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特定秘密保護法学習会(3)

滋賀の生協 No.167(2014.7.22)
特定秘密保護法学習会
特定秘密保護法とは?
~どうなる私たちのくらしと知る権利~

2014年3月21日14:00~16:30 コープしが生協会館生活文化ホール
主催 滋賀県生活協同組合連合会/ピースアクション二〇一四・しが実行委員会

講師 近藤 公人氏
(弁護士・滋賀弁護士会会長・滋賀第一法律事務所所属)

第五 背景
 戦前にあった「間諜罪(スパイ罪)」「軍機漏せつ罪」「軍機保護法」などは、戦後すぐに廃止となっています。

 しかし、「軍事機密を保護する法律を作りたい」ということは、もう昭和二六年の段階から、時の政府要人、法務総裁、副総裁などが、特に岸信介首相が言っていました。一九六〇年(昭和三五年)には法務省が「改正刑法準備草案」の中に「機密探知罪(スパイ罪)」を入れています。

 実際に動き出したのは、一九七八年、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」が日米間で了承されてからです。

 一九七九年二月、国際勝共連合や右翼団体、自民党議員が中心となって、「スパイ防止法制定促進国民会議」が猛然と活動を始め、一九八五年までに全国市町村議会の約四五%の一四九九議会、二七都道府県議会で促進決議を可決しています。

 こういう機運を受けて、一九八〇年に自民党安保調査特別委員会は、「スパイ防止法」第一次案を発表、一九八三年一二月の総選挙で、「スパイ活動防止の立法措置」を公約にしています。

 さらに、一九八四年四月には「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」設立総会をおこないました。会長は岸信介です。

 そして、一九八五年六月、「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律(国家秘密法)案」が自民党の議員立法として国会に提出されました。しかし、国民的な反対運動で廃案になりかけ、中曽根首相は急遽、新自由クラブなどに圧力をかけ、継続審議の決議を強行しています。

 その後、弁護士会も反対運動をして、世論を盛り上げて、逆に地方議会でも反対決議をあげていきました。そして一九八七年に廃案になっております。

 それから十年後の一九九七年八月、「日米新ガイドライン」「日米軍事情報包括保護協定」GSOMIA(ジーソミア)が、福田首相・麻生外相の手で締結されます。

 協定書第六条には「秘密軍事情報を受領する締約国政府は、自国の法令に従って、秘密軍事情報について当該事情を提供する締約国政府により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとることを確約する」となっています。つまり、米国内で施行されている秘密保護措置と同等の措置を日本側に求めたものです。

 これを契機に事態は動いていきました。

 二〇〇八年四月、自公政権の時に、「秘密保全のあり方に関する検討チーム」が発足します。

 二〇一〇年一二月、民主党の政権の時に尖閣沖の衝突事件が起きたこともあり、「政府における情報保全に関する検討委員会」を設置しています。

 二〇一一年一月には、自民党政権に戻って「有識者会議」発足し、そして今回の「特定秘密保護法」に至ったということです。

 「継続審議になれば、世論が盛り上がり廃案になる」という、一九八五年の「国家秘密法」の轍を踏まないよう、今回は反対意見があるにもかかわらず、さっさと法案を通してしまった。

 このように「特定秘密保護法」の背景には「日米新ガイドライン」があります。前回の「国家秘密法」を作ったのは中曽根さんです。中曽根さんは「日本列島は不沈空母だ」と言って、日本をアメリカと一緒に戦争ができる国にしようとした人です。

第六 立憲主義と集団的自衛権
   立憲主義とは何か

 教科書を見ると、「憲法は最高の法律」としか書いていません。「単なる最高法規」ならば、「国民も憲法に拘束されるのが当たり前」と考えてしまいます。しかし、「憲法は国家権力を制限する」というのが「立憲主義」です。「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負う」という九九条の条文は、国民は憲法を尊重し擁護する義務を負わないということです。これは立憲主義憲法の真髄だと言われています。

 しかし、「自民党の改正草案」には、「国民も憲法を尊重する義務がある」と言って、「立憲主義」と矛盾する規定になっています。※

※自民党の憲法改正草案の立憲主義との矛盾
第百二条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。

   社会契約説(ジョン・ロック)

 国家はなぜあるのか。ジョンロックは「社会契約説」でこのように言っています。

1. 個人はすべて生まれながらに自然権を有するため、自然状態においては自由・平等・独立の地位にある。
2. しかし、自然法の遵守を個人の自由放任にゆだねた場合には自然状態が攪乱されるために、自然権のよりよき保全を目的として、自由な意思による相互の同意(契約)に基づいて国家を形成する。
3. 国家は個人が前国家的に有する自然権(基本的人権)を確保するためにこそ存在意義があり、国家の任務もこうした特定の目的のために信託された限定的な内容のもととなる。
4. 従って、個人の前国家的自由のうち国家設定目的にかかわらない部分は、個人の自律的領域として個人のもとに留保されている。国家は制限してはいけませんということです。
5. また、国家がこうした個人の信託に違反し個人の自然権を侵害する場合には、国家は正当性の基礎を失うため、個人は国家との社会契約を破棄し、新しい国家を創る権利を有する。

 国家は個人の自然権(基本的人権)を確保するためにあるのであって、個人の自然権を侵害する場合には、抵抗権の行使とか革命とかで、国家を覆しても良いですよと言っています。

   憲法九条と自衛隊の政府見解

 今「集団的自衛権」の問題が話題になっていますが、政府は今まで「専守防衛」という見解をとっていました。憲法九条と自衛隊の関係を、今までの政府は次のように言っています。

 憲法によって、国民の基本的人権は守られる。国家は、国民の幸福追求権等、様々な自由を「保障」する。「保障」とは、国家として圧迫しないことはもちろん、責任をもって守るということだ。「社会契約説」に基づけば、国家は国民の生命、財産を守る責任がある。

 もし外国から武力攻撃を受けたとき、国家は不正な攻撃への対処、少なくとも人権が侵害されている状況を排除する責任がある。その最低限の責務を遂行するために自衛隊があるのだ。必要最小限度の実力組織を持つことまでは、九条が禁止しているとは考えられない。

 自衛のための必要最小限の実力を超えると、それは「戦力」となり、九条に反する。したがって、長距離弾道ミサイルや空母は持てない。

 これが、今までの政府の「自衛隊合憲」の論拠です。

   自衛権発動の三要件

1. 我が国に対する急迫不正の侵害があること
2. これを排除するために他の適当な手段がないこと
3. 必要最低限度の実力行使にとどまるべきこと

 これが、従来から政府の言ってきた「自衛権の発動の三要件」です。

 安倍さんはこの三要件を基に「必要最小限度の行使は許される」という論理のすり替えをしてきていますが、そもそも「必要最低限度」というのは、条文のどこにも書かれていません。

 三つ目の要件にある「必要最低限度の実力行使」には二つの意味があります。一つは「戦力の範囲」。自国を守るための必要最小限の実力の範囲という意味です。もう一つは「行使の範囲」。国民への権利侵害を排除するための必要最小限の軍事行動の範囲という意味です。

 ところが、①と②の要件が前提で、③の必要最低限の実力行使という「戦力の範囲」の問題と、どのようなときに行使ができるかという「行使の範囲」の問題を一緒に論じて、ことさら③だけに重点を置き、あたかも「必要最小限度の実力行使」だけが、「自衛権発動要件」であるかのような議論をしており、従来の政府見解からも外れた論理のすり替えを行っています。

 もう一つは、我が国に対する武力行使の意味です。一部のテロ組織が日本に攻撃してきても、それは我が国に対する武力行使にあたらない。国または国に準ずる組織が攻撃してきたときに、初めて自衛権の発動になります。だから、一部テロ組織による外国での日本人の人質事件の救出は、そもそも自衛権の発動には当たらないと言われております。

 重要な点は、政府が正確な情報を隠し、自衛権行使にあたらない「テロ組織などへ自衛隊を海外に出動させる」とした場合、国民は、「特定秘密保護法」の壁により、真実を知らないまま、いつの間にか、日本が戦争をしていたということもあり得ることです。また、事後的にも、自衛隊の海外派兵が、憲法が認めていない武力行使だったことも、国民がわからないことになります。

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