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消費者支援機構関西の活動とその背景(1)

滋賀の生協 No.138 (2006.10.16)

消費者支援機構関西(Kansai Consumer's Support Organization, KC's)
の活動とその背景
講演I「消費者が取引の主役となる社会のために社会のために」
消費者支援機構関西(KC's)常任理事、
京都産業大学大学院法務研究科 
坂東 俊矢先生

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  KC’s常任理事の坂東と申します。どうぞよろしくお願いします。

消費者支援機構関西が 設立されました。

まず、われわれKC’sという団体がどのような趣旨で、どのような形でできてきたかということですが、設立趣意書で設立目的を「消費者の権利に関して、消費者や消費者団体・関係諸機関・消費者問題専門家等との連携・連絡・助言・相互援助等を図りつつ、消費者の被害の未然もしくは拡大の防止、及び被害救済のための活動を行うことによって、消費者全体の利益擁護を図り、もって消費者の権利の実現に寄与することを目的とする」と謳っています。

 しかし、この中で特に考えておかなければいけないのは、「新しい制度である消費者団体訴訟制度を担う『適格消費者団体』としての活動を見通してできた団体である」ということです。

 したがって、消費者被害の未然防止の活動やさまざまな消費者問題に対する活動を通しながら、団体訴権の担い手としても力をつけていきたいというのが、私どもの考えているところです。


【1】設立経緯

 設立経過につきましては、昨年の12月3日に設立総会を開催いたしまして、今年の4月3日にNPO法人の認証を受け、法人登記をさせていただいたところです。

 理事会は常任理事7人を含めまして16名で構成しています。監事2名。それから、具体的な事案を扱う検討委員会が各地で設置されて具体的な活動をしています。

 それ以外に会員構成として、団体正会員、団体賛助会員、個人の正会員、個人の賛助会員によって支えられ動いている団体です。


【2】これまでの主な活動

 この間どのような活動をしてきたかということですが、団体訴権を担うためには具体的な消費者被害の現実を知ることが何よりも重要です。

 その努力の一つとして、「110番活動」、「え~っと思った?!キャンセル料110番」を実施して、キャンセル料を中心に相談を電話で受け付けました。

 消費者契約法を基にするキャンセルに関わる苦情というのは多数あるわけでして、こういった課題に絞った形で、今後とも「110番」を実施していくということを考えています。

 それから、これも継続的に実施するわけですが、「公正で健全な市場を創るための消費者と事業者の連携」というタイトルで「第1回事業者セミナー」を行いました。「事業者の方と消費者の連携がいかに重要であるか」とことについて対談形式で議論をさせていただきました。多くの事業者の方の参加を得まして成功裏に終わったと思います。

 それから「Di-Uトラブル説明会」、これはたまたま、インターネットオークションに関する苦情の相談が寄せられ、それに対応したものです。

 検討グループの動きでは現在いくつかのグループ、大阪で3件、兵庫・京都・滋賀・奈良で各1件で継続的に具体的事例の検討を行っております。

 また、「申し入れ」実績として、英会話教室「トリニティー」に対して申し入れを行いました。訴権が行使できる段階では、その前提としてこうした「申し入れ」が重要になると思います。

 また、この間の団体訴権に関わる国会審議を端的にまとめるという意味で、「消費者契約法の一部を改正する法律案」に関わる国会審議の政府側発言録集というのをつくりまして、それをホームページにも掲載をしています。ホームページでは、どなたでも自由に読んでいただくことができるようになっています。

 ホームページを利用するなどして「情報提供活動」も積極的に行っていきたいと考えています。
適格消費者団体が活動をするについての社会的背景

【1】21世紀型消費者政策の土台としての「消費者基本法」の成立

 さて、そのKC’sの活動の土台というのは団体訴訟制度ということになるわけですが、この団体訴訟制度をどういった形で捉えなければいけないか。また、それがどのように設定されているかということを簡潔に報告させていただきたいと思います。

 おそらく行政をご担当なさっている方々は、今消費者政策が大きく変化していることをお感じになっておられると思います。「21世紀型消費者政策のあり方について」という報告書が国から出て、それ以降消費者政策の土台となる基本法の改正が行われました。

 その基本法の改正を受けて、今さまざまな形で消費者政策が展開をされてきたわけです。その中でとりわけ重要な課題として、2001年に消費者契約法が制定された時の付帯決議から問題とされてきた「消費者団体訴訟制度」が議論をされ、それが2005年6月に国民生活審議会の「消費者団体訴訟制度のあり方について」という報告書にまとめられたわけです。

 その2005年の報告書を受ける形で、消費者契約法の改正が行われ、2006年6月7日にその「契約法の改正法」が成立をしました。その施行は1年後の2007年6月7日の予定です。

 その「消費者団体訴訟制度」が、「契約法改正」の中でどのように実施をされたかということに関しましてその柱だけを申しますと、どの消費者団体でも「団体訴権」という訴権を担うわけではありません。あくまで内閣総理大臣(内閣府)による「適格認定」を受けた「適格消費者団体」ということで、内閣総理大臣による適格認定を受けなければなりません。その「適格認定を受けた適格消費者団体」が訴権を行使する。そう意味でいけば私どもKC’sはこの「適格認定」を受けることを意図しているわけです。

 で、その適格消費者団体が、消費者契約法に規定をされている「不当勧誘行為」。具体的に言いますと「事業者の不当な勧誘行為として消費者を誤認させる行為と、消費者を困惑させる行為」。「重要事項の不実告知、断定的判断の提供、重要事項等の故意の不告知、それと不退去と、不退去させないという行為」の五つがあります。

 それから、「不当条項の使用」。具体的に申し上げますと、三つ。消費者契約法の八条から十条の規定ですが、それらの不当条項についてこの「適格消費者団体」が、その使用や参加勧誘方法をやめるよう請求することができる。あるいは、それに使った資料は廃棄するよう請求することができる。すなわち差し止めを裁判所に求めることができるというのが、改正消費者契約法で認められるにいたった消費者団体訴訟制度の中身ということです。

適格消費者団体の認定に向けて

 一つのポイントとして、この「適格認定」を受けなければいけません。「適格認定」を受けるためにはいくつかのハードルがあります。

 例えば法律上既に明らかになっているハードルとして、NPO法人であるか、公益法人であるかのいずれかの「法人格」が必要だとされています。さらに「消費者の利益擁護を図る活動を相当期間にわたり継続して行っていること」という要件が科せられています。

 「消費者の利益擁護を図る活動」というのはある程度イメージができることかと思いますが、「相当期間」というのはどの程度の期間活動をしていればいいのかという点については、法律の条文上からは直ちには出てきません。

 この点については、国会の審議過程の中で「政府としてどのように考えるか」といったことが答弁され、最終的には「政省令」、あるいは「ガイドライン」といったものによって具体的に書かれることになります。従いまして、私どもとしてもそのことについて関心を持ちながら検討していく。本来の社会的役割としても、現実に使えない現在においても、消費者の利益擁護を図る活動を維持いくことが大変重要なわけです。

 それからその他の認定要件として、「業務を遂行するための体制及び規定がちゃんと整備されていること」あるいは「理事会が存在しその理事に占める特定の事業者の割合が三分の一以下、乃至は同一業種、関係者が二分の一以下であること」といったような基準があります。

 さらにもう一つキチンと理解しておかなければいけない基準として、ここは訴権を行使するという意味があるからだと思いますが、「消費者問題に関する専門家と法律に関する専門家という専門委員がキチンと団体の中にいること」というのも要件にあげられています。KC’sは設立の段階からそういった点を勘案しながら対応をしてまいったつもりです。

 しかし、いずれにしましても、これらの認定要件が具体的にどのように適応されるかについてはまだまだ不透明な点が残されていまして、今後の「政省令」「ガイドライン」等を注目する必要があります。

 この「政省令」「ガイドライン」の具体的なスケジュールでありますが、当初は来年の施行期日までには適格団体の認定が行われるのではないかということも言われていたのですが、どうやらこの間のいろいろな情報によりますと、年内に「政省令」、乃至は「ガイドライン」等の案の提示がなされて、パブリックコメントの募集がなされるということのようです。

 それを受けまして年明け早々から具体的な策定が行われ、実際の適格団体の審査はこの法律の施行を受けて、施行後1、2ヶ月の間に適格認定の審査が行われるという段取りのように聞いています。もちろんこれは確実な情報ではなくて、そのように聞いているというふうにご理解をいただければと思います。

 その他、実は消費者団体訴訟制度につきましてはいくつかの民事訴訟法上のさまざまなポイントがあります。

 とりわけ消費者行政の皆さんとの関係で言えば、一つは裁判の管轄の問題があります。原則として被告の本店所在地というのが管轄ですが、それ以外に営業所の所在地、例えば本店が東京にある事業者が大阪に支店を置いて、仮に京都で不当な勧誘行為を行っているということがありましたならば、それは東京と大阪と京都の地方裁判所が、場合によっては裁判をする可能性がある場所ということになるわけであります。

 また、これらの勧誘行為が不当であるということを理解して、主張していくためには、おそらくそれに関する情報をキチンと整理する必要があります。そうしますと、今の事例でいけば、東京、大阪や京都で不当な勧誘行為がどのようになされているかといったことを、さまざまな苦情事案や企業に対する問い合わせ等を通して確認をしていく必要が出てくることだと思います。

 こうした情報に関しては、各都府県の行政の皆様方からさまざまなご指導をいただくことが多いのではないかというふうに、私は考えている次第であります。

 それから、「差止請求」です。例えば、被害者に代わって損害賠償の請求をするとか、差止に基づいて何らかの金銭を得ることは固く禁止、処罰を持って禁止をされています。従いまして我々KC’sが今後訴権を担うことになったとしても、そこでやるのは、いわば「そういった不当な勧誘行為をするな」あるいは「不当な契約条項を使うな」といったことを請求するということでして、この訴訟を通して我々が何らかの金銭的利益を受けることはあり得ません。

 我々がこの活動をしていく上で資金の問題をどのようにキチンと整備をしていくか。そもそも設立要件の中でも「財政的な体制がキチンと整備されている」ということが重要な認定要件になっていますので、我々としてもその問題をキチンと考えていかなければいけないということは当然です。それは信頼ある活動を継続的に行うためにも必要です。

私たちが考える これからの活動

 いくつか、いろんなポイントがありますが、「消費者団体訴訟制度」といったものは、言葉の通り「訴訟制度」という名前です。あくまで「そういった行為をするな」といったことを裁判で請求をすることではあります。

 しかしながら、私たちが今後多数の裁判をすることを念頭において活動していくかというと、必ずしもそうではありません。おそらく訴権といったものを背景としながら、さまざまな業者との交渉を通してより公正で、消費者にとって利益のある社会を実現していくという事の方が、むしろ現実的には中心の課題になっていくのだと思います。事業者との率直な対話が大切なのです。

 それが具体的にどう動いていくかということについては、今後の活動次第でありますが、例えば、先ほど申し上げました事業者のセミナーを開いて事業者の方々とも積極的な情報交換を図っているのは、そういった考え方の一つの現われだとご理解をいただければと思います。また、消費者に対する説明のあり方などを事業者の皆さんと議論して、具体的に作り上げるという作業もすでに開始されています。

 最後に、その消費者訴権を担う消費者団体の準備状況ですが、我々KC’sの他に関東では消費者機構日本であるとか、あるいは消費生活相談員の皆さんの全国組織である「全相協」も機関決定をして準備をすすめておられます。

 広島、岡山、兵庫、京都、愛知、埼玉、あるいは仙台等でも個別に適格認定をめざすという動きがあることを存じ上げています。そうした動きが具体化することを強く期待をしていますが、現段階では、それが、いつの段階でどのような形で成果を結ぶかは、私にはわかりません。いずれにしてもKC’sとしては是非当初から適格団体としての認定を受けて社会的な活動を行っていきたいと考えているところです。

 以上で私の報告とさせていただきます。

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