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消費政策の取組

消費者支援機構関西の活動とその背景(2)

滋賀の生協 No.138 (2006.10.16)

講演II 「消費者支援機構関西」(KC's)の現状と課題
消費者支援機構関西(KC's)事務局長 西島 秀向さん

インタビューアー 滋賀県生活協同組合連合会 池田 信一事務局長

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市場をどう公正で健全なものにしていくかということまで含め、行政の方々との連携で進めていけるといいなぁと思っています。
西島 秀尚氏
消費者団体訴訟制度が日本に根付くためには、適格消費者団体と行政との連携が重要なポイントだと思われます。
池田 信一
現在の消費者被害の現状 (実態)について

池田
今日、2府5県の消費者行政の方、「消費者支援機構関西」(KC's)の役員、各府県連の担当が集まって意見交換をしました。

 意見交換の内容の特徴としては、04年度に比べて05年度はどこの府県でも「架空請求」が大幅に減っているのは事実なんですね。しかし、苦情相談に占める割合は今年度もやっぱり1番多い。手口は年々悪質、巧妙化してきている。 この間のマスコミ報道を見ていますと、新手の「振り込め詐欺」が出ていたり、依然お年寄りをねらった「悪質商法」が跡を絶ちません。現在、消費者被害の実態について、数値を含めて現状を聞かせて下さい。

西島
 全国各地の消費生活センター等に寄せられた消費者被害に係る相談件数は急増し、04年度は183万件を超えましたが、05年度の集計では、架空請求の急減で127万件と減っています。ただ、10年前の4.6倍で事業者の手口はますます、悪質化、巧妙化しているのが実情です。相談の内容では、「契約・解約」が83.3%を占めています。ところが、消費生活センターに相談している方は全体の5.4%という調査結果があり、多くの方が泣き寝入りしているのではないかと推測されます。

池田
 ということは、95%の人が泣き寝入りということですから、まだセーフティーネットが認知されていないということですね。

西島
 そうです。なぜそうなっているのかというと、「訴訟」というのは、やっぱり消費者にとって非常に敷居が高い。消費者がいろいろ証拠を集めて証明しなければいけない。

池田
 そういう手間暇やお金、また「恥をさらすのも嫌だ」というので泣き寝入りをしている人が多い。

「消費者団体訴訟制度」 について

池田
 そのような現状に対して、何とかしなければという思いの中で、私たち生協も含めた消費者は「消費者団体訴訟制度」の法律の必要性を訴えてきました。西島さんの方から、【1】消費者団体訴訟制度とはどういう制度か。【2】また、その制度が国会審議でどうなったか。【3】消費者団体訴訟制度に対応する適格消費者団体として誕生した「消費者支援機構関西」(KC's)の概要・設立目的・組織基盤の整備・機関運営・この間の活動等についてわかりやすく説明して下さいませんか。

西島
 【1】これまでは被害を受けた消費者個人にしか訴える権利がありませんでした。その消費者個人に代わって国の認定を受けた消費者団体に訴える権利を与える画期的な制度が消費者団体訴訟制度です。

 今でも個々の消費者が被害回復を求めて裁判はできます。しかし、先ほど池田さんが言われたように、1件あたりの被害額が少額であることや時間・専門知識などの面で裁判を起こすことの敷居が高く、泣き寝入りしてしまいがちです。このことが悪徳事業者の「やり得」にもつながっています。

 【2】今回の制度は、消費者契約法の一部改正という形で実現したもので、不当な勧誘行為や不当な契約条項の使用を差止める請求権を認めています。しかし、消費者団体への資金面での支援措置は全くありません。一方で政府案にはなかった被害の発生した地域で裁判ができるように修正されました。これは、全国の消費者団体の働きかけによるものと評価できます。衆議院の参考人質疑では「消費者支援機構関西」(KC's)から意見陳述ができ、論点の明確化に貢献できました。今回見送られた損害賠償や特定商取引法、独占禁止法、景品表示法などへの消費者団体訴訟制度の導入は附帯決議にその必要性が盛り込まれ、今後の課題となっています。

 【3】設立目的:消費者被害の未然・拡大防止を目的に消費者団体訴訟制度の担い手となり、制度を活用し不当な勧誘や契約条項の是正、具体的には、消費者被害に関する情報を収集し、申し入れ活動などを行う。このような活動をすすめていく「消費者支援機構関西」を05年12月に設立しました。

 組織基盤の整備につきましては、適格団体の要件としてまず法人でなければならないということがありますので、法人登記は大阪府から特定非営利活動法人として3月22日付けで認証を受け、大阪法務局へ4月3日に登記し、法人として成立しました。大阪府のご協力により事務所を大阪府消費生活センター内に置いており、その住所で登記をしています。これは全国でも例のないことではないかなと思っております。

 適格団体としての要件整備につきましては、年末に向け適格団体の要件などの内容が内閣府令・ガイドラインで決められる見込みですので、それに沿った対応として定款変更等、必要であれば、年明け以降に臨時総会開催の予定にしております。

 会員加入状況ですが9月1日現在、団体正会員が14団体2府5県の生協の連合会や、これまで申し入れ活動を行ってきた消費者団体、あるいは専門の団体にご加入いただいております。(14団体の内訳:NPO法人京都消費者契約ネットワーク、NPO法人消費者ネット関西、NPO法人コンシューマーズ京都、全大阪消費者団体連絡会、なにわの消費者団体連絡会、敷金問題研究会、福井県生活協同組合連合会、滋賀県生活協同組合連合会、京都府生活協同組合連合会、奈良県生活協同組合連合会、大阪府生活協同組合連合会、和歌山県生活協同組合連合会、兵庫県生活協同組合連合会、欠陥住宅関西ネット)

 個人正会員は81名。団体賛助会員が35団体。個人賛助会員が26名です。

池田
 もっとここを増やしたいんですよね。

西島
 ええ、特に当面のところでは財政の問題がありますので、行政からの財政的な支援措置は何もありませんので団体の賛助会員をまず増やしたいのです。目標としては当面100団体ぐらい、個人賛助会員も100名ぐらいにふやしたいということです。

池田
 団体正会員に滋賀県生活協同組合連合会も入っています。団体賛助会員は、滋賀県で入っているのは生活協同組合コープしがのみですね。個人正会員、賛助会員は弁護士、消費生活相談員等何名かいらっしゃいますね。

西島
 そうですね。  機関運営に関しては、理事会は年4回開催、常任理事会は年8回開催ということで、毎月どちらかの理事会が開かれています。ここが対外的意思決定機関ということになります。

 理事会は理事16名、監事が2名。常任理事は7名ということになっております。

 それからそのもとに検討委員会が6名ございまして、月2回程度開催しまして実際に事例の選定だとか、法的な検討、事前交渉、対外活動の必要性等の検討を行って、具体的な事例を検討して理事会に具申することになっております。

 理事会は各府県の検討グループに検討事例を振り分けるということになっております。

 現在、大阪で3つ、兵庫・京都・滋賀・奈良各1の計7グループがインターネットや金融問題等をテーマに活動しています。メンバー構成は消費者団体6名、相談員15名、司法書士12名、弁護士12名、学者1名の計416名の方がご参加、ご協力いただいています。

 ここが消費者契約法だけでなく、関連の法律、例えば特定商取引法等の視点から契約条項、勧誘行為について一定の判断をし、問題点を抽出します。相手方、あるいは対象の内容によってアンケート、ヒアリング等を行います。そして非公開で「お問い合せ」を行いまして、その後相手方から回答がなければ「申入書」を発送します。「申し入れ書」でもまったく回答がないという場合には、行政に「その業者を指導してください」という申し出をやっております。

 「消費者支援機構関西」(KC's)の申入れ第1号は「トリニティー」という英会話学校の事例ですけれども、この英会話学校は強引な勧誘、中途解約に法外な解約料を取られるということで、3月から京都の検討グループが活動を開始しまして、5月1日「お問い合せ」発送して、5月22日の回答期限までに回答がなくて、24日に「申入書」を正式発送したということで、記者会見を行っております。そしてホームページにその内容を掲載するとともに、関係府県に情報を提供しました。

 さらに6月7日までに「申入書」にも回答がなかったため、8月8日に特定商取引法上の申し出を京都府・大阪府・兵庫県に行い、合わせて近畿経済産業局にも申し出ています。

「消費者支援機構関西」 の組織強化について

池田
 消費者団体訴訟制度についてはまだまだ改正する不備な側面がありつつも、消費者にとって画期的な制度であることはよくわかりました。この適格消費者団体としての「消費者支援機構関西」の組織が強化されることが、消費者被害の未然防止や、仮に被害が発生してもそれを早期に拡大をくい止める力になると思われます。

 そこで伺いますが、「消費者支援機構関西」の組織が強化されるためには何が必要だと思われますか。

西島
 検討グループの活動等を活発にすることが第一ですが、財政面では団体賛助会員に加入いただくこと。組織面では個人賛助会員に加入いただくことです。また、現在は2府3県で検討グループが活動していますが、これを2府5県に全体に広げていくというのがひとつの課題です。そのために地元の消費者団体や相談員の方の協力を得て、共催という形で消費者セミナーを定期的に開催することを考えています。

適格消費者団体と消費者行政の連携について
池田
 今日初めて「適格消費者団体」を目指す「消費者支援機構関西」と、各府県の消費者行政の方にお集まりいただいて連携について第1回の会議をもったんですけど、「消費者基本法」の第4条には「地方公共団体の責務」として「地方公共団体は、第2条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にのっとり、国の施策に準じて施策を講じるとともに、当該地域の社会的、経済的状況に応じた消費者施策を推進する責務を有する」となっています。今後、消費者団体訴訟制度が日本に根付くためには、適格消費者団体と消費者行政の連携が重要なポイントだと思われますが、考え方をお聞かせ下さい。

西島
 制度に明記されている消費生活相談に関する情報というのは、悪徳業者の手口や業者名を含めた事例の提供を積極的にしていただくということがポイントだと思います。訴訟支援制度を拡充して、適格団体にも摘要する等、資金面またはそれに代わる援助をお願いしたいと思っています。例えば、会議室の提供や広報面での支援というふうなことも考えられるかと思います。

 それから、悪徳業者に関することのみならず、市場をどう公正で健全なものにしていくかということまで含め、行政の方々との連携で進めていけるといいなというふうに思っています。と言いますのは、悪徳業者のチェック、対応だけで言うと、どうしても「もぐら叩き」的になりますので、それよりもそういう業者を発生させない、あるいは模範的な業者を応援するということで市場を公正で健全なものにしていくということですね。だから大阪府なんかでは「ガイドライン」等を作って、そういった事業者の模範的な事例というのを紹介したり、応援したりしていますね。

池田
 今日はどうもありがとうございました。今後「消費者支援機構関西」が「適格消費者団体」として認定され、日本に消費者団体訴訟というのが根付いて、現状のような悪徳商取引をやっている業者をのさばらせない、また泣き寝入りの消費者を出さない社会にしていきたいと思います。ご活躍をご期待しましてこのインタビューを終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
来年から、団塊の世代の退職が始まり、多額のお金が個人の手元に届きます。 悪質な投資や運用の勧誘に出会わないとも限りません。大事な虎の子です! 人生後半期の資金をみすみす失わないようにうまく使いたいですね。

滋賀県生協連も参加して結成した「消費者支援機構関西」では、退職金運用に関するDM(ダイレクトメール)や勧誘情報を集めています。もし、不当な勧誘行為や不当な契約条項等があれば、是正を求めて事業者に申し入れを行うことや消費者への注意喚起を行いたく考えています。みなさまから、情報の提供をお願いします。お手元に、気になるDM(ダイレクトメール)等がございましたらご提供ください。送り先は以下の通りです。

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