滋賀の生協 No.153(2010.12.10) |
食の安全・安心シンポジウム テーマ「信頼」 2010年10月21日(木) コラボしが21 3階大会議室
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「よい食とはなにか」を考えるプロジェクト |
柴田 生協の方も、言い方が少し変わってきたなという感じですね。 JAさんの「よい食プロジェクト」は、栄養面でどこまでつっこんでいるのですか。
柴田 ありがとうございます。 大谷さん。どうですか。その辺のところ。 大谷 先ほどお話しがあったように「量の概念」というのがとっても重要で、是非、JAさん含めていろいろなところでみなさん知っていただきたいと思っていましたので、今日は非常に良いお話しを聞かせていただいています。 |
製造者対象の食品衛生協会の活動の状況 |
柴田 食品衛生協会の遠藤さん。食中毒が一番話題になっていろいろな取り組みをされていると今お聞きしまして、そのあたりで「特にこれだ」というのをもう一回教えていただけませんか。 遠藤 知事さんから依頼を受けている推進員が指導に行く時には、まず食中毒もそうですが、「営業許可を受けているか」「食品衛生責任者がいるか」「それを表示しているか」ということをいつも見ます。そしてまず手洗いですね、「手洗い設備が必ずあるか」「消毒液と洗剤が必ずあるか」「それで必ず洗っていただけるか」、また「それを拭き取るのがペーパーであるか」、あるいは「一回しか使えないものであるか」「手ぬぐいはだめですよ」という指導をして、「まずは手洗いから始まる」ということからすすめていきたいと思っています。そしてその後が、「製品の検査」ということで、例えば「大腸菌がいるか、いないか。ぶどう球菌がいないか。サルモネラ菌がいないか」というような微生物検査を「年二、三回ぐらい受けるようお願いします」という指導をしているところです。 柴田 そういうことが行われているお店というのがわかるような仕組みはあるのでしょうか。 遠藤 食品衛生協会の会員さんのシールと、なおかつ巡回指導をしたところには「巡回済み」というシールを貼れるようにしております。 |
消費者対象のリスクコミュニケーション事業 |
柴田 今度は県の方ですが、「消費者の方にも勉強して下さい」というのが条例の一つの目玉ではないかと思うのですけれども、「条例」ができてもう直一年、どれくらい講師派遣をされているのか教えていただけますか。
昨年度も「リスクコミュニケーション事業」といたしまして、各保健所において消費者を対象とした研修会、講習会等をしております。県の保健所は六つあるのですけれども、その六つの保健所で二七件開催し、受講者が九百十一人という数字になっております。今年度は条例が出来た年なので、「さらにやってください」と各保健所にお願いしているというところです。 それ以外にも、事業者を対象とした、例えば、衛生確保をはかるための講習会とか、SーHACCP(エスハサップ)導入に向けた講習会等も開催しております。これはかなりの数やっております。 |
流通している食品の安全をどうチェックしているか |
柴田 どうもありがとうございました。各パネリストの方から、「信頼の醸成」のためにどのような考え方、立場でどのような活動をされているという話を聞かせていただきました。 このあたりで、会場の方からご質問とかご意見ございましたら、ご遠慮なく挙手をしていただけたら嬉しいのですけれども。 会場A 長浜で加工や手掛けている者です。ちょっと質問なのですけれども。 中国から使ってはならない添加物を使ったうなぎを輸入して、全国に名をとどろかせた会社がありました。私はそこの部長さんを大変よく知っているのですけれども、あの事件で業績が大幅に落ち込んで、回復が非常に難しい状態だと嘆いておられます。 それに対して、日本は今食料自給率が四〇パーセントということで外国に頼っているわけですが、全国にあります「道の駅」、その発祥が滋賀県だと聞いていますが、それからスーパー、コープさんなどで今流通している農産物の「抜き打ち調査」はやっておられるのかということを、まず一点お聞きしたい。 もう一つは、中国が全部悪いということではないのですけれども、そういう輸入品に対して政府が「抜き打ちの調査」をしておられるかどうかをお聞きかせください。 柴田 これは山中さん応えられますか。 山中 県サイドで流通している食品をどうチェックしているか。私どものやっている、検査内容を少し説明させていただきます。 県では「食品衛生監視指導計画」という計画書をつくりました。この計画につきましては前年度の三月くらいに「翌年度はこういう形で検査します」という公表をしているわけです。 例えば平成二一年度は、その実績がすでに出ておりますので申し上げますと、「食品の収去試験」という、要は流通段階、また製造段階で、保健所なり県の食品安全監視センターが施設に出向きまして「抜き取り検査」を行います。それは食品衛生法に基づく規格基準検査とか、添加物残留検査とか、農産物だと農薬の検査とか、そういう検査を抜き取りでしています。 その数ですが、一年間で二三九三検体の食品の収去検査をやっています。その内、農産物は、計画は五〇〇検体だったのですけれども、四九二という数字にとどまっています。農産物の四九二の内「残留農薬検査」が一六二検体でございます。 また、畜産物について言えば、三七九検体、添加物が五五、動物医薬品検査等は、肉中の医薬品等九七検体の検査をしているという実績になっています。 トータルしますと、二三九三検体。そのうち五検体が違反ということでした。残留農薬違反については、一検体で基準値を超える農薬を検出しました。 参考までに輸入品につきましては、これは厚生労働省の管轄になりますので、検疫所において私どもと同じように港に入ってきた段階で検査される。検査する方法は、出荷の段階で国がやる場合、検査命令をかけてやる場合、それからモニタリング検査をやる場合と、三種類あるのですけれども、一八〇万くらいの輸入の届け出の内、大体一二パーセントぐらいの検査率で、違反率は例年見てみますと、〇.一パーセントぐらいとなっています。 柴田 どうもありがとうございました。どなたか、他にございませんでしょうか。 |
品質管理の負担増に対するJA、生協の対応策 |
会場B 良心的に安全・安心な品物を消費者に届けようと思えば、生産者、流通者の経済的負担が大きくなるというのが一般的だと思うのです。ところが消費者はどっちかというと安いものを購入しようとする。口では「安全・安心に関心があります」と言っても、実際に店に行くと安いものを買う。 そこのギャップ埋めるために、例えばエコカーには経済産業省などがエコの税制措置を講じたような、そういう措置も必要なのではないのでしょうか。 安全で安心できる製品を世に出すために、何か補助のようなものはできないものでしょうか。 柴田 まずJAの藤井さん。いかがでしょうか。 藤井 「環境こだわり」の取り組みは、全国的に先駆けて取り組まれたということで、県からも一定の助成措置を付けていただきました。その後、途中から国の方でも全国的に広げようと助成する形に変わりました。 今ご指摘いただいたような取り組みをすることが良いことは、当然生産者もわかります。しかし、肥料や農薬を減らすことによって、その分手間ひまがかかってきます。 その手間ひまの分を国や県の助成金だけで賄えるかと言ったら、正直賄えません。だからと言って、手間ひまかけてつくった農産物が普通に栽培した農産物より高く売れるかと言っても、なかなかそうはならないというのが正直なところです。生産者にも「こういった取り組みをしていこう」という意気込みはあるのですが、算盤勘定をするとなかなかそういった取り組みばかりもやるわけにもいかない。 しかし今「安全・安心」を求める消費者に応えるためには、収支には即結びつかなくても「せざるを得ない」というのが正直な生産現場の実態です。 国の方も何とか助成をしていますが、民主党政権に代わって「平成二三年度までは何とかする」と言っていますが、二四年度以降は助成措置についての条件面が厳しくなって、滋賀県の農家にも「助成が回ってこないのと違うかなあ」と心配の声が出てきています。 西山 生協の関係で言いますと、やはりこれは「近い関係をどう作るか」ということにも関わってくると思うのです。 我々は「産直」という運動をやっています。生産者と消費者が話し合って、「この仕様でつくりましょう」「買いましょう」こういう関係性ですね。そういう中で、例えば「野菜ボックス」なんかがそうなのですが、「きれいな農産物だけではなく、いろいろな見栄えの悪いものも含めて全て取引しよう」。そういう中で一定の安全性を確保しようという考えです。 「生産者が努力をしていることを、消費者はやっぱり学ばなければいけない」と思っています。生産者と消費者の近い関係性の中で、価格だけではない価値というものを、消費者もしっかりと見極める必要があるのではないか。生産者が努力をされて苦労されて作られた農産物を、消費者がその価値、生産者の想い、願いも含めて利用に結びつける。「餃子の中毒事件」の時には、「目の行き届かないところで餃子作ってどうするの」と言われました。そういうことも含めて、もう一回原点回帰でしっかり地元の生産者と地に足のついた取り組みを再度していこう。そいう関係性が大事だなと思っています。 |
遠い食より近い食。知事は安全・安心・環境 |
柴田 どうもありがとうございます。次の方どうぞ。 会場C コープしが並びに、地産地消推進協議会の事務局もしています、佐原と申します。 当時の「条例を求める県民会議」では、柴田先生や滋賀県生協連の西山さんたちと一緒に「こんな条例にしてほしい」という、条例の要綱案の起草とりまとめも担当させていただきました。そんな立場で「信頼」がテーマのこのディスカッションが深まればということで、会場発言をさせていただきます。 まず、二つの意味でこの条例はバランスがとれているなとうれしくも思い、また評価もいたしております。 とりわけ「食品の安全性の確保」で、「食品衛生法」等では「ちょっと抜けているかなあ」という部分もありますが、この「条例」では昨今多い食の安全・安心のいろいろな事故、あるいは偽装に対して、「報告」「輸入事業の届け出義務」「自主回収」が『努力義務』として定められています。『一律全部義務』として「がんじがらめに罰金を科す」というものでもなくバランスよく配置されていると思います。 生協なんかは「自主基準」とか、「上乗せ基準」を持っていましたので、念のための措置として「自主回収」とか、「組合員さんにきちっとお知らせする」ということをやってまいりました。「安心感の醸成」「安全性の確保」「被害拡大の防止」という大事なつとめが、社会的な規制として一定事業者に対しても促されています。 こういうところは、消費者の過剰反応に影響されることなく、生産者の実態というものも考慮したものになっていると思います。当時「アクションプログラムがあるのに」と言われ「行政の腰が重たいなあ」と思っていましたが、バランスのとれた良い条例を作っていただいたなあと思っています。 それから二つ目のバランスは、「安全・安心」の視点だけでなく、「食料自給率」「食料の安全保障」「安定供給」の視点等とのバランスのとれた内容だということです。 さらに、「食への安心感の醸成」では、「地産地消、近い食」が具体的な施策やリスクコミュニケーションとしてとらえられています。 こんな良い条例を作っていただけるようになってきた経過含めて、山中技監に披露してもらえれば、関わった者としても大変うれしく思います。以上です。 山中 難しい質問で...。私と知事とはレベルがだいぶ違いますので知事の想いまではなかなかわからないところもありますけれども、知事とのこの間のやり取りで私が感じたことを少し述べさせていただきたいと思います。 今全国で二六の「安全・安心条例」が出来ております。滋賀県はその内の二四番目にできた県で、何も早くできたわけではありません。先ほど申し上げましたように、当時食品にかかわる事件・事故が多く発生し、県政モニターの「食の安全に関するアンケート」でも「不安だ」という率が高くなって、これは手をつけなければいけないということでやったわけです。 知事には「安全・安心」にプラスして「環境」の視点がございます。遠くから海外の物を日本に持ってくることによって、すごいエネルギーを使うわけです。運送費とかのお金もかかります。食の中にそういう環境への配慮も頭の中に描いておられます。 ただこの「安全・安心条例」の中に「環境」と入れるのは非常に難しい。例えば滋賀県には「環境こだわり農産物」の条例もございます。それぞれ目的が違うとなると、何の条例かわからなくなってくる。私どもは衛生サイドですので「食品の安全性」という発想がすぐ出るのですが、知事の場合には「環境」まで含めた、もう少し大きな世界で「食」というものを捉えられておられる。それでこの前文は、私どもの原文に対してかなり手を入れられました。「遠い食より近い食」という発想は、私どもの発想ではなく知事が出されたということでございます。 答えになっていないかもわかりませんが...。 柴田 どうもありがとうございました。 残念ですけれども予定した時間になってしまいました。みなさまご協力ありがとうございました。 |