活動のご案内

その他

生協法改正の内容とこれから進めるべき実務対応(1)

滋賀の生協 No.141 (2007.8.6
2007年度会員生協役職員研修会
『生協法改正の内容とこれから進めるべき実務対応』
講師 日本生活協同組合連合会・法規対策室室長 宮部 好広氏

 消費生活協同組合法(略して生協法)が59年ぶりに全面的・総合的に改正されました。生協法改正の内容とは何か。生協法改正に伴って各生協でどんな準備をする必要があるのか。7月11日「2007年度・会員生協役職員研修会」で、日生協の宮部法規対策室長に語っていただきました。
写真
講演される宮部好広氏
写真

PAGE1 >>PAGE2
 こんにちは。日本生協連の宮部と申します。
 まず今回の「改正法案の全体像」です。生協法は第一章から第九章まで、全部で百数条の法律ですが、全章改正をされた大きな改正です。この中でボリュームが非常に大きいのが二番目の「組織・運営規定」と四番目の「共済事業」です。
県域規制の緩和
 まず初めに「県域規制・員外利用規制」。日本生協連の「改正要求案」の中で「最重点の改正要求事項」としていたのが、この「県域規制」と「員外利用規制」です。

  「県域規制」ですが、「職域生協と連合会は県を越えられるが、地域生協は県を越えられない」という現在の規定自体はそのまま残っていますが、「例外的に県域を越えることが出来るケース」というのが新しく設けられました。

 「どういう場合に県域を越えることが出来るか」ですけれども、「購買事業の実施のために必要がある場合、その他省令で定める場合」であります。「その他省令で」というのは形式的な整備ですので、「購買事業の実施のために必要がある場合」に限定をされるということです。「店舗の展開や配送網の展開などを効率的に行うためには、県境に縛られっぱなしでは具合が悪いからその部分については緩和をしましょう」という理屈でこの部分が認められました。

  県域を超える場合も「限度」があります。「主たる事務所の所在地のある県に隣り合う県の範囲」ということですから、滋賀県に主たる事務所がある生協は、京都、福井、三重、岐阜の四県も含めた五県までが一番広い区域の設定ということです。その場合「定款変更」が必要になりますので、「生活圏の状況」や「地理的な状況」等を加味して「購買事業の実施のためこの範囲で必要だ」ということで、「認可申請」をして、必要性が認められれば「認可」をされる。そういう構造になっています。
員外利用規制緩和
 「員外利用規制」は非常に複雑になっています。

  現在の「員外利用規制」は「組合員以外にその事業を利用させることは出来ない」という規定がまずあって「但し、行政庁の許可を得た場合はその限りではない」というふうになっているわけです。

 これが「改正法」のところでは、「法律上、あるいは省令で員外利用させても構わないケースを列挙する」という形に変わっています。その中には「法律で書いてある事由に該当すれば、一々許可を得なくても組合員以外に提供しても構わない」ケースと、「許可を得てからでないとダメですよ」というケースがあります。

 「許可が必要なケース」。例えば「保育園・老人ホーム等に物資を提供する」時は、「こういう理由で要請があったので提供したいんですけど」と「許可申請」を出して「許可」が得られたら供給する。

 「許可が必要」なグループは三つあります。

  一番目は「山間僻地・離島等での物資提供」。「不便なところで生協しかありません」という時に「それは提供しないと困るでしょう」という場合ですね。

 二番目は先ほど申し上げました「保育園・老人ホーム等の物資提供」。  三番目の「生協間の物資提供」。これは現在でも許可で認められているものです。

 この三つはいずれも「分量制限」がありまして、「組合員事業の五分の一までは許可を得たら員外利用させても良い」ということになります。

  これに対して、「許可が不要なグループ」は、例えば「災害時の緊急物資提供する」場合、県なり市なりの要請に応えて行うということがあれば、「一々許可を得なくても提供して構わない」ということです。なので、この「許可不要」のグループは、「員外利用させるかどうか」が、それぞれの生協の判断に任されているということです。

 「許可不要」のケースは、一つは現行でも認められている「自賠責共済」の場合です。例えば組合員さんが車を買った時に自賠責共済に入ったとしても、車を売ることによって保険の契約者が別の人に変わる。そういう時に「員外利用がどうこう」言っていても始まりませんから、「それは構わないよ」ということです。

 「災害時の緊急物資提供」は先ほど申し上げた通りですね。

 「専売品等の提供」。これは「お酒」が一番の問題だと思います。今まで「お酒の販売免許」を取る時に、「員外利用許可」を先に取らないと「販売免許の申請」が出来ないという運用がされていたんですが、「お酒を売る」となったら自動的に「組合員以外にも売っても構いません。事前に員外利用許可を取らなくても良いです」という趣旨であります。

 「体育施設・教養文化施設の利用」というのは、地域の人たちが使えるような施設を生協が持っている場合、「空いている時に使ってもらうのは構わないのではないか」ということです。具体的な「施設」については省令で定めることになっているので、「会議施設も入れてください」ということで要望をしています。

  「行政から委託を受けて行う事業」や、「医療・福祉事業」、「職域生協の母体企業や大学による利用」も、「許可不要」のケースの中に含まれるということになっています。
総(代)会関係
 現在「組合員数が千人以上でないと総代会をおけない」ということになっています。従って、職域生協や大学生協など千人に満たない小規模なところは、毎年「総会」をやらないといけなかった。今回の改正で設置基準が「組合員五百人以上」まで引き下げられています。

  「総代会の招集手続き」。総代会を招集するに当たっては、「日時、場所、議題、その他省令で定める事項を理事会で決めましょう。その決めた事項は記載をして、招集通知を総代会の十日前までに発送する」と法律に書かれました。現行では「総代会の五日前までに通知する」となっています。「通知」するということは「到着」しなければいけない。そうすると郵送の場合通常二日間ぐらい余裕をみますので七日前には発送をしなければいけない。で、新しいルールでは「十日前に発送をしなさい」ということですので、今まで七日前発送だったのが三日ぐらい早まるということです。「通常総代会」の場合は、おそらくもっと余裕を持って招集をしていると思うので、それほど問題にならないと思います。

   「総代会の議決事項」ですが、「借入金最高限度額」が除外をされました。何故除外されたか。これは後で出てくる「理事会を設置した」ということと大きく関係するわけです。

  今までも定款で「理事会」は設置をしていたわけですが、法律上、会議体としては「総(代)会」しかなく、「総(代)会」で決めたら後は理事が執行するという枠組みだったわけです。しかし実際には、「総(代)会」で決めたことについて、さらに執行する時に慎重にするために「理事会」というものを設けて審議するというふうにしていたわけですけれども、今回「理事会」を「法律上の機関」として設けました。今まで一つしかなかった法律上の会議体が二つになった。そうすると「理事会」と「総代会」との「役割分担」の法律上の調整が必要になる。

  その時に「総代会」では、「基本的には事業の計画や方針」とかを決め、実際「借り入れをどうするとかという経営判断に関わる問題」については「理事会」がこれを担うというふうに整理するのが良いだろうということで、「借入金最高限度額が総代会の議決事項から除外された」ということです。

  その他で大きいのは、「解散・合併の手続き」です。解散とか合併はどんな大規模な生協でも「総会を開催しなさい」ということになっていました。例えば十万人の組合員では、開催する会場すらない、集まったところで会議なんか出来るわけがない。それで「総代会で議決できるようにして欲しい」との要望でこのようになったということです。
役員の任期・資格・選出・報酬・責任
 「役員」のところが結構大きく変わっています。まず「任期」。

  現行法律上は「任期二年」と決めているんですが、「但し、定款で三年以内において定めている時は優先します」ということになっています。

 これが「理事については二年以内で定款に定める」と一年短くなったんですね。実際には皆さん理事の任期は二年としていますので、このままで全然かまわないんですけれども、「監事」の方は逆に「四年以内において定款で定める」というふうに伸びました。「四年以内」ということですので、「二年」と定款で定めることも法律上は可能です。

 何故「四年」に延びたのか。これは「監事の権限の強化」と関係があります。何故監事の権限が強化されたかというのは、総(代)会の他に執行機関として理事会を設置し、その理事会の権限も強化をすることと関係しているわけです。

 総(代)会で全部決めるとなると、年一回しか重要な事項を決められないことになって問題がありますので、機能的な運営をするために理事会に権限を移すという方向があるわけです。で、理事会の権限が強化をされたということは、それをチェックする監事の権限も強化をされないとバランスが取れないということですね。

 しかし、ただ監事の権限だけを強化をしても、「独立性保障」がないと権限を行使できない。例えば株式会社の場合、常勤の監査役というのは職員上がりで、大体社長の部下なんですね。そうすると如何に法律上監査役に権限があっても行使できない場合があるわけです。生協の場合は監事の独立性は高いので権限を行使されているかと思いますが、一応制度上の「独立性の保障」として、任期の四年間はその地位を基本的には奪われないということで地位の安定につながるという理屈です。

 「員外理事」と「員外監事」のところですが、現在「員外理事」は最大で「定数の五分の一」までしか選べませんが、これが「定数の三分の一」まで拡大をしたということです。

 「監事」は現在「組合員でなければいけない」ということになっていますが、「改正法」ではそういう規定そのものがなくなっています。ですから「監事は誰から選んでも良い」。それは各生協が決めれば良いということになったわけです。

 それから「員外監事の設置を義務付けられる場合」という基準が出来た。ただ、「義務付けられる生協」というのは「負債総額二百億円以上」となる見込みでして、全国会員生協の中でも四つしか該当するところはありません。ですが、義務付けられていなくても監事の権限が強まるということとの関係では、有識者の方になっていただくなど、どういう体勢にしていくかということは各生協で考えていく必要があるんじゃないかと思います。

 また「常勤監事を置かなければいけない」という生協も出てきました。これも「負債総額二百億円以上」の基準ですけれども、基準に達していなくても現在「常勤監事」を設置しているケースもありますから、それは別に妨げるものではありません。自主的にやっていただければいいのではないかと思います。

 「選出方法」が変わりました。現在、役員の選出方法は「選挙方式」しか認められていません。「選挙方式」とは、選挙公告をして立候補を受け付ける。総代会で投票をする時に個人別に投票をして○の多い人から当選をする。一方「選任方式」とは、総代会に対して理事会から次期の役員体制を全部まとめて議案として提案をする。提案を受けた総代会はそれに対して一括で決をとる。で、賛成が過半数であれば全員が選任されますし、過半数に達しない場合は全員が選出されなかったことになるので、初めから提案をしなおすということになる。この「選任方式」が新たに導入をされました。どっちを選ぶかは、各生協ごとに選んで、定款に記述することになります。

 「欠員の補充」は現在「五分の一を超えた欠員の場合一ヶ月以内に補充をしろ」となっていますが、これが「三ヶ月以内」に伸びました。

 「役員の責任」については、規定が設けられました。しかし、今までも規定がなかっただけで、解釈上は「役員の責任」は認められていました。役員は生協に対して「善管注意義務」があります。「善管注意義務」とは「生協から委任を受けている役員は、善良なる管理者の注意を払う責任があります」ということです。この「善管注意義務」に違反した場合は、「委任契約があるのにその契約に従わなかったということで、損害が生じた場合は賠償責任があります」というのが基本的な考え方でした。

 「第三者に対する責任」というのも一応認められていました。「職務を行うについて故意または過失で第三者の利益を侵害した場合、その損害を賠償する責任があります」ということです。現実に「第三者に対する責任」が裁判で問われたのが「釧路の訴訟」です。この場合組合員は「組合員借入金の債権者」としてその責任を問うたわけです。これは粉飾決算をしていたケースなので、「その粉飾決算をやっていた人たち、過失によって見逃した人たちは、第三者である組合債の債権者の人に責任がある」ということになりました。

 今回新たに設けられた、「生協に対する責任」とは「任務を怠った場合に、それによって生じた損害賠償責任を負いますよ」ということで、この「任務を怠った」とは「善管注意義務違反」ということですので、基本的に今までと同じであります。

 「総(代)会の特別議決による責任の軽減制度」というのが導入されました。もっとも、善管注意義務違反がなければ法的な責任はないので、そういう場合には別に損害賠償責任は負いません。「善管注意義務違反があって、損害賠償責任があるとなった場合でも、総代会の議決でここまでは軽減することができます」という仕組みです。

「第三者に対する責任」も、「職務を行うについて、悪意または重過失があった場合、それによる第三者の損害の賠償責任を負う」。これも現在と基本的には変わらないわけです。この典型的なケースは、「粉飾決算」です。「決算書類の重要事項の虚偽記載」というのが「粉飾決算」のことですね。
PAGE1 >>PAGE2