活動のご案内
県内協同組合合同研修会~2006年度国際協同組合デー~(1)
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県内協同組合合同研修会~2006年度国際協同組合デー~
講演I「地域に根ざした人・物・情報の交流で食・農の再生を」
NPO法人「地域に根ざした食・農の再生フォーラム」 副理事長 渡邊 信夫先生 |
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渡邊 信夫先生プロフィール
NPO法人「地域に根ざした食・農の再生フォーラム」副理事長(70年代、京都生協と京都府下の農協・漁協との地域産直運動の確立に尽力。農学博士・立命館大学講師) |
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21世紀は「逆説の時代」 |
まずNPO法人をつくった私の問題意識を最初に申し上げておきます。
私は、「21世紀は逆説の時代」と認識しています。「逆説の時代」とは、多国籍企業主導のグローバリズムに反対する潮流が主流になる「反グローバリズムの時代」ということです。例えば一つ目、私どもは、30年前に『地域食料自給権』や郷土食・伝統食を大切にした『食育』を叫び実践をしてきました。30年前、京都で「地域食料確立運動」を提起し、日本で初めて生協と農協と生産者が調印をする地域産直を運動化し、「産直三原則」を作り上げました。また、京の伝統野菜のブランド化を勧めました。当時は、「経済法則に反する地域主義者・先祖参り」と批判されていました。しかし、「食育基本法」が成立して、国と県の行政が太鼓をたたく時代に入り、ようやくマイナーリーグからメジャーリーグにあがりました。戦後「米を食ったら馬鹿になる。これからはパンを食え」という運動を、国を挙げてやった。それが60年たって「米を食べよう」「生産者の顔の見える食」という運動をやるわけです。
二つ目は、七月九日のNHK「日曜討論」で、与謝野金融経済大臣が「日銀のゼロ金利政策の転換に賛成だ」と言って、「反対する竹中大臣のマネタリズム理論は、もう十年前に破綻している」と言い切ったのです。これは大変なことなのですね。橋本構造改革のシナリオを書いたのは、当時慶応大学教授だった竹中さんで、小泉構造改革の脚本家兼演出家も竹中大臣なのです。だから、先の選挙の応援演説で「小泉総理とホリエモンと竹中で小泉構造改革を推進していく」と公言したわけです。その理論が「十年前に破綻していた」と現内閣の経済金融大臣が言い切ったわけです。現実も、「ホリエモン・村上ファンド事件」や「世界一の自殺天国」に象徴されるような「ルール無き弱肉強食社会」と「格差拡大社会」は、小泉構造改革が進める「規制緩和・自由化戦略による大競争社会」がもたらした結果であり、すでに破綻していることが明確になりました。「新自由主義・市場原理至上主義に基づくグローバリズム」は破綻したということですね。「大企業・多国籍企業が暴利をむさぼるグローバリズムの時代」から「庶民の暮らしと地域を豊かにする反グローバリズムの時代」への転換が始まろうとしていることです。
三つ目は、「効率・簡便・安価」の大競争社会に生き残るために迷走する世界の協同組合運動です。「失われた10年と絶望の10年」と言われる20年間の規制緩和、自由化の下で、大企業は、大競争社会に生き残るために効率と簡便・安価を実現する合理化再編を徹底し追及してきました。そういう競争社会の中で、世界の協同組合は、広域合併と株式会社化の合理化再編を進めて生き残ろうとしました。そして今や協同組合なのか、株式会社なのかが判明しないというところに、世界の協同組合の混迷があると言われています。勿論、滋賀県を除く、世界の協同組合の話ですが・・(笑い)。どこの農協、生協に行っても、「協同組合の原則」が掲げられています。「万人は一人のために。一人は万人のために」から始まって「組合員の協同による組織運営と経営」の錦の御旗です。しかし、協同組合原則と言われているものと現実の協同組合の乖離は広がっているわけであります。この道筋は本当に「協同組合の道なのか」ということが問題意識の根底にあります。
そして、四つ目は、滋賀県知事選で組織も政治基盤も持たない嘉田さんが『もったいない』の錦の御旗で当選されたことです。滋賀県は、県民所得が全国で三番目、農家所得は日本一ですから、実態は日本で一番豊かな県です。日本一ということは世界一ということです。その一番豊かな県民が、政治選択で「さらに豊かになり贅沢しよう。開発をすすめよう」という路線から、「もったいない県政」に路線転換したことです。当初、誰が予測したでしょうか。この事態は、滋賀県の協同組合運動のあり方を問うております。
これらの事柄が「21世紀は逆説の時代に入った」という私の問題意識の事例です。
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なぜ今 「食・農の再生フォーラム」か |
私どもは、五年ほど前から勉強会を重ねて、ようやくNPO法人を立ち上げました。そこで「なぜ今なのか」ということです。一つは、政府も認める「食と農の危機的状況」です。食育基本法に基づく食育基本計画は「食と農が危機的状況にある」と書いています。しかし、「なぜ危機的状況になったか」ということ、すなわち、戦後60年、「アメリカの余剰小麦や脱脂粉乳を輸入して、食生活をアメリカ化すれば豊かになる」と宣伝したことは一言も言わず、「危機的状況にあるから、これからコメを主食とする日本型食生活に転換しないといけない」と言うわけです。他方、アメリカでは、30年も前に「アメリカの食生活が肥満と生活習慣病の元凶。モデルは日本型食生活」との上院の「報告書」が出されて、その実現に努力しています。いずれにしても、食と農が危機的状況にあることは、「政府お墨付き」の現状認識です。
二つは、一方で「小泉構造改革」として徹底した市場原理、自由化で「お金と市場が基本だ。全て規制は取っ払って、自由化すれば良い」という戦略を推進しながら、他方で「食と農の再生、食料自給率の向上」という矛盾する戦略を同時に成り立せようということです。どちらが本音でしょうか。他方、国民生活の現状は、戦後60年で「効率・簡便・安価の食生活」にどっぷりつかって、労働者が出勤の途中で立ち食いそばを、若者はインスタントラーメンとマクドナルのハンバーガーやコカコーラとコンビニ依存症という、滑稽な「マクドナルド化する社会」です。これが常識化された社会だという現実をどう踏まえて「食育」や「食と農の再生」と取り組むのかが問われています。
三つは、「食は命・文化、農は生命産業・風土産業」という原点に立ち返ることです。私は、権力が法律をタテに安易な「食育」や「食・農の再生」言ってもらっては困るということです。北海道から沖縄まで三千キロの多様な地域に、多様な農業と食文化があります。この多様な地域に依拠し、草の根からの自覚的な運動こそが本物であり大事だと思います。
四つは、農と食をベースに「人・物・金・情報の地域循環システムの再生」を、グローバル化の手段であるインターネットを活用し、情報発信・交流と運動を地域から進めることです。インターネットによって「マクドナルド化する戦後三世代」との情報・提携・交流と運動化を展望しようというのが、われわれの問題意識であります。団塊の世代は、五七歳から五十九歳。団塊の第二世代が三二歳から三四歳。第三世代が五歳から七歳。戦後六十年、三世代にわたって「マクドナルド化する社会」の中にズッポリ浸かってきたわけです。この三世代の食生活をどう認識するかというところから物事は始めないといけません。内橋克人氏が「FECの地域自給自足権(圏域)」と言っています。Fはフード・食料、Eはエネルギー、Cはケアー。食料とエネルギーと介護は公共財で、地域で自給自足していくことが、21世紀の課題だということです。
私どもは、まずF・食料の地域自給自足権(圏域)を展望して食育を目指す。作り手と食べ手の顔が見える関係を目指す。こんなきれいごとを軽々に言っちゃいけないのですが、これを「どう目指すか」なんです。これ以上放置すれば、日本人の胃袋は多国籍企業に支配されてしまいます。
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「再生フォーラム」の課題 |
私どものNPO法人の課題は、一つには、地域に根ざした食生活と食文化の再生を目指すということです。しかし、現実は、地域に根ざした食生活と食文化なんていうのはもう皆無に等しいのです。私は、明日、"京かまぼこ"の老舗「茨木屋」(明治2年創業)を取材して、京の旬「魚ぞうめん」を情報発信したいと思います。足で取材して「旬と地域が輝く食」を発掘し、情報発信していきます。
二つは、地域に根ざした農林漁業の再生と地域食糧確保を目指すということです。今、消費者に「地球規模の異常気象と地震による自然災害と中東の戦争などの社会災害があっても、あなたの胃袋は守ります」という農協が日本にありますか? 私はこの間、長崎県の離島・壱岐の壱岐市農協に行ってきました。五年前四五億だった農業生産販売額が昨年六二億、二年後に七二億、農協の各部門が全て右肩上がりであります。しかも零細な畜産農家や園芸農家が「全員野球方式」と農協の支援事業が支えて、農家と住民の暮らしを守って元気な地域を維持していました。「こんな地域と農協が日本にもある」ということを見てきました。このような取り組みを掘り下げて、具体的な展望を情報として発信していきます。
三つは、地域に根ざした多様な流通システムづくりの情報発信です。戦後の農協は、全て一元集荷して政府(コメ)と中央市場出荷が今までの販売事業でした。これからはもっと多様な流通を仕組まないと「農の再生」も「食育」も実現できません。それを直売所など多様な流通現場を歩いて、地域から情報発信をしていきたい。
四つは、地域からいくら努力をしても、滔々としてグローバリズムの流れは進むわけです。だから「食料主権」という錦の御旗をWTOの国際ルールとしなければなりませんし、「市場原理主義農政」を「食料自給率の向上を基本とする農政」に転換させねばなりません。それを草の根から考え、情報と認識を共有し、実践したいということであります。
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われわれは、何を始めたか?
「活動の柱」 |
私どもNPO法人の活動の柱は、一つが、情報交流の場づくりです。地域から実践的な情報を提供していく。そこで交流、提携する。それを運動化していきたい。
二つは、地域に根ざした、顔の見える「IT食農市場」をつくりたい。勿論、物流は、生協や農協や商工会のメンバーに任せて、われわれは、地域に根ざしたオンリーワンの食品や農林水産物を掘り起こし紹介していくということであります。
三つは、多様な研究者、技術者、専門家、経営者、実践家、運動家が結集しておりますから、様々な交流会や学習会やいろいろな支援活動を行う。これは今後の課題です。
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組織の特徴と参加の形態 |
組織の特徴の一つは、「NPO法人」であるということです。全てのプロがボランティアで参加して、不特定多数者に向かって情報を発信し、交流・提携して行こうという「特定非営利活動法人」だということが一つの特徴であります。
二つは、インターネットを中心の媒体にしていることです。われわれの本来の地場の食文化を継承しているのは、インターネットとは関係ない高齢者世代です。そこから断絶されている「マクドナルド化する社会」にどっぷり浸かって、朝から晩まで携帯電話なしでは過ごせない戦後IT世代に、インターネットでどう繋ぐかというのがミソであり、知恵のだしどころです。
三つは、単なる情報提供、交流だけではなく、少し具体的な実践にも踏み込んでいきたいというのが組織の特徴であります。 この運動に皆さんがどう関わっていけるのか。これは多様な参加形態があります。
一つは、ホームページにアクセスしていただくことです。今ようやく二万件のアクセスです。年内に十万件を突破したいと考えています。
二つは、「こういうNPO法人が、滋賀県を拠点に発足した」ということを関係者や団体に知らせて、協力・協同の関係を築いていただくことです。先般も、「コラボしが21」に出向き、県商工会中央会や関係団体に挨拶回りをし、「協力要請」をしてきました。
三つは、自由な「掲示板」を設けておりますので、そこを開いてみますと大体30歳前後でしょうね、赤ん坊を抱えた女性が、「なんとかママ」というハンドルネームで書き込まれています。「ホームページを開いてレシピを見て、やってみた」ということを書いているわけです。皆さんにも掲示板に参加してもらいたい。
それから暮らしや地域で実践している情報を提供していただき、私どもの情報発信を豊かなものにしていただくことです。できれば自分のコーナーを持っていただきたい。
そのためには、いくらインターネットといっても、金が要りますので、会員、賛助会員を今募集しています。団体会員も結構です。今、ある商工会が団体加入をしてくれました。
そして、運営に参加していただいて充実したものをつくっていきたい。滋賀と京都、これからは全国に広げていこうと思っています。
21世紀は、各協同組合が縦線で組織拡大していく方向・戦略から、多様な地域で協同組合間の多様な新しい連携・提携・協同を強めて、「地域循環システム」を再生して、暮らしと地域を豊かにしていく戦略に転換していく時代ではないでしょうか。その一助として、NPO法人「地域に根ざした食・農の再生フォーラム」を位置づけていただき、ご支援ご協力をいただければ幸いであります。よろしくお願いします。
ご静聴、ありがとうございました。
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