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第10回地方消費者委員会(大津)

滋賀の生協 No.165(2014.2.20)
公開シンポジウム
「健康食品の表示等のあり方について」

 一二月一四日(土)、大津市の滋賀弁護士会館にて内閣府消費者委員会、NPO法人消費者ネット・しがの共催で第一〇回地方消費者委員会(大津)が開かれました。消費者ネット・しがの土井理事長より開会の挨拶として、消費者委員会は独自性のある機関。消費者のための政策をすすめ、地方の消費者団体の声を直接聞いて届けるという主旨のものです。

今日のテーマはいわゆる健康食品の表示の問題。滋賀県には三方よしというものがあり「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」と言います。これが正しいあるべき事業活動だと思います。健康食品の業界は、はたして三方よしになっているでしょうか。今日は、食品業界の方も来ておられます。

消費者に安心して受け入れられるような商品を、正しい広告で正しく売るということを行っていかなければ業界全体が成長していかないということはどんな分野でもいえることですが、そのようなことも含め、意見交換をしていただければと思います。と結ばれました。


   基調講演
 「消費者委員会の活動と食の安全」


消費者委員会
河上 正二委員長
 消費者委員会という組織はどういう組織なのかという話と、広い観点での食の安全、国全体でどういう取り組みをしているのかという話をします。

 最初に消費者委員会について、地方に行くと消費者庁ができたのは知っていますが、消費者委員会は消費者庁の中にある委員会と誤解されている方が少なくない。一〇名の民間委員からなる第三者機関であり、独立した行政組織として平成二一年九月一日に発足しました。
重要な消費者問題に対して、自ら独立して調査審議し、総理大臣や関係省庁に対して必要な建議提言を行う。消費者の権益保護という使命を担い、審議会機能、消費者行政の監視機能、最後に消費者の声を行政に届けるパイプ的な機能と三つの機能を持っています。

 最近は、高齢消費者が金融商品の被害にあっているケースがどんどん増えています。被害額はうなぎ登りで、これに対する特効薬はなかなかないのが現状ですが、レンタル電話の本人確認や、会社設立の法人登記をする際それぞれの代表取締役に対し本人確認をする等、加害者の犯行ツールを今は叩いています。

 食の安全を巡っては多々言われていますが、食品に関しては、広告と表示の適正化と品質の管理と安全性という二点が重要だと認識しています。消費者は、自分が口にするものがどういうものなのか知る権利があります。世の中にある食品を選び取るときに、自分にとって何が必要な食品なのか正しい情報を与えられて、その情報に基づいて必要なものを口にすることが大事です。
その為の環境を整備するということは、政治的な課題であることになります。消費者運動の原点というのは、食品偽装と食の安全に関わるものばかりだと思っています。安全安心な食品を確保するために規格化し、基準を作る。検査体制を確立するということが大事です。今日は、限られた時間ですがこれからの食生活に活かしていただければと思います。

   講演
 「健康食品等について」


消費者委員会委員
(日本獣医生命科学大学
応用生命科学部長)
阿久澤 良造氏
 食品というのは生きるために食べるという思いで食べていたものですが、最近はただ食べれば良いということではなく、健康的に生きるためには何をどのようにして食べればよいのかというような事になってきています。
そのようなことから「いかにかしこく食べるのか」と、日々考えながら食事をしているのが現状かと思います。「健康食品」は健康の保持・増進に資する食品として広く利用されていますが、学術的に認知されるものではなく、社会的に他の食品と区別するために使われている呼称です。
その機能性表示が許可されているものが「保健機能食品」。それと、機能性表示が認められていないが健康に寄与するだろうと言われている「いわゆる健康食品」。この「いわゆる健康食品」にも規制緩和で機能性表示が可能となるよう検討され始めています。
健康食品の定義はありません。まず新制度に向けて定義を決めることが第一歩ではないでしょうか。すべての食品は、健康に関わる何らかの効能を有していると考えています。基本的な栄養教育の拡充も忘れてはならない。冷静な選択眼を養って適量でバランスの良い食事をすることが健康でいられる最も重要なことではないかと感じています。

   ケーススタディ
 「健康食品に係る問題についての現場からの事例報告」


滋賀県消費生活センター
副主幹 清水 文子氏
 相談事例としては、①通販業者からのカタログで、個人輸入だとは知らずにダイエット食品を購入したら、商品に未承認医薬品成分が入っていた。②認知症の母宛に健康食品が送りつけられた。処方薬を服用しており飲み合わせに不安。というような事例がありました。

 広告の体験談、大きな見出し、お得な情報、きれいな写真を見て、思わず購入してトラブルに巻き込まれる。耳から入る情報に心を動かされて信用して、期待をしている人がたくさんいます。
事業者の方には気を引くだけの広告だけではなく、何が大切か、何を知ってもらいたいのかを、明確にわかり易く表示してもらいたい。消費者も冷静に判断できる力を身につけてもらいたい。消費生活センターでも今後の相談には注目し、消費者啓発も一層努めていきたいと思います。

   パネルディスカッション


日本健康栄養食品協会
小林 一夫氏
 各健康食品の安全性のガイドラインに則ってちゃんと企業が行っているか等、企業からの申請によって認可をするということを行っています。二四年に公益財団法人となり、現在は特別用途食品・特定保健用食品の申請支援と、栄養表示基準に従った適切な栄養表示の普及などを行っております。

 健康食品とは食品で、本当に効果があったら医薬品です。みんなが食べている食品の中で、ある一定の成分を抽出したのが健康食品。国としては医療費の増大とかが問題になっています。アメリカでは保険制度が進んでいないため、自己防衛的な感覚でサプリメントを買って飲んでいます。機能性表示というのはそれが始まりでした。

消費者庁食品表示規格
課長 竹田 秀一氏
 アメリカ型のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にと閣議決定には書かれていますが、日本の制度なので、制度を設計する際には実情に則して整備していく。問題のある表現がそのまま通用するわけではありません。
アメリカのダイエタリーサプリメントで記載されている表示を見たら、現時点で日本の消費者がどう受け止めるのか、消費者庁で調査をしています。
いわゆる健康食品については食品表示に対する建議を消費者委員会が出しています。それを踏まえ、消費者庁も広告表示のガイドラインを作成するということで、一二月初旬にパブリックコメントの募集をしました。

NPO法人消費者ネット・しが理事長
弁護士
土井 裕明氏
 年齢を重ねると身体も衰えてきます。そういうところに漬け込むような形で広告をしているのが現状ではないでしょうか。納得して購入すれば本人の選択だというのは、本当に商品の内容をきちんと理解した上で納得して購入という条件付だと思います。
いわゆる健康食品の表示の適正化をしていた矢先に、規制改革会議で企業の自主的判断で効能効果の表示を行っても良いと出してきて、閣議決定されました。今、その方向で進んでしまっています。消費者が考えている適正な広告表示と、進んでいる方向とはあまりにもギャップがあるのではないでしょうか。
健康食品の幅も広いと思いますが、基本的には三度のご飯をきちんと食べて運動して充分睡眠をとるということで健康は維持できると思います。

 まとめでは、河上委員長より優良誤認に当たるような表示は排除し、食べものに関して正確な情報を提供するということを徹底していきたい。今の規制に関するあり方はまだまだ十分ではない。〝特保〟ができ二〇〇〇件以上の商品がでている。五年一〇年で見直していき、新しい知見のもとで現実にあわせた運用というのを考えていきたい、消費者委員会と消費者庁で安全な食品を日本できちんと流通させるということを一緒に努力しないといけないだろうと思っていますと結ばれました。
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