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二〇一三年度国際協同組合デー記念学習・講演会(3)

滋賀の生協 No.163(2013.9.6)
二〇一三年度国際協同組合デー記念学習・講演会
ポスト国際協同組合年 これからの協同組合に期待すること
~組合員とともに、つながりを強めて~

二〇一三年七月四日(木) ピアザ淡海207会議室
主催 IYC記念滋賀県協同組合協議会

講師 増田 佳昭氏(滋賀県立大教授)

【三】JAにおける「支店を核とした協同活動」の提起

   支店は「事業拠点」であり「組織拠点」

 JAの支店は、これまで特に事業拠点ととらえてきた嫌いがありました。しかし、同時に組織の拠点でもあることを見直し再評価し、支店を核に組織の強化に取り組もうというのが、最近のJAの取り組み方針です。

 支店ふれあい委員会が主体となって支店行動計画を作り、支店まつりなどの組合員が集まる場を作る。そしてそういう情報を、手書きの支店だよりを通じて恒常的に地域の人たちに返していく。こういう仕組みによって、JAの支店をより身近なものに感じてもらい、組合員が集まる場に作り上げていこうという戦略です。

 今JAの事業は信用共済事業が中心になっています。それらは、人の付き合いが少なくても成り立つ事業です。だからこそ人々が支店に集まる仕掛けも作っていこうという模索がされているわけです。

 現場としての支所・支店を見直そう。組合員に一番近い拠点なのだから再評価しましょう。組合員活動を重視しましょう。併せて、職員能力の引き出しと活性化もやりましょう。そして、JAとしての明確な位置づけをしましょう。こんな特徴があります。

   支店の組織活動は支店の事業成果と相関する!

 最近、私たちの研究グループでは「支店の組織活動は支店の事業成果と相関する」という研究結果が得られました。この研究で喜ばれたのは、JAの生活指導員です。生協で言えば組織部みたいな仕事です。元気な方ばかりですけど、気の毒なことに「生活指導員は事業活動に直結していない」ということで、冷たい目で見られているように感じることもあったわけです。

 もう一つは、家の光協会というJAグループの出版社です。家の光協会は、雑誌記事などを活用して「組合員活動を盛んにしてください」と言ってきたわけです。だから、「家の光の活動も事業成果と結びついているのだ」ということで喜んでくれたわけです。

 それから、組織活動をやれば事業成果はついてくると旗を振ってきた組合長などのトップが、「やってきたことは間違っていなかった」と喜んでくれています。

・JA支店の組織活動と事業成果の関連性
 宮城県と香川県での調査の解析です。(図2)支店ごとのデータを集め、一つの県で百数十のサンプルを統計的な処理をし、組織活動の数と事業実績のレベルの相関関係をとりました。すると、組織活動のレベルが高い支店は事業実績も良いのです。なぜかわかりませんがそういう相関関係が出てきました。

・支店活動と事業実績との相関関係
 愛知県内のJAでも調査しました。(図3)○印は強い相関関係、△は弱い相関関係です。貯金、貸付金、短期共済、自動車共済、家の光の購読部数も組織活動のレベルと相関がありました。その他、支店行動計画、支店まつり、支店だより、相談活動との相関でも、それなりの結果が出てきています。

・調査結果
 組織活動数が一つ増えると、信用事業成果は五%から一七%増大します。販売・購買事業は〇.一九から一.一三%、貸付残高は〇.一二から〇.一三%、長期共済保有高は〇.〇七から〇.七八%、それぞれ増大するという数字が出ています。

図2

図3

   相関関係と因果関係 組織活動が活発だと支店の業績がいい

 組織活動が活発であるということと、支店業績が良いということが相関関係にあるということは、三つの因果関係が考えられます。(図4)

 Aの因果関係:組織活動が活発なので支店の業績が良い。Bの因果関係:支店の業績が良いから組織活動が活発になる。更に、別の要因Xによる因果関係Cで組織活動も活発だし、支店の業績も良い。この三つしかない。

 Aの因果関係「組織活動が活発なので支店の業績が良い」なら都合がよいのですが、そう単純でもなさそうです。おそらく、組合員と職員が元気になるような、三つ目の要因Xを想定しなければいけないと思います。そのXとは何でしょうか?

図4

   「元気印」の支店へ

 支店長は、事業実績を上げないといけない。その上組織活動もやらなければならない。そうしないと、長い目では協同組合として成果を上げられないと思います。

 うまくいっている支店の支店長は、①支店で取り組む組合員向けの活動が地域内で認知されている→②それは組合員のニーズに合っている→③事業成果に結びついている→④そのために時間の確保ができている。こういうサイクルで考えます。

 しかし一方、①取り組みは改善すべきだ→②支店長の負担が大きい→③支店スタッフの拡充が必要→④本店の支援が必要。こう思っている支店長も多いわけです。

 この支店長の意識を変えなければいけません。変えるために何が必要か。JA全体の位置づけです。本部の位置づけと、支店長の評価基準の明確化で、意識は大きく変わります。

 支店長へのアンケート結果でも、JAの位置づけが明確と強く思うグループでは、八割以上が「金融・共済事業の成果に結びついている」と考えています。時間の確保も、時間がとれている支店長ほど「金融・共済事業の成果に反映している」という自覚も強いです。

 ですから、きちんと位置づけをして、それらの時間を保障してあげれば、支店長も取り組めるし、頭の中の構造も変わってくるということです。

 要するに、支店における「地域活動と経営成果との関係」のカギ、つまり先ほどの三つ目の要因Xは、「支店活動の基本条件を整備」をベースとした「組合員・職員の意識向上」だと思います。これが地域活動を活発にし、支店の業績も良くするという因果関係Cを生み出すのではないでしょうか。 (図5)

図5

   支店協同活動と職員のやりがい

 ICA「ブループリント」でも、職員が意識的に関わることの重要性が述べられていますが、支店協同活動についても職員の関わり方が大事だと思います。

 支店の協同活動に取り組んだ職員は、「全職員が同じ方向で仕事ができた」という感想を持っています。職員は、信用窓口担当、共済の担当、購買担当と普段は全く別の仕事をしています。しかし、支店まつりなどは力を合わせてやらないとうまくいかない。今回初めてこういうイベントに取り組んで、職員が一緒になって仕事ができたということです。

 もう一つは、「組合員との触れ合いが楽しい」ということです。普段はカウンター越しにお客さまとして対面している組合員と、「ともに考える」という視線に変わる楽しさです。

 「JAらしさを自覚した」「意外に地域に根付いているのだな」という感想もあります。

 JA静岡中央会が全職員調査を五年ごとにやっています。五年前の調査結果に比べて、二つの項目で顕著に数字が上がっています。一つは「JAの経営方針への共感」、もう一つは「しごとのやりがい」です。五段階評価で一近く上がっています。

 この五年間の大きな変化は「一支店一協同活動」の取り組みです。組合員と一緒に、組合員を意識して取り組んだ経験が、大きな効果を果していると想像されるわけです。

   地域課題に応える協同組合

 地域を支える。あるいは地域にも支えられる。こういう関係を作っていくことが、協同組合の社会的意義としても大事だし、メッセージとしても大事です。そして協同組合は必要性を満たす組織ですから、課題に応えて何かを作るということも大事です。「地域に向けて何ができるのか」を考える。そういうパワーを今の協同組合は持てるでしょうか。

 私は「小さな協同」に期待します。いろいろな助け合い組織や、協同の動きが出ています。団塊の世代が地域に戻ってきています。そういう動きとどう関係を持つのか。また、役職員は地域の生活者でもあります。自分たちのニーズをテーマに掲げて協同組合運営に関わる。そうすることが、協同組合が地域の課題に応えられる一歩ではないかと思います。

   おわりにー協同組合の職員観について

 地域に根ざし、地域を支え、支えられる協同組合という自覚と責任、誇りは、協同組合職員として大事です。そのために、仕事のやり方を見直していく必要があるのではないでしょうか。スローガンは「組合員のためにだけではなく、組合員とともに」。組合員が求める地域の課題解決で何かできないだろうか。そういう問題意識を持ちながら、仕事をしていくことが求められるのではないかと思うのです。

 仕事を評価する視点は、①事業目標が達成できたか②仲間が増えて組織が強化されたか③組合員と地域の課題解決につながったか、が大事だと思います。資本制企業のルールのように数字を上げた者が勝ちではなく、組織がどう強まったか、課題にどれだけ応えられたかも併せて意識できる役職員。それが期待される役職員像かなと思っています。

 ご清聴ありがとうございました。

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