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消費者月間セミナー フェアトレードを通じてめざす、エシカル(倫理的)な消費者

滋賀の生協 No.177(2017.8.4)
消費者月間セミナー
フェアトレードを通じてめざす、エシカル(倫理的)な消費者

2017年5月20日(土) ピアザ淡海大会議室

講師 認定NPO法人ACE 田柳 優子さん


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 児童労働とは何か、児童労働の実態、なぜ児童労働が存在しているのか、どうすれば児童労働を無くせるのか、そして私たちに何ができるのか。児童労働のない世界を目指して、ガーナやインドで活動をしている認定NPO法人ACEの田柳優子さんにお話を聞きました。

 ご存知ですか?児童労働

 児童労働のない世界を目指す国際協力NGO 、ACEの田柳優子と申します。ACE(エース)は「遊ぶ・学ぶ・笑う。そんな当たり前を世界の子どもたちに」をモットーに活動を行っています。

  • 身のまわりの商品の原料がどう作られているか関心を持つこと。
  • フェアトレードの商品を積極的に選ぶこと。
  • 児童労働の問題を知り、広めていくこと。
  • そして、世界を少しでもよくするために、自分にできることを探し、続けること。

 今日はこういったことをできることとして知っていただけたらと思います。

1708204_sp_02.png 少しACEのご紹介をさせてください。

 ACEはカイラシュ・サティヤルティさんと深い繋がりがあります。2014年、マララ・ユスフザイさんと1緒にノーベル平和賞を受賞した方です。1996年以降、「児童労働に反対するグローバルマーチ」を主催し、児童労働に反対する意思表明を世界の各都市で行ってきました。このグローバルマーチを「日本でもやろう」と、5人の学生が立ち上がったことからACEの活動は始まりました。

 カイラシュさんとACEのつながりはその後も続き、「日韓ワールドカップ」を翌年にひかえサッカーへの関心が高まっていた2001年に、カイラシュさんは、サッカーボール縫いの児童労働をしていた7歳の女の子と1緒に来日し児童労働の問題を日本で訴えかけました。暗い中でサッカーボールを縫う作業は、この女の子を失明させました。ノーベル平和賞を受賞した後も、ACEはカイラシュさんを日本に招へいしイベントなどを行いました。

 2013年に発表されたILO(国際労働機関)の調査では、世界の5歳から17歳の子どもの内、9人に一人が児童労働に就いています。数にすると1億6800万人。2008年は、2億1500万人でしたから、ずいぶん減っています。今年の九月頃に新しい数字が発表される予定です。

 アフリカの児童労働は、5人に1人です。人数は人口の多いアジア・太平洋地域の方が多いのですが、割合はアフリカの方が多い。その原因としては貧困が深刻である地域が多い、戦争が起きて親がなくなり子どもが働かざるをえない、「子ども兵士」として駆り出されてしまうということもあります。兵士として働くことも児童労働にあたります。さらにHIV/エイズも深刻で、親が亡くなってしまい子どもが働かざるをえないという現状があります。

 「ポテトチップス」「チョコレート」「Tシャツ」「スマートフォン」。これは、全て児童労働が関わっている可能性がある製品です。

 チョコレートはカカオ生産に児童労働が関わっています。Tシャツはコットン生産に従事しています。ポテトチップスを揚げるパーム油にも子どもが働かされています。スマートフォンは、レアメタルの採掘に子どもの小さな体が適しているということで、大変危険な労働をさせられています。さらに漁業等、いろいろ児童労働が関わっています。

 カカオ生産量ベスト5は、コートジボアール、ガーナ、インドネシア、ナイジェリア、カメルーンです。ベスト5のうち4カ国が西アフリカの国。生産地はインドネシアも含め、赤道を挟んで南北20度以内に限られています。1方、チョコレートの消費地は、ヨーロッパ、アメリカ、日本等で、カカオを作っている地域と、チョコレートが消費されている地域が異なっています。ガーナには、「チョコを食べたことがない」人たちがたくさんいます。

 カカオの実は、長さ12センチメートルから25センチメートル、直径は15センチメートルほどです。幹に直接生るのが特徴です。カカオの実を入れた籠は約20キログラムあります。小学校低学年の子どもが、自分の体重と同じ籠を頭の上に乗せて、カカオの林から村まで長時間運んでいます。当然、発育途中の子どもの首や背骨に影響を与えて成長を阻害するという問題も起きています。ナタを使ってカカオの実を割って中身を取り出す作業で、怪我する子どももいます。

 「児童労働(Child Labour)」の定義

 「教育を受けることを妨げる労働」「健康的な成長を妨げる労働」「有害で危険な労働」「子どもを搾取する労働」。この1つでも当てはまれば「児童労働」とみなします。安全な環境下でのお手伝いやアルバイト等は「子どもの仕事」とし、「児童労働」とは区別します。

 日本でも、義務教育年齢が終了すれば、18歳未満の「子ども」でもアルバイトはOKです。しかし、そうではない、「奴隷のような労働」「ポルノ、買春に子どもを使用」「不正な活動に子どもを使用(麻薬の密売や犯罪の手引きなど)」「危険・有害労働」という「最悪の形態の児童労働」は、高校生の年齢であっても国際条約で禁止されています。

 日本にも児童労働があります。「JKビジネス」。「JK」って「女子高生」という意味ですが、女子高生がお店で性的サービスに関わっています。「ブラックバイト」。コンビニ等で店長から苛酷なシフトを強いられ、学校に行けなくなる高校生もいます。親のお金儲けのために、小・中学生が性的対象とされています。「オレオレ詐欺」でも、電話をする「掛け子」ではなく、お金を受け取りに行く「受け子」として中学生が使われています。

 「子どもの権利条約(国連1989年)」「最低年齢条約(ILO1973年)」「最悪の形態の児童労働条約(ILO1999年)」等の国際条約に批准している国であっても、開発途上国等では、雇い主と警察が結託して子どもを搾取することが起きています。

 2015年に「世界の貧困・環境問題に係る17の目標」を2030年までに達成して問題を解決しようという「SDGs(持続可能な開発目標)」が国連で採択されました。その「17個の目標」の8番目「持続性、包括的で持続可能な経済成長及び完全で生産的な雇用とディーセント・ワークの促進」の中に、「ターゲット7」として「2025年までにすべての形態の児童労働を終焉させる」という文言が入りました。もう10年ありませんが、私たちは今、2025年までに1億6800万人の子どもたちを、児童労働から救い出すことをめざして活動を行っています。

 「児童労働」の要因

 児童労働が生まれる要因は、需要側と供給側双方にあると考えています。

 供給側の要因としては、1つ目は貧困です。親の稼ぎだけでは、家族を養えないから子どもを働きに出さなくてはいけない。

 2つ目は、教育環境の不備。学校があっても先生や教室が足りない。ひどい場合は先生がやる気がなく学校に来ていません。学校へ行っても意味がないから子どもは家に居る。家に居るなら働かせてしまう。

 3つ目は、親自身も学校へ行った経験がないので、そもそも教育を受けさせる発想がない。

 需要側の要因としては、「コスト削減、安い労働力、多くの働き手が必要」ということで、経済・ビジネスが児童労働を必要としているという現状があります。大人よりも子どもの方が人件費を安く抑えられます。ウズベキスタン等、政府主導で学校を休ませ児童労働を奨励するという、とんでもないことをした国もありました。

 スマイル・ガーナプロジェクト

 子どもの危険労働、学校環境の不備、カカオ農家の収入不足。これがガーナのカカオ生産地における主な問題点です。私たちはそんなガーナで労働から子どもを守り、教育を支援するため「スマイル・ガーナ プロジェクト」を行っています。

 このプロジェクトには、「子どもの保護と就学の徹底」「学校環境の改善」「カカオ農家の収入向上」という三本柱があります。

 私たちのプロジェクトは期間が決まっていて、プロジェクトが終了すれば村から撤退します。ですから、私たちがいなくなっても、村の人たちが「児童労働があってはいけない」という意識を持ち、村の中で児童労働がない状態を続けていけることを目指しています。なので、地道に、何回も、何回も家庭やカカオ農場を訪問し、話し合って「児童労働があって当たり前」という村の人々の考えを変える啓発活動が活動の中心となります。

 泥だらけで働いていた時は人と話す時に目も合わせられなかった近所の子どもたちが、学校へ行くようになり、きちんと水浴びをし、身なりを整えるようになる。表情にも大きな変化が現れてくる。そういった変化が親の意識に「じゃあ、自分の子どもも学校に通わせてみよう」と大きな影響を与えます。

 しかし、意識が変わってもやはり家庭が貧しいという現実もあります。そういった特に貧困な家庭には、学用品の無償支給なども行っています。私たちが撤退した後の継続性を考慮すると、物や学校の施設などの金銭的支援は行いたくないのが基本ですが、「どうしても」という家庭には、学校へ行けるようになるためのきっかけとして行っています。

 また、カカオの生産が盛んなのはガーナの南部ですが、北部にはカカオを作ることも出来ないもっと貧しい地域があります。仕事がない北部の子どもは「人身取引行為」で南部に連れてこられて働かさられています。そういった子どもを保護することも行っています。

 子どもたちと地域の意識の変化

 マメ・サラさん(10歳、小学1年生)は「学校で友達と遊ぶ時間が楽しい。将来はまだ分からないけど、勉強したことを活かしたい!」と言っています。彼女も両親から離れ、ガーナ北部の貧しい地域から移住してきて、カカオ生産地で働いていました。しかし、雇用主の親戚のおじさんが、私たちのボランティアスタッフの説得に応じてくれて、労働から抜け出すことができました。学用品を支給し1年生のクラスに入学しました。

 ゴッドフレッドくんという男の子は「ACEの支援がなければ、ぼくは今でもカカオ農園で働いていたと思います。だからぼくはACE、そして日本のみなさんに心から感謝しています。でも、まだガーナの他の村では、子どもがカカオ農園で働いています。他の村の子どもたちも労働ではなく学校に通えるよう、ぜひとも今後とも応援してください。」というメッセージを、2010年にACEが児童労働から抜け出した子どもとして招へいして来日した際に日本の支援者に向けて語ってくれました。彼はとても1生懸命勉強を頑張り、郡で上位の点をとって高校へ進学しました。2016年に高校を無事卒業し、今は看護師をめざして勉強を続けています。

 カカオ農家の人たちの意識も変わっています。小学校を中退し、独学で学びカカオ農家の地主になったニャメさん。元々北部から連れてこられた子どもを、自分の農園で働かせていたのですが、私たちの働きかけによって、「やはり子どもは学校へ行かせなければならない」と意識が変わりました。ガーナ北部出身のメアリーちゃん(9歳)を労働から解放しただけでなく、自分のポケットマネーで学校へ通わせてくれました。

 このように、「村の中でそれぞれ見守り合って児童労働のない状態を続けていくのだ」という意識と仕組みが大事だと考えています。

 また、児童労働から抜け出した子どもが継続的に学校へ通い続けるためには、親の経済的安定も必要です。私たちは、より効率的な栽培方法や、カカオの実の取引などのトレーニングを行い、収入向上を働きかけています。

 しあわせへのチョコレートプロジェクト

 日本では今「しあわせへのチョコレートプロジェクト」を行っています。フェアトレードのチョコレートを通じて、児童労働を解決していこうというプロジェクトです。

 みなさん、森永製菓から出ている「ダース」というチョコレートをご存知でしょうか。箱を裏返すと、〈1チョコ for 1スマイル〉と書いてあります。「1箱につき1円がNGOに寄付されます」というキャンペーンです。ACEもこのキャンペーンのご寄付をいただいています。

 その他、「しあわせを運ぶ てんとう虫チョコ」という寄付付き商品もあります。この商品は、東日本大震災の被災地、陸前高田市の就労支援施設で袋詰めなどをお願いしており、被災地支援にもなるチョコレートです。

 ダースとは別の森永製菓の製品である「森永ミルクチョコレート〈1チョコ for 1スマイル〉」は、寄付付きチョコレートであるだけではありません。「ダース」などの製品の売り上げの一部で私たちがガーナで活動を行い、その結果児童労働がなくなった村の、児童労働が関わっていないカカオで作られたのが、このチョコレートです。日本のナショナルブランドメーカーでは初めて、「国際フェアトレード認証」マークが付いた、先進的な取り組みのチョコレートです。このように、フェアトレードを通じて大人の収入を安定させることで、児童労働がない状態を継続させることができる、循環型の支援になっています。

 フェアトレードとは

 フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を、適正価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易の仕組みです。

 フェアトレード認証マークの基準には、「①最低価格が保証されているか、②大人の安全な労働環境も保障されているか、③児童労働・強制労働がないか、④土壌・水源の保全がされているか」などが含まれます。ですから、単に「金銭的に公正な取引がされる」という意味ではなくて、作っている人たち、地域の安全が保たれていて、お互いが安全で安心して暮らせる状況の中で取引がされるという点でフェアかどうかというところが関わっています。

 日本で購入できる主なフェアトレード製品としては、コーヒー、紅茶、チョコレート、はちみつ、砂糖、バナナ、スパイス、ワイン、切花、サッカーボール、衣服、生活雑貨・工芸などがあります。

 フェアトレードタウンの広がり

 2011年に熊本市がアジアで初めての「フェアトレードタウン」になりました。今、世界中で「フェアトレードタウン」が徐々に広がっています。

 自治体や市民、企業、学校など、いろいろなセクターの人たちが「フェアトレードを広めていこう」と働きかけを行っている市町村、群、県などを「フェアトレードタウン」と言います。

 2016年現在、世界28カ国、1、830の自治体がフェアトレードタウン認証をされています。夏季オリンピックが開かれたロンドンとリオは「フェアトレードタウン」ですが、東京は「フェアトレードタウン」ではありません。

 市長が「フェアトレード宣言」をする、議会で決議する、市役所などでフェアトレード製品を使用する、「フェアトレードを広めていこう」という動きをするなど、認定にはいくつかの基準があります。

 今、日本には熊本市の他に、名古屋市(2015年)、逗子市(2016年)の3つしかありません。日本は遅れています。5月上旬に静岡県浜松市が、認定の最終段階に入ったということですので、4都市目は浜松市になると思います。ぜひ滋賀からも「フェアトレードタウン」の働きかけを行ってください。

 インドでの児童労働の実態

 私たちは、インドでもコットン生産地で活動を行っています。

 2016年前半までは中国が世界第1位のコットン生産国でしたが、去年からインドが1位となっています。インドと中国だけで世界中のコットンの50%を作っています。

 世界のコットン畑で働かされている子どもは約100万人いると言われています。インドでのコットン種子栽培に携わる児童労働者は48万人で、栽培にかかる労働力全体の25%を占めます。その内約20万人が14歳未満、義務教育年齢の子どもたちです。

 ①教育への関心が低い。教育環境が整っていない。②女子への差別・伝統的慣習。③親の仕事がない・低収入などが「供給の要因」です。特にインドは女子への差別があります。「幼い年齢でお嫁に行くので、女子に教育は必要ない」と考える「児童婚」の問題もあります。

 「需要の要因」としては、「遺伝子組換え&ハイブリッドのコットン種子栽培の急増」という問題があります。遺伝子組み換えのコットンは、オシベの畑とメシベの畑があり、オシベの畑から取ってきたオシベを、手作業で1個1個メシベに受粉させるので、たくさんの労働力が必要です。だから、賃金が安く、言うことを聞く子どもの需要が高いのです。

 農薬使用量が多いコットン

 コットンという作物はとても農薬の使用量が多い。コットンの栽培面積は、世界の全耕地面積のわずか2.5%ですが、全殺虫剤使用料の16%を占めています。インド国内だけでもコットンの耕地面積は全耕地面積の5%ですが、農薬の使用量は54%に達します。

 コットンは虫がつきやすい作物で殺虫剤が多用されます。その上、実がはじけて、中から綿が出てきた時、綿を覆っていた殻を枯らして落とすため、枯葉剤も使用されます。

 農薬のボトルや箱には危険度を示すマークがついています。農薬メーカーは、「私たちは農薬の危険度を示し、防護服を付けるよう喚起しているので、企業責任は果たしています」と言います。ですが、農家の人たちはほとんど読み書きができないので、マスクなし、手袋なし、半そで、短パンで農薬を散布しています。お金がかかる農薬を買うのに精いっぱいで、防護服までお金が回らない、意識も回っていないという現状があります。

 こういった有害な農薬に触って食事をすれば体内に入ります。直接吸い込んだり、土壌にしみこんで水にも入りますので、地域に住んでいる人全体にも皮膚炎、頭痛、震え、筋肉の痙攣、呼吸障害、精神障害、視覚障害、認識力・集中力の低下などの影響を及ぼします。 世界で約7700万人のコットン農家が農薬中毒だと言われています。

 頭痛や吐き気を訴え、倒れたことがあるという子どもが本当にたくさんいます。子どもの場合、大人よりも白血病にかかるリスクが7倍あります。私たちが活動を行っている村に住んでいた女の子は、農薬の影響でがんに罹って亡くなってしまいました。

 農薬を使わない有機栽培を「オーガニック」と言います。オーガニックコットンと聞くと、みなさん「肌触りが良い」「気持ちいい」というイメージがあると思うのですが、実は、使っている私たちにとっては大きな違いはありません。オーガニックは、作っている人たちの健康や環境に良いか悪いかというところに大きな意味がある商品です。

 「ラナプラザ」ビル倒壊事件

 2013年、バングラデシュの「ラナプラザ」という縫製工場のビルが倒壊し、1000人以上の方が亡くなりました。倒壊する前から建物に大きなひびが入っていて、労働者が、若い女性が多いのですが、「建物が危ないから、仕事をストップさせてほしい」と訴えていたそうです。しかし、雇い主は半分閉じ込めたような状態で働かせて、事件が起きました。

 この縫製工場で作られた製品は、グローバルに展開する大手アパレル企業のブランドのものも多かったということで、欧米の国々で問題になり不買運動などが起き、企業が人権にも配慮する安全協定を結ぶきっかけになりました。

 私たちにできること①学ぶ

 私たちにできることとして、まず、もっとフェアトレードやエシカルについて勉強するということがあります。

 「エシカル(倫理的)消費」とは「環境や、作る人、動物に配慮したモノづくりと選択・消費」という意味です。「フェアトレード」も「エシカル」に入ります。「オーガニック」の製品、有機栽培された製品も「エシカル」に分類されます。あとは、「アニマルフレンドリー(動物愛護)」の観点から動物実験を行っていない物、リサイクルなど、環境や作る人などに配慮されていることも、「エシカル」と言います。

 例えばオーガニックコットンの製品には、認証マークがついているものがあります。「有機栽培をされていますよ」「製品が作られる過程で、人権や環境にも配慮されていますよ」ということを示すマークです。こちらをお店で探してみることもエシカルな消費者に向けてできる一つのことだと思います。

 『このTシャツは児童労働で作られました。』という本があります。フェアトレードやエシカルについて扱っている本もたくさん出ています。そういった本を見ていただくということも、私たちにできる事だと思います。

 ACEは、消費者教育に力を入れ、学校の先生たちがワークショップや授業に活用できる、児童労働の問題を伝える教材もつくっています。映画「バレンタイン一揆」(※)も教材用DVDとして発売しました。
(※)バレンタインデーにフェアトレードでつくられた、ほんとうに愛のあるチョコレートを、日本のみんなに選んでほしい。そんな想いを胸に、ACEが活動するガーナのカカオ生産地を訪ね、児童労働の問題に出会い、悩み、闘った、日本の女の子たちの奮闘記。

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オーガニックコットン認証マーク

 私たちにできること②広める

 フェアトレードや寄付付き商品などを広めることも、できることの一つだと思います。

 バレンタインに合わせてチョコレート販売会の実施、学園祭や昼休みの食堂や社内イベントなどでのグッズ販売など、委託販売や、店舗での卸売り販売もできます。

 詩人の谷川俊太郎さんが児童労働を題材に書き下ろされた詩「そのこ」の絵本やポストカードもあります。

 私たちにできること③求める

 バレンタインデーにちなんで、高校生がフェアトレードチョコの販売イベントを開催してくれました。チョコレートの会社に「フェアトレードのチョコを作ってください」とお手紙を送ってくれる学校もあります。

 「一人ひとりがお手紙を書いてもそんなに大きな影響はないのではないか」と思われるかもしれません。でも、それってとても大きなことだと、私たちは思っています。

 商品を買うことは「投票」です。商品を選ぶことで「フェアトレードの商品を消費者は求めている」というメッセージが企業に伝わります。そうなると、企業は「売れる商品」を作りますので、フェアトレードや、エシカルの商品を増やして行くという流れができます。現状では「買いたい」と思っても、なかなか見つけられません。価格が高いので、手を出しにくいという声を聞くこともあります。

 みなさんにお願いしたいのは、できることからしていただきたいということです。毎回毎回、フェアトレードやエシカルを求めることは無理だと思います。まずはどういったフェアトレードやエシカルの商品が社会にあるのかを気にかけ、「これって、どんなふうにつくられたのかな」「どこからきているのかな」と、「ちょっと」考えることでいろいろ変わってくるのではないかと思います。

 企業としても最初からすべての商品をフェアトレードに変えることは難しいので、一つでも企業がフェアトレードの製品を出したらその製品を買って応援してください。消費者に売れる製品となれば、企業としてもエシカルな製品を増やしやすくなります。

 こういった行動はとても地道なことです。ただ、地道なフェアトレードやエシカルの呼びかけを、みなさんもそれぞれ行っていただくことで、だんだん広がっていくのではないかと思っています。これからも「ちょっと」そういうことを頭の片隅に置いて生活していただけたら、今日私がお話させていただいた意味があるかなと思っております。

 「そのこ」

 最後に、谷川俊太郎さんの「そのこ」という詩をご紹介させていただきます。

そのこ
谷川俊太郎

そのこはとおくにいる
そのこはぼくのともだちじゃない
でもぼくはしっている
ぼくがともだちとあそんでいるとき
そのこがひとりではたらいているのを

ぼくががっこうできょうかしょをよんでいるとき
そのこはしゃがんでじめんをみつめている
ぼくがおふろからでてふとんにもぐりこむとき
そのこはゆかにごろんとよこになる
ぼくのうえにもそのこのうえにもおなじそら

ぼくはこどもだからはたらかなくていい
おかねはおとながかせいでくれる
そのおかねでぼくはげーむをかう
そのこはこどもなのにおかねをかせいでいる
そのおかねでおとなはたべものをかう

ちきゅうのうえにはりめぐらされた
おかねのくものすにとらえられて
ちょうちょのようにそのこはもがいている
そのこのみらいのためになにができるか
だれかぼくにおしえてほしい

 ご清聴どうもありがとうございました。