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環境の取組

第24回滋賀県生協大会 「山人と漁師が語る森と湖からのメッセージ」(2)

滋賀の生協 No.143 (2008.3.10
第24回滋賀県生協大会 パネルディスカッション
「山人と漁師が語る森と湖からのメッセージ」
戸田 直弘さん(守山漁業協同組合)
澤田 順子さん(株式会社マルト)
藤井 絢子(滋賀県生協連常務理事)コーディネーター

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森の時間で考える

 これは二〇〇二年の多賀町の木の年齢別の面積グラフです。(図二)樹齢五十年、六十年のところが「植え過ぎだ」「手入れ不足だ」「広葉樹は伐るな」とか「間伐しろ」と言われているんです。でも間伐では樹齢のバランスを整えることはできない。伐採して「使う」ことで、植林する資金を山主に還し、健康な森林にしなければ、三〇年後はこのグラフがスライドするだけになるんですね。(図三)

 今温暖化が進んでおりまして、木材輸入も、もう少ししたらしにくくなってくるかもしれません。そうすると国内で樹をまかなうという事が必要になってきます。そういう事も考えて、自分たちが守らなければならないものは、自分たちで考えて、動いていけたらなあと思います。悲しい事に年齢と同じでね、今から、コンスタントに植えていっても、ちょうど良い梁材になるには、九十年、百年ぐらいの年月が必要です。みなさんにも「森の時間」で考えていただけたらなあと思います。



図二




図三
外来魚を災害時備蓄食料に

藤井 なるほど、「森の時間」ってすごい言葉ですね。

 さて、戸田さんですが、去年滋賀県で「海づくり大会」があった時、天皇が「五十年前にブルーギルを私がシカゴから日本に持ってきました。当時栄養状態が大変悪いので栄養の足しに」というふうにおっしゃっていたのですが、その時に湖人が「外来魚は今まで全部肥料にしていたけれど、やっぱり食べないといけないんだ」というふうに動いたという話を聞かせてください。

 もう一つは、さっき「酸欠」の話がありましたよね。本当にびわ湖の魚は死んでしまうのか。今びわ湖の魚はどうなっているのですか。魚の行動など含めて、私たちが知らないようなことを是非教えてください。

戸田 僕はあの時漁業青年会で、ナマで聞く場所にいさせていただきました。天皇陛下の「私たちがブルーギルを持って帰ってきました。心を痛めています」というお言葉は確かにありました。ありましたが、マスコミはそればっかり取り上げている。でも、その後に「日本国民の食べられる魚だと思っていました」というお言葉が続いていたんですね。

 で、私たち「漁業青年会」という気心知れた仲間で話し合ったんですが、「今な、滋賀県のお金使わせてもろうてるやん。ホンマに今県の財政って火の車。大変な時期やろ。その時期に使わせてもらってるお金で飼料、肥料だけつくっているってもったいないやん。なにかでけへん?」「今、災害緊急時の備蓄食料などの確保にいろいろお金がいるらしいやん」「わざわざ新しいお金じゃなくって、びわ湖に投入した外来魚駆除のお金で缶詰、加工品にしたら、県民に還元できるんと違うの」「新たな備蓄災害時の緊急なんたらかんたらのお金を投入しなくても、それが巡り巡ったら使えるやん。エエん違うのコレ」と言う仲間が出てきました。そして、福井県立小浜水産高等学校の中西先生をはじめ、生徒のみなさんに協力いただいて作ってみました。後で生協食堂の方でいただいてみてください。

算には、斜面の影響が入っていません。これに斜面の効果を入れてやると、酸素の減少は少なくなります。だから琵琶湖の斜面というのは、すごく大事だということがわかります。

漁師が見たびわ湖の生態

 「酸欠」の話ですが、研究者・学者の方も、僕ら漁師も、みなさんも、みんなびわ湖に良かれと思って考え、行動もしていると思います。でも研究者はどうしても「危機感」を前面にもって構えているんで、それを聞くと「ホンマに大丈夫?」「溶存酸素濃度が低下している?」「ほんなら、一番深い所にいるイサザなんかが一番大変なんと違うの?今」と思うんですね。けれど、ここ十年来にしたら漁獲高上がっているんですよね。ちょっと研究者の方々は、実際のびわ湖とは、ちょっとニュアンスの違うところもあります。

 魚というのは子孫を残すために必死です。本モロコという魚も今までと棲息行動が変わってきました。間違いなく僕の目には変わってきたと映っています。今まで居てたところが住みにくくなったら死に絶えるんじゃないんですね。必死で自分たちがどこに卵を産んだら子孫を残していけるかと探します。野洲川、あれは人間が作った野洲川放水路です。けれども、魚たちは、野洲川の中州に絶好の産卵場所を見つけたんですね。単なる人間が作った放水路でも、二十数年経ったら、本もろこはそこを自分たちの生き残れる場所やという捉え方をしています。それを最近感じています。

水源の森からのSOS

藤井 なるほど。人間が思っているのと違う行動がちゃんとあるんですね。すごいですね。澤田さんはさっき、一般の人たちは「樹を伐ることはアカン」と言うているけれども、「伐って使わなアカン」ということをしきりにおっしゃって、今日はお手元に炭を持ってきていただいているんですが、炭の一キロの炭の効用をお話いただけませんか。

澤田 これはちょうどみなさんが一日に呼吸して出される二酸化炭素の量と同じ分の炭素の塊である炭なんでね。今一人一日一キロ削減しましょうと言っている。これを燃やせば一キロの二酸化炭素が出るんです。

 実を言うと、今山もひどい状態になっておりまして、鈴鹿山脈の上は、酸性化がきつい土壌になっているんです。その結果、今「ナラ枯れ」などが起こってきています。だから土壌とか、農業とかに活かして土に返すことで、炭素を固定して使っていただければと思っています。

藤井 今滋賀の山でも、「松枯れ」に続いて「ナラ枯れ」が起きているんですね。

澤田 「松枯れ」の時も虫の所為にされたのですが、今中国の方からもいろんなものが…

藤井 酸性雨。

澤田 とか、いろいろあるんですけど、雲に乗ってやってくるので、ドンと山に当たるんですね。だから、樹が枯れるという状況というのを見ていると、先に湖北の方、例えば余呉の方とかから「何かおかしいぞ」という話が聞こえてきて、湖東の方で「あれ?」というのが出てきて、その後永源寺の方がというような感じになっているので、いま少し心配はしています。

山を元気にウッドマイルズ

藤井 こんな調子で本当は一、二時間話したいんですが、もう時間がないのです。それで、私達の今日の「山人と湖人をつなぐ」というのは、本で言えば、ほんの序章です。さあ一章から作っていかなければいけません。滋賀県生協大会はそのためにあったようなもので、「湖人と山人をつなぐ。山とびわ湖を結ぶ」というところの一章からどういうふうに書いていくか。つまり私たちはどう行動すると、子供たちの未来につなぐことができるか。そんなヒントが、今日の短いこのトークの中でも受け取っていただければ大変幸いです。

 さて、戸田さん、澤田さん。びわ湖になりかわって、山になりかわって一言ずつどうぞ。

澤田 先ほど「フードマイレージ」とおっしゃったんですけれども、「ウッドマイルズ」というのもありまして、みなさんが新築される家に近くの樹を使っていただければ、滋賀県全体、家庭部門の二酸化炭素の三・五パーセント削減できます。(図四)

 でも今丸太の木はペットボトル一本と同じ値段なんです。(図五)山主に手入れするお金が返っていません。これはやっぱり流通から変えていかないと。みなさん、これからもし樹を使われることがあれば、「それはどこの木ですか?」と聞いてみてください。そして近くの山の樹を使っていただくことが、山を元気にするんだというふうに、ちょっと意識を持っていただければ幸いです。


先ほど「フードマイレージ」とおっしゃったんですけれども、「ウッドマイルズ」というのもありまして、みなさんが新築される家に近くの樹を使っていただければ、滋賀県全体、家庭部門の二酸化炭素の三・五パーセント削減できます。でも今丸太の木はペットボトル一本と同じ値段なんです。山主に手入れするお金が返っていません。これはやっぱり流通から変えていかないと。
写真

澤田 順子さん




図四




図五
近くのものを毎日食べる

戸田 「びわ湖は自分のものや」という意識で漁業をしている者は僕のほかにもまだいっぱいいます。そいつらはもしかしたら湖守、びわ湖を監視、管理していけるやつらかも知れません。

 私は食べたことはありませんが「上海蟹っておいしいですか?」僕もロブスター、年に一回ぐらい食べますが、ボリュームがあっておいしいですね。でもびわ湖の「すじえび」、毎日食卓に上がっていても飽きませんよ。おいしいですよ。外国の食べ物もたまには食って良いですやんか。近くのやつ毎日食べていただければ。そういうことが、もしかしたら、川であり、山であり、里の田畑を活かせるんじゃないかと思います。自分自身も、そういうふうに生活を移行していけたらなと思っています。「極力」「なるべく」で良いと思います。

藤井 はい、どうもありがとうございました。もう時間をオーバーしていますので、これで閉じなければいけません。湖人、山人のメッセージがみなさまのところに届いてくださったことを願ってこのセッションを終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

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