滋賀の生協 No.181(2018.11.12) |
特別講演 地域まるごとささえあうみんなの居場所とは〜「地域協同ケア」のススメ 2018年8月29日(水) 琵琶湖ホテル3F「瑠璃」 主催 近畿地区生協府県連協議会 当番県連 滋賀県生活協同組合連合会 関西学院大学人間福祉学部 教授 藤井 博志氏 |
「誰もが、住み慣れた場で、その人らしく、暮らせる、地域社会と、しくみを、みんなでつくる」。そんな地域福祉を実現するためには何が必要か。地域共同ケアの在り方を、日常生活圏域のイメージや地域福祉の拠点づくりの方法、地域と専門職の協働のスタイルなど、豊富な事例をもとに、具体的にお話しいただきました。 |
■はじめに |
私は社会福祉の中でも、福祉と地域づくりをドッキングした地域福祉という分野を研究しています。高島市社会福祉協議会で、まちづくりとしての見守り活動に約七年間関わってきました。途中、コープしがとの共同事業の研究が約一年半ありまして、生協と社協がどう協働して地域をつくっていけるかというディスカッションをさせていただきました。 |
地域共同ケアの概念 |
人間は人と関わりながら生きており、人と関わるために色々なサービスがある。そう考えると、「地域ケア(コミュニティケア)」というのは、専門的、具体的なサービスだけでなく、地域住民が共同して行っていくケアという概念もあるということです。 |
地域福祉とは何か |
「誰もが、住み慣れた場で、その人らしく、暮らせる、地域社会と、しくみを、みんなでつくる」これが地域福祉の目標です。 |
自助・互助・公助 |
よく「人はまず自立をしないと、お互いに助け合えない。お互いに助け合ってもだめな時に公助が出てくる」とおっしゃる方があります。しかし、私は、人は関わりの中で人になっていきますから、「互助の中で自助が育まれる」という考え方が大切だと思っています。 |
日常生活圏域 |
「自由な個人」というものを出発点にして考えを進めていくリベラリズムと、個人を社会の関係性の中で生きているものと捉えるコミュニタリズム。この二つの考え方は対立するものではありません。地域の共同性を基盤に自由が保障される。そのような地域のつながりをつくっていくということです。 |
住民と行政の日常生活圏域の齟齬 |
住民にとっての日常生活圏域とは、住民が自分たちのつながりを暮らしの中でつくっていける範域です。自治会域から小学校区域までを日常生活圏域と地域福祉では読んでいます。 |
これからのまちづくりの要点 |
放っておけば地域は衰退していきますので、地域経営手法が必要になってきます。 |
地域福祉拠点を作つくる |
このような地域福祉の象徴の結節点として、事業者や行政と協働して地域福祉の拠点をつくっていく。そのおよそのイメージは小学校区ぐらいでしょうか。 |
富山県の地域共生ケア |
富山県の地域福祉支援計画の二大柱は、「見守りネットワーク」と「地域共生ケア」です。「見守りネットワーク」は、見守りを小さな網の目のように作っていく住民の関わりです。 |
地域共同ケアの定義 |
「地域という分かち合う関係性が求められる生活の場において、家族、専門職、行政までのあらゆる関係者が参加し、要介護(高齢)者本人を主体とした地域での暮らしを協働でつくりあげる実践」が「地域共同ケア」の定義です。要するに、利用者とかお客さんにしないということです。その人が主体になれる。役割を持てる。そういうふうな拠点の在り方を「地域共同ケア」と呼びたいと思います。 |
「住民の丸投げ」と「専門職の丸抱え」 |
実は日本の介護保険の反省もあるのですけど、「住民の事業者・専門職丸投げ」がひどいですね。それと反対に、福祉専門職にあるのですけど、制度内での「利用者の丸抱え」が見られます。 |
二つの地域共同ケア |
地域共同ケアは、形態として、「住民から作り出す地域共同ケア」と、「専門職と住民が協働して作り出すケア」の二通りがあります。「住民から作り出す地域共同ケア」は、地域福祉拠点の四要素(交流・相談・活動・ケア)の強化。「専門職が住民と協働して作り出すケア」は、地域密着・小規模・多機能がテーマです。 |
住民からつくり出すケア:「沖代すずめ」 |
大分県中津市の「沖代すずめ」は、二〇〇〇年、介護保険が始まった年に開所しました。活動の拠点「すずめの家」は家賃一万八千円、光熱費他一万二千円。 |
要介護3の独り暮らしの認知症の方 |
これは週間表です。住民の見守り、専門のデイサービス、すずめの家。アウトデイサービス、配食サービス、住民参加型のサービス、二四時間の特養のコールセンター…こういう一連の見守りの基盤がうっすらでもあるとかなり暮らせます。 |
専門職と住民でつくり出すケア: ふれあい鹿塩の家 |
宝塚市の「ふれあい鹿塩の家」。民家型デイサービスです。目標は、「地域の縁側になる」「だれでも立ち寄ることのできる居場所を、介護保険サービスを使って実現する」こと。 |
ニーズありきで実践 |
事業者側で運営しない。運営委員会を設けてなるべく地域が運営する。地域に主体を渡していきながら、地域のニーズをそこに持ち込んでいきます。例えば、母親同士で子どもの預かり合いをしたいから場所を貸してほしいというニーズで、共同保育が非常に盛んです。 |
ふれあい鹿塩の家:Tさん |
今、高齢者問題もどこに住むのかという、高齢者サービス住宅であるとか介護施設のニーズがものすごく高まっています。ただ、例えば百床の特別養護老人ホームを建てようとすると、土地代含めて二十五億円ほどかかるとします、単純に計算すれば一ベッド二千五百万円かかるということです。それほど高コストです。しかも、年数がたてば古くなって取り壊さないといけない。 |
専門職による地域共同ケア:「いつでん・どこでん」 |
最後に、地域福祉計画に則った事例をご紹介します。 |
住民の声 |
・息子の家(広島)に引き取られたが、友人もできなかった。多くの人の中にいても孤独だった。一人暮らしになっても、これまでの友人やお付き合いしていた関係を続けられることが大事だった。 |
排除をしない。共に生きる |
今では、ここの地域の男性の人が、自然に、ここの施設の修理を買って出てやっています。自分の地域の財産と捉えているわけです。 |