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消費者月間記念シンポジウム 晩ごはん何にしますか?(2)

滋賀の生協 No.171(2015.8.5)
消費者月間記念シンポジウム
晩ごはん何にしますか?
~食生活から考える消費者市民社会~

2015年5月30日 ピアザ淡海(滋賀県立県民センター)三階大会議室
主催 滋賀県・特定非営利活動法人消費者ネット・しが

講師 高橋 久仁子氏
(群馬大学名誉教授)

   キャッチコピーの行間
 これは私がいくつかの現実の商品を真似してつくったキャッチコピーです。
「燃焼系飲料YASERUNDES」
「カルシウム」「食物繊維」は補給。「脂肪」「塩分」「カロリー」はさようなら。YASERUNDESはアンバランスな現代人の食生活を考えたカプサイシン入り飲料です。カプサイシンはトウガラシに含まれる辛み成分。体脂肪の燃焼を促進するといわれます。ちょっぴり辛いYASERUNDESをダイエットのおともに。カロリーオフ。
栄養成分(100mlあたり)
エネルギー19kcal ナトリウム12mg
たんぱく質0g カルシウム7mg
脂質0g 食物繊維0.3g
糖質4.7g 内容量500ml
「燃焼系飲料YASERUNDES」は商品名です。「脂肪が燃焼」とは書いていません。「YASERUNDES」に日本語文字を当てはめてはいけません。

 そして『「カルシウム」「食物繊維」は補給。』は体言止めです。この後ろにどんな術語を持ってくるか?「補給(できる)」と思った人は、思う壺にはまりました。
 「不足しがちだから補給(しなくっちゃ)」。「脂肪やカロリーは多くなりすぎるから、さよなら(しなくっちゃ)」。「アンバランスな現代人の食生活を考えた。(考えただけ)」。

 カプサイシンの作用で体脂肪が減少したと実感するには、相当辛いカプサイシン、大量のカプサイシンを摂取する必要がありますので、「ちょっぴり辛い」程度では、減量効果を期待しても無理ですね。

 「ダイエットのおともに」して、何か良いことがあるかどうかは、ノーコメントです。
 そして「カロリーオフ」。食品の栄養表示基準制度の下、100ミリリットル当たりで、エネルギー20キロカロリー以下だったら「カロリーオフ」です。

   読むべきは栄養表示
 「バランス栄養食」と名乗るクッキー類ができております。キャッチコピーとして「身体に必要なタンパク質・脂質・糖質…バランスよく含まれています」とあります。ここまで書くと私は嘘だと思うのです。

 今年の四月から使われている食事摂取基準では、望ましいPFC比率は、タンパク質 一三~二〇%、脂質 二〇~三〇%、炭水化物 五〇~六五%です。

 基本的にクッキーですから油脂含有量が多く、脂質五〇%以上という商品が多い。要するに「ビタミンとミネラルが添加された油脂豊富なクッキー」です。そう思って食べることに文句は言いません。でも、これが毎日の食事というのは困ります。惑わせないでくださいと言いたいです。

   食の安全をおびやかすもの
 今日においてもなお、食中毒が一番危険です。「生レバーの禁止」は当たり前のことです。食中毒は確実に人に害を及ぼします。かつては、年に三桁台の人が亡くなっていました。食中毒は油断をすると起こってしまうものだということに注意を払っていただきたいと思います。

 そして輸入食品。厚生労働省の輸入食品監視統計を見ると、違反件数最多は中華人民共和国です。しかし届け出件数も最多です。違反率(検査件数に対する違反件数)で見ると中国は一番低いのです。一番違反率が高いのは、2012年はアメリカですが、それまではイタリアでした。

 健康食品の無警戒な利用、正体不明なものの無防備な利用。それから個人輸入、これはかなり危険です。

 生食への警戒感の低さ。日本は魚介類の刺身文化が確立していますが、それと食肉をごっちゃにしないでください。そして、二次汚染への関心の低さ。天然・自然ほど怖いものはありません。食べて安全が保障されている植物は、穀類、豆類、野菜、果物だけです。食品に必要な安全というのは、摂食段階の食品が病原生物に汚染されていないことです。加熱して病原生物を死滅させる。生食は危険です。

 そして、常識的な摂取量と摂取方法。有害作用を発現させる量の有毒物質が含まれていないこと。フグは危険部位を除去して食べます。

   普通に食べる。
 食生活は健康に大きく影響します。これは事実ですが、五大栄養素(糖質、タンパク質、脂質、ビタミン、無機質)の摂取ということで考えていただきたい。足りないと発育不良、痩せ、生理機能不全、感染症への抵抗力の低下を起こします。多すぎても肥満、それに伴う健康障害、ビタミンやミネラルでは過剰症が起こります。

 現代は情報の氾濫が「普通に食べる」ということを見えにくくしています。そこで、「そこそこの健康と、ほどほどの食生活で、手をうちませんか」と提案したいと思います。健康維持を考えた食生活の基本は、必要な栄養素を過不足なく摂取する。これにつきます。

 じゃあ、何を、どのくらい、どう食べればいいのか。「ご飯とみそ汁と肉か魚の一皿、野菜一皿」。あるいは「主食としての穀類、主菜としての動物性食品、副菜としての植物性食品」。これを適度な量でという考え方もできると思います。食材の面からは、穀類、魚、肉、卵、牛乳・乳製品、豆、豆製品、油脂類、果物などを適度な量で、野菜や海草、キノコ類などを豊富に食べましょうという言い方もありますね。

   今夜のおかずは何にする?
 「日本人の食事摂取基準」が、この四月から新しくなりました。それに準拠した食品構成を作ってみました。
「日本人の食事摂取基準」に準拠した食品構成の例(成人・一日あたり)
精白米225g 押し麦25g さけ40g 豚ひき肉40g 牛乳100g ヨーグルト100g 鶏卵50g 納豆40g 豆腐50g 小松菜50g にんじん50g ミニトマト50g 大根50g キャベツ50g きゅうり50g タマネギ50g 切り干し大根5g グレープフルーツ150g イチゴ50g じゃがいも50g 砂糖10g なたね油10g ごま油10g ひじき2g ワカメ(乾)1g 焼き海苔2g えのきたけ50g こんにゃく(しらたき)50g
1800キロカロリーでは
不足する人…ご飯、砂糖、油を増やす。嗜好的食品プラスでも。
多すぎる人…ご飯、砂糖、油を減らす。乳製品を低脂肪、肉を赤身に、など。

 余裕のある時は手間暇掛かるお料理を作って楽しむのも結構です。でも、私は「素材型簡便料理」と言っているのですけど、お魚の缶詰などは素材に近い加工食品ですね。そういうものも使いながら、地に足の着いた食生活を営んでほしいと思っております。

   「健康維持・増進の三要素」
 「健康の維持・増進の三要素」は「運動・休養・栄養」です。激しく運動すれば過剰摂取エネルギーを消費できますが、運動や睡眠の不足を栄養で補うことはできません。

 そして忘れて欲しくないことは、人は昼行性、雑食性の生物ということです。昼間は活動して夜間は休息する。雑食性とは、植物性食品も動物性食品のどちらも必要だということです。
 これは非喫煙が前提です。受動喫煙の被害からも身を守りましょう。

   まじめな消費者
 健康さえも買えるかのような錯覚を持ってしまう消費者が悪いのか、持たされる状況が悪いのか。どちらにも責任があると思いますが、提案したいのは「まじめな消費者」であることです。決して堅苦しいことではなく、日々まじめに暮らす「まじめな消費者」であることを、私は提案したいと思っております。

 ご清聴ありがとうございました。

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