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『消費者団体訴訟制度』の取組みについて(2)

滋賀の生協 No.140 (2007.3.20)
2006年度消費者(政策)学習会
『消費者団体訴訟制度』の取組みについて
1月31日(水)10時から12時30分 
ピアザ淡海207号室 滋賀県生活協同組合連合会主催
消費者支援機構関西(KC's)検討委員会・委員長 黒木 理恵弁護士

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消費者支援機構関西(KC's)の活動
 さっきから言っている「適格消費者団体」ですけれども、これは今まだありません。法律がまだ動き出してないからです。今年の六月に施行されてから、申請を受けて認定をしていくということになっているので、まだ認定を受けた団体はないんですね。六月以降に申請を出して、そこから認定をされる団体がいくつか出てくるということになっています。

 聞くところによると、内閣府がおっしゃるには、認定の作業に二、三ヶ月掛かるらしいので、6月7日に出したとしても、多分動き出すのは八月か九月かぐらいに、「適格消費者団体」として活動ができるようになるということになります。

 消費者支援機構関西(KC's)も、「適格消費者団体」を目指そうとつくった団体です。設立は2005年12月ですね。

 つくるに当たっては近畿圏、関西の消費者団体、滋賀県生活協同組合連合会さんはじめ、各生協の県連の方も入っていただいています。あと「なにわの消費者団体連絡会」とか「敷金問題研究会」とか、「欠陥住宅関西ネット」とか、それぞれの分野でいろんな消費者活動を続けてきた団体が集まってつくった団体です。

 これまでいろんな活動をしてきています。まだ「訴訟」を起こせないんですけれども、事業者に対する「是正申し入れ」をしています。これがメインですが、それだけではなくて、事業者に「消費者や消費者団体はこういうことを考えているから、消費者の意見も聞いた事業活動を行って頂戴ね」というメッセージを発信するための「事業者セミナー」とかも行っています。
組織と申し入れ活動
 KC'sの組織をご説明しておきますと、まず「理事会」、あるいは「常任理事会」。最終的な意思決定をするのはここです。その下に「検討委員会」いうのをつくっています。これは常設の機関で、そこが、今は「申し入れ活動」までしかできないんですけど、それをしています。KC'sが「適格消費者団体」になれたら、この「検討委員会」が「団体訴訟制度」の活動の中心になっていくことになります。

 ただ、実際の事案の検討は、「検討委員会」が全部やっているのではありません。「検討委員会」は五、六名しかいません。月に二回か、二ヶ月に三回ぐらい開催していますが、それだけではとてもできないので、事案ごとに「検討グループ」をつくって、「検討グループ」のメンバーに実際の事案の検討をお願いしています。

 公表している事案ですが、最初に「申し入れ」をしたのは、株式会社FORTRESS,JAPAN。こう言うとあまりわからないかもしれませんが、「トリニティー」という英会話、パソコンの教室をやっている会社です。これは主にキャンセルの時の清算に関する「解約条項」が不当に消費者に不利じゃないかということ。それから「勧誘方法」が、就職説明会のふりをして、実際は英会話の勧誘をしているという情報もつかんだので「あなたのところの勧誘方法はおかしいじゃないか」というようなことで「申し入れ」をしたというのが一つあります。

 これも実際に被害にあったという方から情報を収集したり、「約款」の、何条のどこがおかしいのかということを検討してもらったのは「検討グループ」なんですね。で、この「検討グループ」が検討をして、「検証案」をまとめていただいて、それを「検討委員会」に上げてもらい、「検討委員会」で内容を見て、その「完成案」を「理事会」に上げ、決済をもらって、事業者に「申し入れ」をするということですすめてきました。

 もうちょっと詳しく言うと、情報を集めて検討をすすめてその内容を「公表」したが、全く見当はずれのことを言っていたというようなことが仮にあった場合には、事業者の方にもご迷惑をかけるかもしれない。「適格消費者団体」になった時にはどんどん消費者団体の影響力が大きくなってくる可能性がある。風評被害みたいなことがあってもいけない。もちろん私たちとしては最善を尽くして検討をしているけれども、やっぱり情報が全部取れるとは限らないということも考えて、最初は非公開、ホームページにも載せないし、記者発表もしないという形で「私たちが手に入れた情報によると、おたくのこういうところがおかしいように思うんだけども、どうですか。改善するような予定はあるのでしょうか」という「お問い合わせ」をしています。

 「お問い合わせ」の方法はいろいろあります。「申し入れ書案」ができていて、「返事してください。何もお答えがない時には、後ろに付けている『申し入れ書案』を『申し入れ書』として公開でお送りしますよ」というような形でやる時もある。また、「わからないところがあるから、質問に答えてください」という形で「お問い合わせ」をすることもあります。

 まずは非公開でコンタクトを取る。それに対して事業者からお返事があり、お話が聞けて「そういうふうに改善したら消費者にも迷惑が掛からないだろう」と思えるような解決案ができた時点でそれを公表することにしています。

 「お問い合わせ」をしたにもかかわらず、お返事をいただけないような場合とか、ご説明をいただいたけどやっぱり見解の相違があって、「私たちとしてはこのまま続けてもらってはやっぱり消費者に迷惑が掛かるじゃないかと思う」というようなことで交渉が決裂した場合には、私たちの意見として「申し入れ書」を今度は公開でお送りするということにしています。
事例:トリニティーの場合
 まだ公開にいたっていない案件を、実は十何件抱えていまして、公開しているのは三件ですね。

 一件目の「トリニティー」は全く無視されたんですね。「お問い合わせ」をしても返事もいただけなかったので、「お問い合わせ」にくっつけていた「申し入れ書案」の「案」をとって、そのまま「申し入れ書」としてお出ししたんですね。

 その後もお返事はないんですけど、聞くところによるとちょっと契約条項が変わったらしい。それはうちが言ったからなのか、言わなくても変えたのか、よくわかりません。

 これは「特定商取引法違反」の例だったので、行政に「特定商取引法に基づく行政処分をしてくれ」という「申し入れ」をしています。その後「行政処分をした」ということも聞かない。そこがまだ「団体訴訟制度」が動き出していない弱みです。

 ここでもし「団体訴訟制度」が動き出していて、KC'sが「適格認定」を受けていれば、「じゃあ次は訴訟だ」ということで、「差止訴訟」ができるわけですけど、今はそこまでできないので。
事例:おまとめローンの場合
 「おまとめローン」。公開にいたっている二件目は「おまとめローン」です。

 「おまとめローン」というのは、消費者金融から「利息制限法」を上回るような金利でお金を借りてらっしゃる多重債務の方に「うちでまとめたら返済が楽になりますよ」という商品です。いっぱいあるんですけど、特に地下鉄で広告をしたり、テレビ広告をしているということで目立った二社、「関西アーバン銀行」「東京スター銀行」に対して「お問い合わせ」をしました。

 「おまとめローン」のどこが悪いかと言うと、利息制限法を上回る金利を返していた人というのは、もう一回「利息制限法」に定める低い金利の割合で計算をしなおすと、実は思っていたよりずっと返すお金が減るパターンがよくあるんですね。返しすぎていて過払いになっていたというケースもよくあるんだけど、「おまとめローン」というのは、そういう処理をする機会を奪っている。

 「あなた20何パーセントで借りているでしょう。毎月返済が大変じゃない。うちで借りたら金利は15パーセントだし、全部まとめて払うから一ヶ月の負担も少ないですよ」とか言われ、そういうからくりを知らない人は「ああそうか」と思って借りる。そして「利息制限法」で引き直さないまま何百万借りた分をそのままサラ金とか消費者金融に返して、後は新しく「関西アーバン銀行」や「東京スター銀行」に返済していくということになるんです。

 ちゃんと引き直しができるんだということを説明して、その上で「利息制限法」の範囲内で貸付をするのなら問題はないけれども、「そういう説明ができてないでしょう」という「お問い合わせ」をしたんです。

 そしたら、どちらからも「説明に行きます」ということで来てくださったんです。

 「関西アーバン銀行」は、その後「ちょっと説明文をつけました」ということでした。もうちょっとしたらKC'sのホームページにもその変わった報告とかもあがると思いますけど、多分お読みになってもむずかしすぎて何のことかわからないと思います。「わからないように書いているんじゃないか」と思ったんですけど。「関西アーバン銀行」は、だから多少変えられたんですけど、「この一文では普通の消費者が読んでも何のことかさっぱりわからないからダメだ。変わってもなおおかしいと思います」ということで「申し入れ書」を出しました。

 「東京スター銀行」はですね、変えるどころかいろいろ広告活動を強化されて、私どもにご説明に来られてから、またいろんな展開をされていたんで、全然変わっていないし、「悪いままだよね」ということで「申し入れ書」を出しました。

 ですから、無視されたわけではなかったという面では進歩なんですけど、結局合意で改善にはいたらなかったということで「申し入れ」にいたったのが「おまとめローン」です。
事例:ビワローブの場合
 最後は「ビワローブ」。これは滋賀の事例です。「ビワローブ」というインターネット接続サービス会社の契約条項について、一ヶ月の契約と一年の契約があるらしいんだけど、「一年の契約について中途解約ができない」となっていたこと。更新が「自動更新」みたいになるんだけど、「更新しない場合には一ヶ月前に言ってください」となっているのに、「あなたの更新日がもうすぐですよ」という通知が、二週間前くらいにしか来ない。そうすると結果的には既に一年更新されちゃっているというようなことになって「それはおかしいんじゃないの」と「お問い合わせ」にいたりました。

 ここはですね、私たちは無視されたと思っていたんですね。「お問い合わせ」をしたけれど返事がなかったのでそのまま「申し入れ書」をお送りしたんだけれども、そしたら「いやそんな『お問い合わせ』をもらっていたなんて知らなかった。担当者がいなくなっちゃって」とか言われて、「配達証明を付けて出しているから、着いているんですよ」ということでご説明をしたんですけどね。

 で、「申し入れ」を公開でした後に、「実は中途解約ができないのは問題もあると思って、今見直しをしていたところです。二月いっぱいには見直しをして、契約をしている消費者にお知らせをするつもりでいました」というようなお返事がありました。

 「じゃあ頑張って見直しをしてください。それだけでなく、さっきの解約の満了期間をいつ言うのかという問題もよく考えてね」ということも言おうと思っています。

 この三つは公表していますから、公表している部分についてはKC'sのホームページを見ていただくと、「申し入れ書」とか、相手からのお返事も載せています。一旦公開したら後の手続きは全部公開にしていますから、みなさんもし興味がおありであれば、ホームページを見ていただいたらと思います。

 これが「申し入れ活動」。今は「申し入れ」までです。もうちょっとして、無事「適格認定」を受けたら、次はもし解決しなければ「訴訟」ということになるというKC'sのメインの活動です。
その他、プラス思考の活動
 「申し入れ活動」とか「消費者団体訴訟」というのは、おかしな活動や勧誘をしている、おかしな契約条項を使っている事業者に対して、「それはダメだよ」と指摘する活動。マイナス面を指摘する活動ですが、それだけじゃなくて、KC'sではもし消費者にとって有意義な取り組みをしてくれている事業者があったらご紹介したり、例えば、「消費者団体や消費者の意見も聞きながら、うちの契約条項を変えたいんです。だから意見をください」と言っていただくところには積極的に協力していこうという活動やっています。

 例えば、個人向けマンションの販売の時には、「重要事項説明」をしなければならないということが法律で決まっているんです。でも、ずっとしゃべっているだけだから、面白くないですし、みんなにちゃんと聞いてもらえない。 で、「三菱地所」から、「こんな状況ではいけないんじゃないか。なんとか聞いてもらえるように、興味を持ってもらえるように、ちゃんとうまく情報が伝わるように説明するにはどういうことをしたらいいでしょう?是非一緒に考えてください」という話があったので、それを去年取り組みました。プロジェクトチームを作り、何ヶ月か掛けて、マンションのモデルルームにも行って「重要事項説明」も一から受けて、それで「ここはおかしいんじゃないか」とか「こういうところを直したらいいんじゃないか」みたいな意見を言って、「三菱地所」の方とも何回も会議をして、実際に「こんなパンフレットを作ったらいいんじゃないか」とか、いろんなご意見を申し上げて、最後「提言書」という形でKC'sの意見をお出ししたという活動をしました。

 こういうような活動は、お申し出があれば今後もやっていこうと思っています。

 もう一つ「CCプロジェクト」。

 うちわの名称なので、「なぜCC」と言われてもよくわかりません。

 消費者団体が「事業者の消費者対応」について評価していく「評価手法を考えて行こう」というプロジェクトです。

 最初アンケートをするんですが、そのアンケートの項目を考えているところです。消費者の目から見たらどうあって欲しいか。例えば「社長にはどういう意識でいてもらいたいのか」とか、「お客さん相談窓口の体制はどういうふうに整っているのが良いのか」とか、そういうような形でアンケート項目を作って、上場企業を中心に千社ぐらいにお送りする。そして回答をもらって、それを私たちなりの評価で点数をつけることになると思います。それを「うちが見たところはこうですよ」と事業者には返しいていく。

 全部公表すると悪い評価の企業は二度と回答を送ってくれなくなりますから、上位の企業とか、「こういうところが良かったですよ」というようなことに限って公開するかもしれない。それを毎年続けてやっていって、なるべく精度を上げていきたいと思っています。

 アンケートの回答ではすごく良かったはずなのに、不祥事を起こす企業もあるかもしれない。そういった企業には、フォローの調査をして「どういうことですか。お答えと違うじゃないですか」というようなことも聞いていってドンドン精度を上げていく。で、聞いた結果「アンケートは良いように書いていたけれども、どうも制度としてはなってなかったんじゃないの」ということだったら評価を落とすというようなことで評価の信頼性を上げていく活動もして行こうかなと思っています。

 これは、事業者にとっても、「KC'sから良い評価をもらっているんだ」というようなことで使ってもらえるようになれば、また消費者にもそういう評価を活用してもらえれば良いかなということでやっているプロジェクトです。

 その他、行政の皆さんと「消費者団体訴訟制度開始に向けてどうやって情報交換していこうか」とかいうような懇談会をやったり、いろいろやっています。

 その他、「適格認定」を受けるために「定款」を法律にあわせて変えたりというのもつい最近やって、準備を進めています。
皆さんへのお願い
 最後に、皆さんに是非お願いしたいしたいのは、一つは「検討グループ」に入っていただきたいということです。

 「検討グループ」は、実は会員じゃなくても良いんです。KC'sは広く誰にでも頼めるようにしています。興味のある方は是非、また「今これを研究したいとかはないんだけれども、メンバーでやることないか」とか「暇ができたからやりたいんだけど」という方も「検討グループ」に参加していただいて、その活動を通じてKC'sの活動を知っていただけたらありがたいなあと思っています。

 それから自分が「検討グループ」で時間をとるのは大変だけれども、「実は私のまわりでこんな問題があるように思う」だとか、そういう情報がおありの方は是非寄せていただきたい。その方がメンバーとして活動できなくても、他の方にお願いして「検討グループ」を立ち上げることができるので、そういう「情報の提供」もお願いしたい。それから、もちろん「申し入れ」の結果どんな改善がされたかというようなことを、みなさんお知り合いに広げていただく。そういう「情報の提供」「情報を伝える」ということも大事です。

 そこで、今団塊の世代の方が退職の時期に入っていますよね。退職金が個人の懐に入くる。そうするとそれを狙う投資話とかも多分出て来るでしょう。去年ぐらいから、「実はうちの旦那のところに最近いろんな投資の広告が来るようになった」という話も出始めているので、そういうダイレクトメールとかを集めて、まっとうな説明をしていれば良いんだけれども、「これはちょっとほっとくと、投資被害に合いそうだなあ」というようなものがあったら、今そういう情報を集めていますので、送っていただくと大変助かります。そういう「情報の提供」。ちょっとしたことでも良いので、ご協力いただけたらと思います。

 私からは以上です。
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