用最大化の理念)の反対側に、「消費者が要望する品質の食料を食卓に供給してくれる農業者を、消費者が買い支えたい、買い支えるべきだ」という、産消提携の理念があって、高い提携度合(右上奥の位置)に引き上げるのです(3ページ図2)

   産消提携理念を育む共創メカニズム

 生活クラブ組合員に聞き取りを繰り返していると、必ず出てくるのが、自分たちはただの消費者ではなくて、生産に深く関わっている「生産する消費者」だというスローガンです。具体的には「品質形成」と「価格形成」に参画する、つまり産消提携理念の「要望する品質」と「買い支える」を通した、生産者と共に自らの食料・食卓を創り上げているという高い当事者意識が、産消提携理念を育くんでいると考えます。

 「品質形成」「要望する品質」に関しては、おいしいお米はもちろん、遊佐町の風土に合った米の品種を選んで欲しいという要望、出来る限り農薬を減らしてほしいという要望を、活発な産消交流の機会、例えば七〇年代からずっと続いている消費者が二泊する「庄内交流会」、生産者が関東圏の単協を訪問する交流会とか、生産者を交えた職員の研修会とか、援農もあります、そのような機会に生産者に伝える。そこで意見を聞いた生産者が、消費者の要望を実現しようと栽培実験を繰り返し、その過程でも試食で意見を聞きながら、一緒に米の品質を作り上げていくというのが、品質の共創メカニズムです。

 「価格形成」「買い支える」に関しては、既に説明した通り、生産者代表と消費者代表がそれぞれの立場・事情を反映した価格水準を提示するところからはじまり、両者の議論を経て、妥結できる価格水準を見出していくという、公共討議的な価格形成がなされている。


   農業の持続可能性を保障する買い支えの仕組みとその要件

 以上をまとめると、買い支えの仕組みとして「価格保障」「還元金・基金」「全量買取」「前決・前払」の四つ、それらを可能にする要件として、消費者をその買い支えに誘う「産消提携の理念・規範」、支えたい気持ちを芽生えさす「活発な農業者との交流」、その気持ちを高めて行動へと導く「品質・価格の「共創」メカニズム」の三つを挙げることができる。

   コーヒー・スタディツアーの役割


ルカニ村を紹介する本や絵本を出版
 この「共同開発米事業」から学び、私たちのフェアトレード・プロジェクトにおいて、最近、最も重視しているのが「コーヒー・スタディツアー」です。フェアトレードコーヒーを愛飲してもらっている消費者の方々に、ルカニ村のコーヒー生産者がどういう生産・生活をしているのか、自分たちが支払った高い代金が、産地にどのように届いているのか、どのような成果が生じているかを実感してもらう産消交流の企画です。

 ツアー参加者がルカニ村農協の理事たちと議論できる機会を、必ず設けるようにしています。品質については、「おいしいコーヒーをありがとう」程度ですが、価格水準をめぐり激しい議論になったこともあります。

 しかし二五万円以上かかり、ルカニ村に行ってもらうのはなかなか難しい。そういう人たちに理解してもらうために、本や絵本を出してます。

 ご清聴いただきましてありがとうございました。


コーヒー・スタディツアー

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