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特定秘密保護法学習会(2)

滋賀の生協 No.167(2014.7.22)
特定秘密保護法学習会
特定秘密保護法とは?
~どうなる私たちのくらしと知る権利~

2014年3月21日14:00~16:30 コープしが生協会館生活文化ホール
主催 滋賀県生活協同組合連合会/ピースアクション二〇一四・しが実行委員会

講師 近藤 公人氏
(弁護士・滋賀弁護士会会長・滋賀第一法律事務所所属)

第三 事件
   北大生の受難

 戦前の法を理解するためには、どんな事件があったかを知ることが大切だと思います。

 弁護士上田誠吉著の「ある北大生の受難」という本があります。

 共産思想とか自由思想など、治安維持法に抵触する思想など持っていない、ごく普通の北大生が逮捕され、懲役一五年の刑を下されました。

 判決の理由を読みますと、「被告人は昭和一二年三月、東京府第六中学校を卒業して北海道帝国大学予科に入学した。そこでアメリカ人の教授と知り合って、毎週金曜日同夫妻の開催する『英語個人教授会』に出席して、英語会話の教授を受けて、同夫人に心酔して親交を深める。その感化を受けて、極端なる個人自由思想及び反戦思想を抱くようになった。ついに我が国国体に関する軍事軽視の念を抱きたり…」

 この北大生が、海軍の油槽施設の工事に従事し、その設備が大泊町付近の海軍に存在すること、その数、貯蔵量を探知し、アメリカ人の教授に教えた。また、樺太等に旅行に行った際に、海軍の飛行場があること、そこに通信施設があることを教えたということで処罰をされたようです。この飛行場は既に新聞報道がされており、何も軍機ではない。なのに、それを教えたということで処罰をされています。

 その他にも、一九三八年、店の人と数人で呉軍港の近くの桜の名所で宴会し写真を撮った。それが許可を得ないで写真を撮ったということで、軍機法違反ということで処罰されている人もいます。

 「明日は第五師団の一万五千人を動員して防空演習をするので忙しい」と話しただけで、車夫が禁固二ヶ月の処罰をされています。「今度の事変(シナ事変)では約四十万の兵隊が出ているがこれでは足りない。まだまだ招集が来る」と語った工員にも禁固二ヶ月の懲役刑が下されました。

 当時は、「親しき仲にも軍機の秘密」とか「壁に耳あり、話すな軍機」という標語が作られ、軍の機密を漏らさないよう相互を監視し、うっかりしゃべれば処罰されるという状況でありました。

   戦前の地図

 「横須賀市域図」という戦前の地図を見ると、横須賀基地が点線で囲まれ空白になっています。横須賀がそっくり消えた地図もありました。

 現在は、グーグルで地図検索をすると、米軍基地や自衛隊の基地の中は空白で、道路とかも表示されていません。航空写真を見ると、何かがあるのはわかりますが、たぶんアップすることはできないと思います。まだそんな深刻な状況ではありませんが、いずれグーグルでも空白になったら「これは危ないな」と思った方が良いのかなと思っています。

   核持ち込み密約

 今、民間団体が自衛隊に「どんな訓練をしているのか」と調査をしたら、黒塗りの資料が返ってきます。滋賀県にもオスプレイが来ました。「何の訓練をするのか。どこを通るのか教えてください」と聞いても教えてくれませんでした。今でさえ、こういう状況ですから、この法律が施行されると、どんな状態になるか想像に難くないと思います。

 立法過程の議論は、普通議事録となって公開されます。しかし、「特定秘密保護法」は何を議論したかわからない。公開文書も黒塗りがされています。そういう問題のある立法過程であります。

 一九七一年の沖縄返還協定にからむ「外務省機密漏洩事件」はご存じだと思います。

  二〇一四年二月一日の予算委員会で、この「核持ち込み密約」について、安倍さんが「核の持ち込みに関する日米密約を歴代政権が隠ぺいしていたのは間違いだ」と認めた。たぶん今回の「特定秘密保護法」との関係で、世論の逆風を恐れた発言だと思います。しかし、安倍さんの発言は、「隠ぺいし続けたことが問題なのであって、当時隠ぺいしたことは問題ではない」。だから「特定秘密保護法も問題はない」という論理だと思います。

 ただ、この日米密約は、「どういう場合に核を持ち込みます」という密約であって、「いつ、どこへ、どれだけの核を持ち込むか」までは書かれていません。だから、この密約自体が公開されたとしても、軍機には当たらない。でも、安倍さんの論理では、この密約さえも当然秘密になってしまうということになります。

   三ツ矢事件

 「昭和三×年四月、韓国で反乱がおきた。北朝鮮内にも動乱がおきた。中国、またはソ連が日本に侵略してきたらどうするか」。そういう研究を、昭和三八年自衛隊の幹部が極秘に行いました。
国内で「非常事態法」が施行される。自衛隊は治安出動をして、共産党、社会党、総評、安保国民会議、朝鮮総連など、民主的勢力を弾圧する。一挙に戦時国会体制を確立する。そういう計画がびっしり詳しく書き込まれていました。「三ツ矢作戦」と呼ばれています。
実は最近も同様なことがありました。

 二〇〇六年一一月に佐世保の自衛隊の私的なパソコンの情報が、Winny(ウィニー)を通じて漏れた。そこには、中国と北朝鮮が連合艦隊三個師団をもって大阪を占領するために、日本に武力行使するというシナリオが入っていた。二個師団が米子から上陸する。一方、金沢から富山平野は弾道ミサイルで攻撃される。特殊部隊が侵入する。津山盆地で戦争が起きる。このような想定で、いろいろな計画があったようです。

 私たちの知らないところで、実際にこのような研究が進んでいるのです。

   東大ポポロ事件

 一九五二年、東大の「劇団ポポロ」に、どんな公演をしているかを調査するため、私服警官が潜り込んでいたことがばれて観客の一人に捕まった。捕まえた学生は、刑事事件として立件されるわけですけれど、問題はそこではなく、私服警官が持っていた手帳に大学教授の行動の様子、誰と交流があるのか、どんな行動をしているのかが、細かく書かれていたことです。

 もし「特定秘密保護法」が通れば、当然そういうことが合法的にされるということです。

   エドワード・スノーデン事件

 二〇一三年、インターネット、グーグルとかフェィスブック等の情報から、アメリカの国家安全保障局がテロ対策として極秘に大量の個人情報を収集していた。それを「問題ではないか」と、国家安全保障局の局員のエドワード・スノーデンさんが暴露しています。後々ドイツの首脳の携帯電話も盗聴していたという事実も明らかになりました。こういう問題も出てきています。

第四 現行法の秘密漏洩の処罰法
   国家公務員法

 「新たに秘密保護法を作る必要はあるのか」「現行法で処罰できないのか」ということですが、「国家公務員法」には、当然守秘義務があります。

 軍機の機密に関しては、「自衛隊法九六条の二、第一二二条に、防衛秘密保護、懲役五年以下」という法律もあります。

 アメリカからの情報の場合には、「刑事特別法、安保条約に基づき駐留する在日米軍の秘密を保護するための法律、懲役十年以下」があります。

 更に、「MDA秘密保護法、日米防衛援助協定(MDA)等により米国から提供された装備品に関する秘密を保護する法律、懲役十年以下」ができています。

 軍機に関しては、このような法律があるので、あえて作る必要はありません。

 外交問題に関しても「国家公務員法」で保護されているので、大丈夫です。

 TPPに関して、「交渉に関しては非公開」ということになっています。交渉をする前にそういう合意をしていますから、「今どんな交渉をしているのか」は、政府の発表でしか漏れ伝わってこない状況です。

 だから、なにも新しく「特定秘密保護法」をつくらなくても、現行の「国家公務員法」の「守秘義務」で充分対応できるものなのです。

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