活動のご案内

トップページ > 活動のご案内 > 消費政策の取組 > 協同組合の可能性をひろげ地域を元気に!

協同組合の可能性をひろげ地域を元気に!

滋賀の生協 No.183(2019.8.16)
IYC記念滋賀県協同組合協議会講演会
協同組合の可能性をひろげ地域を元気に!

2019年3月6日(水) ピアザ淡海 2階207会議室

講師 前田 健喜氏(日本協同組合連携機構(JCA)協同組合連携部部長)
  プロフィール
前田 健喜(まえだ けんき)

1964年生まれ、1989年全国農業協同組合中央会入会、総務企画部協同組合連携課長、IYC記念協同組合全国協議会事務局、日本協同組合連絡協議会(JJC)事務局、JC総研協同組合研究部長・主任研究員などを歴任し、2018年4月より(一般社団法人)日本協同組合連携機構(JCA)協同組合連携部長。
maeda.png


会場風景

  2018年4月に、新たに「日本協同組合連携機構(JCA)」が協同組合の連携組織として発足しました。JCAの前田氏を講師に、直近の協同組合を取り巻く状況と課題を理解し、協同組合の今日的な価値と役割について考え合う機会となりました。

 はじめに

2018年4月1日、「一般社団法人 日本協同組合連携機構」(英語名 Japan Co-operative Alliance、略称JCA)が発足しました。

JCAは、JA・生協・漁協・森林組合・ワーカーズコープ・共済・ろうきんなど協同組合の全国組織17団体が集う「日本協同組合連絡協議会(JJC、1956年設立)」の取り組みを引き継ぎ、「一般社団法人JC総研」を改組して誕生しました。

協同組合の持続可能な地域のよりよいくらし・仕事づくりに貢献することを目的とし、①地域・都道府県・全国での協同組合間連携の推進・支援、②協同組合に関する政策提言・広報、③協同組合に関する教育・調査・研究、の3つの機能を果たします。

 日本の協同組合

協同組合ごとに個別法があるのが日本の協同組合法制の特徴です。そのため分野ごとにそれぞれ発展してきた歴史があります。

・農業協同組合(JA)。組合員約1000万人、国の農業総産出額9・2兆円の半分が農協を通じて販売されていています。月刊誌「家の光」の発行部数は53・5万部。月刊誌最大の発行部数を誇っています。昭和9年、10年に賀川豊彦先生が「乳と蜜の流るゝ郷」という小説を連載した時に、100万部を超えたということです。また、厚生連病院は、主に普通の病院が立地しにくいへき地に多く立地して医療活動に取り組んでいます。
・漁業協同組合(JF)は、国の漁業産出額1・59兆円(2016年)の約3分の2を占めています。
・森林組合(JForest)。組合員が約150万人、山主さんの協同組合です。森林組合の職員の方が森林の作業を行います。その点で農協とは少し違います。
・生活協同組合は、日本生協連の会員生協の組合員が2900万人、年間事業高は約3兆5000億です。小売業ではイオン約7兆円、セブン約6兆円に次ぐ大きな存在です。生協の中には全労済とか大学生協もあります。
・中小企業等協同組合は、町工場や商店などの中小企業がつくる協同組合です。
・それから新しいタイプの協同組合で、労働者協同組合(ワーカーズコープやワーカーズコレクティブ)があります。働く人が出資して、働く場をつくり、1緒に仕事をする協同組合です。ワーカーズコープの場合、最初は病院の清掃とか、ビルのメンテナンスから始めました。1990年代には介護の分野に取り組みはじめ、2000年代には自治体から委託を受けた児童館とか学童クラブ等の運営へと分野を広げ、今はさらに第1次産業にも挑戦しようということで取り組んでいます。いろいろ地域の課題にまっすぐ向かっていくタイプの協同組合です。ワーカーズコレクティブは、自分たちの地域で困っていることに対応しようと、生活クラブ生協の組合員が始めたもので、介護事業や生協カタログの袋詰めや発送、企画や編集といった活動をしています。
・労働金庫は金庫数が13、預金残高19・2兆円。基本的には労働組合が会員ですが、間接的には約1000万人の労働組合員が労金を支えています。最近は非営利協同セクターとの連携を打ち出して、我々とも密接に連携し、NPOとの関係づくりにも取り組んでいます。
・信用金庫は、預金積金が137・9兆円。JAの貯金100兆円を上回ります。信用金庫は預金者に制限はなく融資は原則組合員対象です。信用組合は預金積金が19・9兆円で、預金も融資も原則組合員対象です。
・協同組合が実施する共済(JA共済、JF共済、生協の共済、中小企業等協同組合の共済)をまとめると、2599団体、組合員数76, 4700万人、共済金額886兆円となります。 国際協同組合年(IYC)を契機に、全国段階では、生活クラブ、信用組合、信用金庫、中小企業等協同組合、ワーカーズコレクティブ、労福協などの全国組織にも参加していただき、協同組合間連携はJJCの枠組みから大きく広がり、連携の機運も盛り上がっています。

183_03.png 183_02.png

 地域の課題と協同組合への期待

JCA設立趣意書には、経済のグローバル化のなかでの「貧困・格差、雇用問題、高齢者のケア、子育てや教育、過疎化、生活インフラの劣化、第1次産業をはじめ担い手不足、地域・生活を支える社会の力の弱体化(協同と参画、助け合いの縮小)」等が指摘されています。

一方、国際社会の中で協同組合への期待は大きくなっています。2002年、ILOは各国政府に「協同組合の促進」を勧告しました。2012年、国際協同組合年(IYC)に国連は「経済・社会開発への可能な限り最大限の参加を促進する」と述べ協同組合を評価しています。2015年、国連は、協同組合を「持続可能な開発目標(SDGs)」に向けて役割を果たすべきステークホルダーと位置付けました。2016年には、「協同組合の思想と実践」が「ユネスコ無形文化遺産」に登録され、「人々が参加し話し合い協同して、社会的な課題の解決策を見出し実践していく協同組合の力」が評価されています。「協同し、参加して社会的課題を解決していく」実践が、協同組合の仕組みへの高い評価となっています。

 SDGsの背景と特徴

SDGsは、2015年に「国連持続可能な開発サミット」で採択されました。正式名称は「我々の世界を変革する、持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。2016年から2030年を実践期間とする行動計画で、約90のパラグラフで構成され、その中心に「17の持続可能な開発目標(SDGs)」、さらに細分化された169のターゲットが置かれています。基本理念は「誰1人取り残さない」です。

少し歴史を振り返ると、「開発・発展のあり方を、経済だけでなく環境や社会にも配慮していく」という国際社会の流れがあります。国連でも、1972年に国連人間環境会議の「人間環境宣言」が採択されます。同じ年には、ローマクラブの「成長の限界」が発表されました。日本でも1960年代に発生した公害に対して、環境庁が1971年に発足します。有吉佐和子の「複合汚染」の朝日新聞での連載が1974年から75年で、農薬問題なども取り上げられ、「エコロジー」とか「安全な食べ物」等に関心が向けられるようになります。

1992年に「国連環境開発会議(地球サミット(UNCED))」が開催され、地球温暖化への警鐘が鳴らされました。2000年には国連ミレニアム宣言が採択され、2015年をめざした国際社会共通の目標「ミレニアム開発目標(MDGs)」が策定されました。

「持続可能な開発目標(SDGs)」は、その「MDGs」の後継となる目標です。2012年6月、リオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」で議論が始まり、市民も含めた参加型の議論を経て、2015年9月の国連総会で最終的に決定されました。

その特徴は、まず範囲が広いこと。持続可能性に関わる3側面(経済・社会・環境)のすべてが含まれます。

そして、開発途上国だけでなく、環境、貧困、格差の問題などを含め、先進国も取り組むことになっています。日本政府も取り組まなければなりません。

3つ目は、参加型で策定されたということです。NGOの人達と話していても、「自分たちも参加し、自分たちの意見も反映されている」という想いがあると感じます。

 SDGsの目指すもの

目指すところは「①経済—すべての人の生存のための物質的条件の確保。②社会—すべての人が尊厳をもって生きられる。例えば不当な命令への隷従や、基本的人権の侵害からの解放。③環境—地球の環境・資源の制約のもとで、持続可能な社会の実現」です。換言すれば、資源・環境の制約のもとで、人類が幸福に生きていける未来社会を描く試みです。

現在、人類の生活を支えるには、1・7個分の地球が必要だと言われています。言い換えれば、今日、人間は生態系が再生する1・7倍の速さで自然を消費しているということです。もし現在の日本人の生活を人類全員がするには地球2・9個が必要といわれています。

つまり、未来社会を描くとは、他人事ではなく、自分たちの生活を見直すことでもあります。

 SDGs17項目と協同組合

2016年の国際協同組合デーにあたって、潘基文国連事務総長(当時)から「協同組合は、平等と民主的参加の原則を保っている。協同組合は、誰も取り残さないというSDGsの原則を体現している。SDGsそのものと同じように、協同組合は人を中心に置く。組合員の所有と運営のもと、協同組合はコミュニティに強く関与している」という、メッセージを出しています。

協同組合に対する国連の期待というのは、非常に大きいと言えるでしょう。

この期待に応えていかなければなりません。「協同組合は、組合員がよいと思うやり方によって、その地域社会の持続可能な発展(sustainable development)に努めます」と協同組合原則の第7原則は述べています。私たちはもう既に1995年の段階から、この第7原則に基づき「持続可能性」に取り組んでいるのです。

「17の持続可能な開発目標(SDGs)」には、それぞれ短縮した名前があります。

①貧困をなくそう。②飢餓をゼロに。③すべての人に健康と福祉を。④質の高い教育をみんなに。⑤ジェンダー平等を実現しよう。⑥安全な水とトイレを世界中に。⑦エネルギーをみんなに そしてクリーンに。⑧働きがいも経済成長も。⑨産業と技術革新の基盤をつくろう。⑩人や国の不平等をなくそう。⑪住み続けられるまちづくりを。⑫つくる責任つかう責任。⑬気候変動に具体的な対策を。⑭海の豊かさを守ろう。⑮陸の豊かさも守ろう。⑯平和と公正をすべての人に。⑰パートナーシップで目標を達成しよう。

「②飢餓をゼロに」とは、「食料の安定確保、栄養状態の改善、持続的可能な農業の推進」のことです。これは、発展途上国だけの課題ではなく、まさに世界中で農協がやっている1丁目1番地の仕事です。さらに「子ども食堂」とか「フードバンク」とか、食料が届かない人に食料を届ける取り組みも含まれます。

「⑦エネルギーをみんなに そしてクリーンに」とは「再生可能、持続可能なエネルギーの確保」でもありますが、途上国では、すべての人の電気やガスへのアクセスをまず確保するという課題でもあります。

「⑧働きがいも経済成長も」は、今年の国際協同組合デーのテーマ「コープス・フォー・ディーセント・ワーク(co-ops for decent work)」「協同組合は働きがいのある人間らしい仕事を実現します」に関連しています。特に労働系の協同組合、労金や全労済や労福協やワーカーズコープのみなさんが、このテーマに熱心に取り組んでいらっしゃいます。

「⑫つくる責任つかう責任」は、エシカル消費、持続可能な消費と生産の確保ということです。

「⑯平和と公正をすべての人に」と「⑰パートナーシップで目標を達成しよう。」は、具体的目標というよりもやり方、「みなさん連携して頑張っていきましょう」ということです。

 協同組合間の連携

ここから先は、協同組合間協同の連携事例集です。

・子どもの居場所作り「生協 + JAなど(茨城県)」

生協の理事が小学校で「食べる大切」の出前授業を行っていました。すると、孤食など、まともに食べていない子どもがいることがわかりました。そこで、市が公的施設を会場として提供し、社協も協力、生協組合員が調理ボランティア、食材はJAが無償提供、学生が学習支援ボランティアをする「ほぺたん食堂」(子ども食堂)を2016年に生協が始めました。

生協とJAとの連携を仲介したのが、県段階の連携組織「協同組合ネットいばらき」です。この組織の特徴は、生協や農協、漁協などの単協が参加しているということです。協議会の大事な役割の1つは、現場の協同組合どうしをつなぐことなのです。 ・NPO法人フードバンク埼玉「労福協+生協+農協+医療生協+ワーカーズコープ等(埼玉県)」

埼玉労福協は東日本大震災後にフードバンク活動をスタートさせます。それが、2015年「生活困窮者自立支援制度」発足以降、食料提供依頼が急増。そんな中、いろいろな協同組合の参加を得ようということで、2016年4月に「フードバンク運営協議会」を設立。2017年10月、NPO法人となっています。生協連、コープみらい、パルシステム埼玉はじめ、いくつかの生協、医療福祉生協やワーカーズコープ、JA中央会、NPOの人達も参加しています。企業、小売店舗、家庭から集めた食材を、福祉施設や生活困窮者に無償提供。働くことが困難な人の働く場づくりにもなっています。 ・お魚殖やす植樹運動「北海道漁連女性連+漁協+農協+森林組合+生協等(北海道)」

森ができると海が豊かになる。北海道ではこれを沿岸中でやっています。30年以上継続し、累計114万本を植樹(2017年)。中心は漁協女性部ですが、森林組合が苗と植林場所を提供します。例えば、道東の野付漁業協同組合は生協と産直をしていて、植林の時は生協のみなさんも1緒に植樹しています。例えば北海道厚岸郡浜中町では浜中町農協が協力しているように、森づくりが地域全体の取り組みとなるなかで農協も協力しています。 ・豊かな海を育む森づくり「漁協 +生協 +NPO法人(兵庫県)」

兵庫でもNPO法人が中心となって森づくりをやっています。1999年に開始以降、41回、延3862人が参加(2017年は341人)しています。 ・土壌スクリーニング・プロジェクト「JA+生協(福島県)」

福島県のJAで、実際に土壌がどうなっているか調べて、その上で営農対策を打たなければならないということになって、2012年10月、田畑の放射能汚染マップづくりを開始しました。

福島県の協同組合連携組織「地産地消ふくしまネット」が全国に支援を呼びかけ、全国の生協31組織から、延361名の組合員・役職員が参加して、合計3万5204筆(9万2029地点)を測定しました。生協のみなさんが全国から来てくれて測定をやることができました。 ・店舗の共同運営「みやぎ生協+エーコープ宮城+JA全農みやぎ(宮城県)」

みやぎ生協とエーコープ宮城、JA全農みやぎが、2015年10月に、旧みやぎ生協松島店と旧エーコープ松島店を「A&Coop松島店」という共同店舗にしてオープン。結果としては、客数は1600人/日と両店合計より減少しましたが、客単価はコープ東北の同規模店で最大。開店4カ月目以降黒字を確保。売上は13・2億円と旧店舗合計を上回りました。2号店が角田にオープンしています。 ・地域における高齢者支援「JAひがしかわ+コープさっぽろ(北海道)」

旭川の近くの東川町の行政からJAひがしかわに「買い物支援を実施したい」との相談があり、最終的にはノウハウを持っているコープさっぽろが移動販売を実施することになりました。JAひがしかわは組合員を紹介してコープさっぽろの移動店舗がまわる。JAに経済的なメリットはありませんが、組合員の利便性が確保されている連携の事例です。採算ラインを上回る実績となっており、2012年のコープさっぽろと東川町との間に「高齢者の地域見守り活動に関する協定」の締結につながったり、3者の共同出資で「(株)大雪水資源保全センター」を設立し、「大雪旭岳源水」の製造・販売を行う取り組みにもつながっています。

元々米の産直でJAと生協の関係は強かったのですが、こういった生活インフラを整える連携に広がっています。 ・地域農業の支援「生協+JA+生産者組織+加工メーカー(長野県)」

生活クラブのトマトジュース・ケチャップの原料である加工用トマトの産地の1つが、JAながの飯綱支所管内の農家の方々です。普通のトマトは支柱を立てて栽培しますが、加工用トマトは地這いで収穫が大変。でも人手がない。そこで、生活クラブ生協の組合員が参加して、労働集中期の定植・収穫を支援することになりました。労賃は4000円/日(食事つき)支給するという連携です。

1995年から2016年までの22年間で、延べ2225人が参加。生産者も生活クラブ組合員の労働を計画に織り込んで作付けできるようになり、生産が確保できる。年1戸ほどのペースで、会社勤めの退職者や、生活クラブ東京の組合員などが新規就農しているそうです。

ただモノが流れるだけの関係にとどまらない、より深い連携ということが出来ると思います。 ・連携による地域の農林水産業振興「JA鹿児島きもつき+鹿屋市漁協+大隅森林組合(鹿児島県)」

森林組合の新組合長が、もともとJAの組合長と知り合いだったことから、2015年に「1緒に何かやろう」ということになり、11月に「かのや農林漁業協同組合連絡協議会」が発足。固有の事業計画や、予算はないのですが、連携した取り組みが行われています。

2015年12月のJA大感謝祭では、森林組合がシイタケを販売、漁協は養殖カンパチのリゾットを販売しました。カンパチリゾットは2016年2月に開催された鹿児島県の「Show-1グルメグランプリ」で、協議会の各団体の応援のもとグランプリを獲得しました。同年4月の熊本地震の時には魚や玉ねぎ、ジャガイモなどを積んで、約2000食のあら汁やカレーの炊き出しを行いました。

JAが小学生向けに開いている「アグリスクール」では通常の農業体験・料理教室のほか、漁協が「魚のさばき方教室」も開催。また、漁協が受け入れるクルーズ船の寄港時には、JAが豚の丸焼きを振る舞うなど、それぞれのイベントや販売チャネルへの相乗り、互いの産物を相互に購入といった相互協力も進んでいます。 ・地域活性化の取り組み「コープあいち、JA愛知東(愛知県)」

コープあいちとJA愛知東は、1999年に「総合提携」を結び「山と水と緑の協同組合まつり」を継続して行ってきた歴史がありますが、単なるモノのやり取りではなく、地域おこしを1緒にやっていこうという提携を行ってきました。2010年には「コープあいち&JA愛知東の総合提携」に継承されました。2014年に協同組合間協同での生活支援の具体化を協議。2015年からはJAが行う健康診断をコープあいち組合員へも呼びかけました。また同年、健康サロン「まずは寄らまいかん」の協同開催も始まっています。2017年からは、JA愛知東女性部(生協組合員でもある部員)等が中心になって、閉店したAコープ跡地で週1回「朝市」を開催するとともに、住民の相談窓口も設置しています。

産直をベースに、生活支援や助け合いの連携へと発達してきた事例です。 ・高齢者の困りごと解決「南医療生協、コープあいち、JAあいち尾東(愛知県)」

南医療生協の「おたがいさま運動」とは、①おたがいさまサポーターが困りごとをキャッチ、②南医療生協の地域ささえあいセンターに連絡、③地域や職場のおたがいさまサポーターに支援のお願い、④利用できる制度を活用したり、サポーターの力で解決するという仕組みです。

「おたがいさま運動」を評価した豊明市は、2015年の介護保険法改正で、介護保険事業の一部が市町村に移行されたことを契機に、市の「住民主体型生活支援事業」を協同組合に委託したいと考え、南医療生協に打診。南医療生協中心に、コープ愛知、JAあいち尾東が協同で受託し、ちょっとした困りごとを住民で助け合う仕組み「おたがいさまセンターちゃっと」として、2017年から運営しています。 ・地域の困りごと解決「生協+医療生協+JA+社会福祉協議会(島根県)」

2002年にスタートした、生協しまねの有償助け合いシステム「おたがいさま」の特徴は、「誰でも・いつでも・どんなことでも断らない」ことです。コーディネーターは、利用者の家を訪ね、困りごとに共感し、よく聴いて、応援者に結び付けます。しかし、実際に困りごとに接すると、自分たちだけではできないこともあります。そこで医療面に関しては医療生協に声を掛け、さらにJA、社会福祉協議会などの他の組織との連携も発展させ、2014年、連携の事務局として「地域つながりセンター」を設立。事務所は現在JAの支店のなかにあります。「地域つながりセンター」は「地域ケア連携推進フォーラム」、子ども食堂「なないろ食堂」、フードバンク「あったか元気便」など、連携・協同活動を広げてきています。生協の「おたがいさま」を核に、さらにいろいろな協同組合へと広がりができてきています。 ・子どもの居場所づくり「高校生+ワーカーズコープ +生協(北海道)」

2016年1月、ワーカーズコープが開催したこども食堂に、北星学園の高校生6名が参加し、自分たちで「こども食堂」を開催したいとワーカーズコープの事務局長に相談したことで「なまら食堂」が実現しました。

主要メンバーは高校3年生のため、毎年卒業とともにこども食堂の運営からも卒業。そのため、高校生たちは自ら新メンバーを募集。毎年運営のバトンを渡していきます。

現在は、近くのこども食堂と連携し、そのこども食堂が休む毎月1回木曜日に開催しています。ワーカーズコープが全面的に支援し、主要献立の調理や食材の手配、金銭の管理、情報管理を行っています。運営資金はコープさっぽろが団体助成金10万円を提供しています。 ・協同組合間提携30周年協定「JA鹿児島経済連+コープかごしま」

コープかごしまは、1971年の設立時から牛乳の産直などでJAグループと協力関係にありました。1985年には、協同組合提携推進会議を立ち上げ、各部会、役員交流会を通じて関係性を深め、2015年には、30周年を節目に「協同組合間連携30周年協定書」を締結し、食の安心・安全と地域農業・地域活性化に貢献するパートナーとして、さらなる協力を約束しました。

鹿児島経済連とコープかごしまの間での人事交流もあります。また、「スマイルリング」という共同のブランドをつくり、今年から同ブランドの商品の両方の店での販売を開始しました。 ・高齢者の仕事づくり・まちづくり「ワーカーズコープ+中国労働金庫JA広島中央会等 (広島県)」 2014年に広島市が「協同労働プラットフォーム」事業をスタートしました。地域コミュニティの存続危機、高齢者の1人暮らし、買い物難民、空き家など、地域にある困りごとを、自分たちで出資して組織をつくり仕事をつくり、自分たちで解決する。そしてその活動に対して市が助成する。このやり方をワーカーズコープが支援する。それにJAや生協や労金、連合、労福協が協力する。そういうスキームです。

支援を受けて4年間で14団体が設立され、107の団体・個人から相談を受けました。松井1實広島市長は、厚生労働官僚でワーカーズコープの法案をつくる作業にかかわった経験がある方です。 ・福祉・健康にかかわる取り組み「生協+JA(神奈川県)」

神奈川県協同組合連絡協議会では、料理教室、健康体操、ウォーキングなどの「健康に関する活動」や介護用具・福祉用具・認知症の研修会など「福祉に関する活動」などを実施しています。 同協議会は「協同組合ネットいばらき」と同様に、単位協同組合が入っていることが特徴です。2017年に改組されるまでは県段階組織を構成員とする組織でしたが、むしろ現場で連携を進めるべきではないかということで、今ではJA、生協、漁協、森林組合の単協を含めて100ぐらいの組織で構成されています。 前身の神奈川県協同組合提携推進協議会は1986年に結成され、1988年には「すみよい神奈川づくり基本構想」をつくるなど先進的な取り組みを行いました。2000年代はやや活動が停滞していましたが、その間も、健康と福祉の勉強会は、地道に地域の単協どうしであるJAと生協の間で続けられてきました。 ・健康にかかわる取り組み「生協・農協・漁協・森組(兵庫県および長野県)」

「健康チャレンジ」とは、提示された健康づくりコースから自分にあったコースを選び、その実践を記録して結果を報告するもの。個人では継続しにくい生活習慣の改善を楽しみながら進める取り組みです。

元々は医療生協単独の取り組みでしたが、兵庫協同組合連絡協議会が相乗りして、協同組合全体が連携する県全体の取り組みになりました。今後は、県内の協同組合が連携し自治体、学校や地域などにも呼びかけ、組合員だけでなく、県民をあげた健康づくりの取り組みを目指すこととしています。

長野県でも同様の取り組みがなされています。

1団体の取り組みに協議会が共催で加わる「相乗り方式」は、大きな負担なく取り組みを協同組合全体に拡大できます。茨城でも、生協が取り組んできた平和アクションや福島の子どもを受け入れる子ども保養プロジェクトを、協同組合ネットいばらきが共催し、協同組合全体の取り組みに広げています。 ・協同組合職員の人材育成「農協+生協+漁協+森林組合(兵庫県)」

2012年から行われている兵庫の「虹の仲間づくりカレッジ」は、兵庫県協同組合連絡協議会とコープこうべの共催で、次世代を担う職員どうしが顔の見える関係をつくり、くらし、地域、社会の中で協同組合が果たすべき役割を共に考える、合同の研修です。

各協同組合の職員計25〜30名が参加。全3回(うち1回は1泊2日)の連続講座を行います。テーマに基づき、第1回と第2回の間にメンバーが自主的に現地調査を行い、第2回と第3回の間には自らが企画したプログラムを実施して、第3回は報告会を行う実践型研修です。

1つの班では「かいぼり ため池・里海交流保全活動」に取り組みました。淡路島のため池の水を抜き、堆積した泥を取り除く「かいぼり」(池干し)です。取り除いた泥を川から海へと流すと泥に含まれる栄養分が海中に広がり、農業者と漁業者の双方が抱える問題を解決します。 ・災害支援「農協+生協+漁協+森林組合(岩手県)」

2017年、釜石市尾崎半島の大規模林野火災が発生し、その復興のために岩手県協同組合提携協議会が県内の協同組合に参加を呼びかけて2018年に植樹活動を実施しました。また、2011年の東日本大震災での津波による被害の復興にも協同組合が連携して取り組んでいます。これは、災害支援というテーマでの連携です。

 協同組合間連携の可能性

これまでの協同組合間の連携は産直を中心に事業面での連携が多かったと思います。しかし今、どの協同組合も、地域コミュニティづくりに向かっているように思えます。「子ども食堂」「移動販売」「助け合い」といった取り組みに見られるように、地域の活性化、人と人とのつながりづくり、居場所づくり、コミュニティづくり、など、協同組合の存立の基盤である地域コミュニティの存続が課題となるなかで、どの協同組合もそこに関心を向け、そこでの連携が生まれてきています。

考えてみれば協同組合どうしは違う組織ですが、組合員どうしは同じ地域に住み、地域という共通の基盤のなかにいるわけで、その意味でもともと連携しているとも言えるわけです。

 未来社会に向けた協同組合の役割

私たちは、未来社会に対して、どういうイメージを持てばいいのか。

社会学者の見田宗介さんの『現代社会はどこに向かうか』(岩波新書)を手がかりに考えてみたいと思います。

現在世界人口は70億人。国連の統計で2100年に110億人に増えると言われています。しかし、人口の増加率は1960年代をピークに減り始めています。つまり、人類は人口爆発期を過ぎていることになります。人口爆発期には生産力が上がって人類全体としては食べる事にそれほど困らなくなった。その要因として、貨幣経済が発達し資本を集めて大量生産が可能になったことが挙げられます。貨幣は知らない人同士を結び付け自由な活動の幅をひろげました。

しかし、その弊害として富の偏在、資源・環境の限界への直面、貨幣を介する人の結びつきの希薄化、競争原理のストレスなどが生じています。

そうしたなかで、未来社会はどんなふうにあるべきなのか。見田先生の言っていることを私なりに要約すると次にようになります。 ①モノの側面では、現代の達成された生産力をベースに、必要なものがすべての人に分配され、環境・資源が持続可能な形で維持される社会であること。 ②ヒトの側面では、人々の間の協同の発見と回復が基調となること。 ③コトバ・思想の側面では、協同を基調とし、有限性の中で幸せを感じる力が基本となること。

SDGsは、資源・環境の制約のもとで、人類が幸福に生きていける未来社会を描く試みだと述べました。未来の社会は、人間関係や思想の面を含めて、有限のなかでの幸福感受性を強めていくと思います。

人の組織である協同組合は、組合員が生きるその地域によりそい、そのコミュニティの存続、さらに環境の持続可能性をケアする存在だと思います。

協同組合は、協同を基調とする未来社会の実現を目指してきたし、その価値や原則は、そうした未来社会を先取りするものといえるのではないか。未来の社会が、参加や協同を基調に、みんなにモノが適切に分配され、次の世代のことも考え、環境や資源にも配慮して、競争よりも協同することを基本にする社会だとすれば、協同組合はそれをすでにやり始めているのではないかと思うわけです。

これからの社会に対して「協同」とか「参加」を持ち込む。そのことが協同組合の大事な役割ではないかと思うのです。