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2005年「消費者団体等の企画による学習会」(1)

滋賀の生協 No.136 (2006.2.20)
2005年「消費者団体等の企画による学習会」
「消費者団体訴訟(団体訴権)制度の知識と、近畿圏における新しい消費者組織である消費者支援機構関西の紹介、及びこの組織の活用方法について」

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講演:「消費者支援機構関西」(KC's)副理事長  千神 國夫氏


2006年1月28日 ピアザ淡海 主催 
滋賀県生活協同組合連合会 共催 滋賀弁護士会
消費者被害の未然防止・拡大防止を目的に、消費者団体訴訟制度を活用し、不当な勧誘や不当な契約条項の是正をすすめていく「消費者支援機構関西」(KC's)が設立されました。どんな組織でどんな活動をするのか。千神副理事長の講演です。
新しい消費者組織の必要性

 今日は。ご紹介いただきました千神でございます。

 実は元々私、大阪の「なにわの消費者連絡会」という消費者団体の代表幹事もかねて、大阪府の生協連合会で仕事をやっておりました。

 この制度をつくる段階で、近畿の生協連合会の7府県で論議をする経過がありまた。そういう経過の中で「KC'sの話をせよ」ということで来たわけでございます。

 「KC's」がどのような形ででき、どんな活動をしようとしているかということを、お話を申し上げたいと思います。

 現在非常に多様な消費者被害がおきています。

 例えば、国民生活センターの相談の資料を見ましたら、95年に27万件の相談件数があったんですけど、03年で150万件、04年になりますと183万件という膨大な数の被害が出ています。そのうちの94%のは「取引」に関わる被害なんですね。(下記グラフ参照)



 2、30年前でしたら、「森永砒素ミルク事件」であるとか「カネミ油症事件」であるとかという「商品被害」で、それこそ「買ったら命に関わる」というような被害だったのですが、この間起こっている被害というのは、「取引」にかかわる被害といいますか、極端な話命に別状はない。ただ膨大な借金をして心中をするというようなことになると、命に関わりますけれども、まあ一般的にはそうでないという流れですね。

 具体的には「架空請求」なんかでも、2、3万でしょう。「パソコンのホームページを使って、2、3万払えていないから払え」というようなことで来る。それが「お宅の息子さんだから」というようなことになると、格好悪いから親が払ってしまう。そして後から「だまされた」ということがわかっても、それで裁判はしないというふうなことなんかはあります。そういうふうにして被害がどんどん増える中で、「何らかの対応を」というのは、これまで消費者団体でも非常に大きな課題としては持っていたわけですね。

消費者団体訴訟制度の動き

 そういう中で、政府自身が「消費者行政を基本的に大きく変えていく」という流れがあります。「消費者保護基本法」が「消費者基本法」に変わっていく中で、消費者自身も、「消費者の自立」「自己責任」が問われることになってくるわけですね。

 行政の対応も、「事前のチェックから事後チェックへ」、「悪質業者に対する監視を強化することによって消費者を救済しよう」「消費者は自らの取引は自分の責任でやりなさい」という形に変わってきます。そして「消費者団体訴訟制度」もでき、「自分達で自分達の身は守りなさい」という発想ですね。

 ただ、滋賀県の条例でも、消費者の基本的権利は認めておりますが、消費者に基本的権利を認めて「下駄を履かせた」からといって、例えば業者との交渉能力であるとか、情報の収集能力であるとか、資産とかというものは、事業者側とは圧倒的に違いがあるわけですから、市場経済の中で、自由競争の対等な取引や交渉ができるかというと、そうではないという問題は依然として残ると思うのですね。

 これらの問題に対してどうするかというふうな課題は依然残っております。

 そういう中で、「団体訴訟制度」が制度としてできれば、「それの受け皿の消費者組織を早急に作って行こうじゃないか」という大きな流れがあります。

 東京では、日本生協連が中心に「消費者機構日本」ができていますし、各地で消費者団体、弁護士の先生や、消費者運動の活動家が中心に、「団体訴権の受け皿づくり」の流れができているわけなんです。

消費者団体訴訟制度とは

  「消費者団体訴訟制度」とは、「そもそもどんな制度なのか」ということです。

 これは、消費者の個人に代わって、消費者団体が「裁判」をやる、あるいは被害の拡大を差し止めるために悪徳の業者に「申し入れ」をするというような制度なわけです。つい先日、聞いたところによると、現在開かれている国会で、2月か3月ぐらいに、「消費者契約法の一部改正案」として提案されるということのようです。提案するのは「内閣委員会」だそうです。

 「団体訴訟制度」というのは、今、起こっている消費者被害に対応するためにできる制度でございまして、消費者団体による市場監視を強め、より透明度の高い市場社会を実現しようとする、ある意味では画期的な制度だと思います。もうすでに、アジアでも韓国なんかはこの制度ができて利用されているようです。日本の場合は初めての制度でして、これをどのように実効性のあるものにしていくかということでも、我々は論議をやっているし、制度としては整備していかなければならない。

 この制度ができますと、「団体訴権」を行使できる消費者団体は、法律に基づく基準により内閣府が適格団体としての認証を行います。その基準・条件は、「消費者のために活動するのが目的である」とか、いくつかあります。

 「団体訴訟制度」自体、「消費者契約法」に基づく制度ですので「契約行為」しか対応できない。しかも「損害賠償」を請求するような裁判はできないんです。だから、仮に業者に差し止め」の判決が下りたとしても、業者が「やり得」という構図になってくるので、我々としては「もっと損害賠償も出来る制度をつくって欲しい」とか、民法上の「公序良俗違反」とか、民法上の違法行為に対しても、「差し止めなりができるような制度の改めて欲しい」という要請はやっております。

 「消費者契約法の一部を改正する法律案骨子に対する意見」を、滋賀県生協連からも出してもらったんですけど、いちどお目通しをしていただいたらと思います。(以下参照)

2006年1月24日
内閣府国民生活局 消費者団体訴訟制度検討室
法律案骨子意見募集担当 御中

消費者契約法の一部を改正する法律案骨子に対する意見

1  意見を表明する団体名 滋賀県生活協同組合連合会(会長大田勝司)
2  団体の種類 消費者者団体
3  住所 滋賀県大津市京町3丁目4-22 滋賀会館内
4  電話番号 077-525-6040  FAX 077-525-7060
5  当団体の「消費者契約法の一部を改正する法律案(仮称)の骨子(「消費者団体訴訟制度」の導入 について)」に対する意見は以下の通りです。



 当団体は、滋賀県の12の会員生協で構成された「生協連合会」組織です。生協連合会は、事業活動は一切行っておらず、会員生協の指導連としての働き、行政や議会、及びマスコミ等の連絡・調整としての働き等を重要な活動内容としています。又、この間、運動的な取り組みとしては「食の安全・安心」「消費者問題」「環境の取り組み」「男女共同参画の取り組み」「防災関係の取り組み」等を行っています。今回の消費者団体訴訟制度の制度化を迎えて、消費者団体の立場から意見を述べるものです。

第1 はじめに
  消費者団体訴訟制度については、増加し続ける消費者被害の発生・拡大を防止し、被害救済を図る手段の一つとして、また、消費者自身がその権利を実現し、さらに消費者団体の役割を強化する制度として、その早期の実現を強く求めるものです。法律案骨子が公表されたことは本通常国会での同制度の法制化に向けて大きな前進であると考えます。

  しかしながら、法律案骨子には消費者団体訴訟制度が十分にその機能を発揮するには、問題と考えられる内容があります。今後の法文化にあたっては、ぜひ以下の点を改善するよう求めるものです。

第2 「差止請求権」について
1,差止の対象とする実体法を消費者契約法を基本とし、受託者や代理人を相手方とすることができるとした点は賛成しますが、さらに、民法第1条第2項(信義則)、民法第90条(公序良俗)、民法第96条(詐欺、強迫)に抵触する契約条項ならびに勧誘行為についても対象とすべきです。消費者契約に関する消費者被害の中には、消費者契約法で不当とされている勧誘行為や条項より悪質な行為によって生じていながら同法にあたらないとされるものがありますが、上記のような民法の条項によって救済が可能となる例があるからです。
2,少額多数被害者の被害救済や不当な利得の吐き出しのために効果的と考えられる、損害賠償や不当な利得請求などの金銭請求を消費者団体訴訟制度に早期に導入できるよう、制度の見直しについて付則に定めるべきです。そうでないと、確信犯的な「悪徳事業者」の根絶には至りません。
3,事業者団体の作成する標準契約書、管理業者が個別事業者に勧めるモデル契約書などの「推奨」された契約書の中に不当な契約条項が含まれていれば、その影響は大きいものとなるので、不当な契約条項の「推奨行為」そのものを差し止めることができるようにするべきです。

第3 「適格消費者団体」について
1,内閣総理大臣が適格消費者団体を認定することについては賛成しますが、その監督規定にいくつかの問題と懸念があります。これらの監督規定は制度の濫用など不適正な訴権行使を防止するためと考えられますが、過度な監督は本来自由で自立的な消費者団体の活動を抑制し、制度の実効化を阻害する結果となります。
2,訴えの提起等の主要な行為について、内閣総理大臣に報告を要することとなっています。しかしながら、後述のとおり、その前提となっている提訴制限に問題があると考えられますし、内閣総理大臣が公表するのは判決と和解などの結果だけであり、訴えの提起等については公表内容になっていません(2(2)[3]ア参照)。申入書の送付やこれに対する回答結果などについても内閣総理大臣から公表されるシステムがあれば、これらの事実を報告する意味は大きいと考えられます。内閣総理大臣から公表される内容を判決等の結果以外にも拡大すべきです。そうでないにもかかわらず、定期的な情報公開や書面提出、あるいは第三者からの調査もあり得る中で、それ以外に、判決等の結果以外の個別行為についていちいち内閣総理大臣に対して報告しなければならないとするのは合理的理由があるとは考えられません。
3,確定判決に基づく強制執行等で得た間接強制金について、その使途を差止請求関係業務に限定していますが、強制執行で得た金銭の使途は本来自由であり、使途の限定は過度な干渉です。「差止請求関係業務」の範囲も不明確です。
4,差止請求関係業務以外の活動を同業務に支障のない範囲に限定していますが、反対です。既存の消費者団体が適格消費者団体となる場合には、既存の活動が主たる活動となりますが、このような規定があれば既存の活動が十分にできないことになります。消費者団体は様々な活動を通じて多様な視点を持っており、この多様な視点で消費者契約を適正化していくのが消費者団体訴訟制度です。この規定は多様な視点を封じ込める結果となります。
5,専門性を有する第三者の調査を受けるとありますが、「調査」とは何か、「専門性を有する第三者」とは何かがきわめて曖昧です。想定される消費者団体の規模では外部監査が必要とは思われません。適格消費者団体は法人として関係機関の監督を受け、適格性の審査の際に内閣総理大臣の審査を受け、定期的な情報公開をしており、第三者の調査は屋上屋を重ねるものです。消費者団体の自立自由な活動の支障になる懸念があります。
6,政党または政治的目的のための利用の禁止は、禁止対象が訴権なのか団体の活動全般なのか明確ではありませんが、いずれにしても消費者被害の防止、救済には立法や政策に関わる問題が多くあり、従前から消費者団体が行ってきた立法運動や政策実現運動に支障を来すことのないよう限定的に規定すべきです。

第4 「訴訟関係」について
1,原則として民事訴訟法の規定に従うといいながら、重要な点で例外規定があり、今後の本制度の活用において大きな問題点があります。法律案骨子の中でも最も改善の必要が大きい部分です。
2,管轄裁判所については、事業者の営業所等の所在地の管轄を認めたことは評価しますが、消費者団体にとっては、実際に被害が生じている地でその被害の拡大防止を図る活動をしていくことが、被害防止や被害回復にとってきわめて重要であると考えるところから、事業者が不当な行為をしている地を管轄する裁判所でも訴訟が提起できるようにすべきです。
3,同時複数提訴が禁止されなかったことは賛成しますが、他の適格消費者団体による確定判決等が存する場合に、同一事件の請求ができないとすることは強く反対します。この点は、国民生活審議会の報告書で確認された、既判力の範囲については当該事件の当事者限りとすることに反しますし、そもそも消費者団体訴訟制度はそれぞれの適格消費者団体がそれぞれの観点から市場を監視し不当行為を排除していくことによって、消費者被害の未然・拡大防止をして、市場の公正化を図ろうとする制度であることにも反するものです。紛争の1回的解決を強調することは、それぞれの適格消費者団体がそれぞれの観点で差止請求権を行使していくことを阻害するものであり、本来別個の存在である適格消費者団体をあたかも同質のものと捉えるものです。各団体の個性が強く出る和解においても適用されることを考えると、その問題性は大きいと考えます。
以上
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