藤井 はい。どうもありがとうございました。戸田さんは「わたし琵琶湖の漁師です」(光文社新書)という世界湖沼会議の時に関わった本当におもしろい本を上梓されておられます。そこの口絵に、鮎を獲るには、六月七月にかけての「鮎すくい漁」というものすごく格好良い写真があります。機会があれば是非ご覧いただければと思います。
さて澤田さんですが、さっき楽屋ですごく感動的な話を伺いました。山側の山林の組合長さんが、雪の降った後、雪の状態を山に見に行く時は「川下にこれで水は足りているんかいねえ」ということを思いながら見るという話です。びわ湖に住んで普通に暮らしている者として、そんな思いで山人がいるということに感動しました。
さて「わたしは山人ではないのよ」と言いながら、実は三年前から山に入っている、山主でもある澤田さん。お願いいたします。
澤田 みなさんこんにちは。株式会社マルトの澤田と申します。
私たちの株式会社マルトというのは「近江の森と樹を活かす家づくり」ということで、活動しているんですが、山に入りだしたのは実を言うと数年前からです。実際に山に入って、いろいろ気がつくことがいっぱい出て参りました。それを話したいと思います。
滋賀県と言うといつもびわ湖があるんですが、こんなに周りがいっぱいあるんですね。(図一)滋賀県は森林が半分あります。そこからびわ湖や農地に水が流れていくわけです。私の会社は八〇年前、芹川の上流の多賀町佐目というところで、山から木を出して製材することから始まりました。昔は建築材の製材をしながら、その端材は木箱に使ったり、割り箸に使ったり、お風呂の焚き付けに使ったりして、ちゃんと川下と川上がつながっていたんですね。山人と言われたんですが、実を言うと私達の仕事は山中の仕事になります。
ところが、建築も始めてしばらく経ってから、地元の木を使わなくなりました。それで、山の方、林業の方との交流が途絶えてしまいました。その後、三、四年前に「エコアクション二一」という環境の取組みを始めまして、それで「企業から樹業へ」、もう一度山を見て仕事をしていこうということで、川上と川下をつなごうというふうに動いております。
図一 |