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2010年度県連役員研修会 日本の生協2020年ビジョン(3)

滋賀の生協 No.155(2011.4.12)
2010年度県連役員研修会
日本の生協2020年ビジョン

2011年2月11日 ライズヴィル都賀山

日本生活協同組合連合会政策企画部 高橋 怜一さん

   いま、なぜビジョンなのか・一つ目の視点

 第一次案の全国論議を受けて策定した「第二次案」の中身についてご説明をさせていただきます。

 第一部で「いま、なぜビジョンなのか」ということで、時代認識や生協の到達点等について、大きく四つの視点で書かせていただいています。第二部では、一〇年後のありたい姿としてのビジョンと、それを実現するための五つのアクションプランを掲げさせていただいています。

 「いま、なぜビジョンなのか」の一つ目の視点は、「新たな時代の要請に応え、協同組合の役割を発揮すべきとき」という時代認識です。

 私たちは、生協の二一世紀理念で「自立した市民の協同の力で、人間らしいくらしの創造と、持続可能な社会の実現」を掲げました。しかし、二一世紀も十年が過ぎた今、環境問題はむしろ悪化し、戦争や核兵器はなかなか減る方向にはない。また、二〇〇八年のリーマンショック以降の経済危機で、市場原理主義の歪み、矛盾が露呈しました。日本社会もこの十年、格差や貧困が広がっています。理念で掲げた市民は、自立すら難しい人々が増えています。

 これまでの社会の枠組みや経済構造では、なかなか理念の実現につながらない。新たな社会づくりには、協同組合の価値や仕組みが有効ではないか。国連が二〇一二年を「国際協同組合年」に設定するなど、社会的にも期待されている。「協同組合が積極的な役割を果たさないと、良い社会やくらしは実現できない」という認識を最初に示させていただいています。

   いま、なぜビジョンなのか・二つ目の視点

 二つ目の視点は、「組合員のくらしがかつてなくきびしさを増す時代」ということです。既に組合員のくらしは厳しいわけですが、客観的にみると、今後さらに厳しくなると言わざるを得ません。

 まず、人口減少と少子高齢化です。国立社会保障・人口問題研究所の都道府県別将来推計人口によると、人口推移の地域差が激しくなっていて、最も人口減少率が低いのは東海地方、高いのは東北地方と四国地方です。滋賀県は、全国的にも珍しく十年後も人口が減らないという推計になっています。高齢化率の推移も、少子高齢化の進行が一番激しいのは四国地方で、東海地方が一番ゆるやかということになっています。滋賀県も比較的ゆるやかな推移となっています。

 家族のあり方も大きく変容しています。日本の世帯数の将来推計をみると、生協が飛躍した一九八〇年、「夫婦と子ども世帯」は全体の四二・一パーセントですけれども、二〇一〇年現在二七・九パーセントで、二〇二〇年には二四・六パーセントに減っていくということです。逆に「単身世帯」は一九八〇年に一九・八パーセントだったのが、二〇一〇年には三一・二パーセント、二〇二〇年には三四・四パーセントになるそうです。家族のあり方が変わってきている中で、生協はどう対応していくかというのが課題だというふうに思います。

 所得格差もこの間拡大してきているので、これもなんとか政策等に働きかけていかなければならない。ほっておいたらこのまま拡大し続けるだろうという見方をしています。

 地域コミュニティの希薄化も進行しています。平成一九年度版国民生活白書によると、一九七五年、「近所と親しく付き合っている方」が五二・八パーセントいらっしゃったのですが、二〇〇七年「近所とよく行き来している方」は、一〇・七パーセントということです。隣近所との付き合いが大きく減ってきている中で、孤独死とかの問題が浮かび上がって、「無縁社会」等という言葉も生まれてきています。

 国の財政赤字が膨れ上がっている中、高齢化によって社会保障給付も増えています。国と地方をあわせた長期債務残高は、二〇一〇年度末で八六九兆円に達する見込みです。

   いま、なぜビジョンなのか・三つ目の視点

 三つ目の視点は、「くらしへの役立ちをより一層高めていくことが求められる生協事業」です。

 地域生協の組合員数は一貫して増加を続けてきました。しかし一方で一人当たりの利用高は減少傾向が続いていて、総事業高も二〇〇八年以降減少に転じています。「組合員のくらしと生協事業の結びつきを深めきれていないのではないか」という問題提起をさせていただきました。

   いま、なぜビジョンなのか・四つ目の視点

 四つ目の視点は、「いまこそ、新たなビジョンを掲げよう」という呼びかけです。

 「日本の生協の二〇二〇年ビジョン」は、日本の生協運動全体を視野に置きつつ、主に地域購買生協のありたい姿を共通認識にするためのものです。

 なかなか十年後の社会環境もわからない、一、二年先もわからないという変化の激しい時代だからこそ、組合員一人ひとり、職員一人ひとりが「こうしていきたい」というビジョンを掲げて挑戦していかないと前進できないのではないか、ということで、呼びかけをさせていただいています。

   ビジョン(一〇年後のありたい姿)

 ビジョン本体は、一〇年後のありたい姿という形でまとめています。

 「一言で言えば」ということで、「私たちは『人々がつながり、笑顔があふれ、信頼が広がる新しい社会の実現』を目指します」という提案をさせていただきました。

 その上で、まず「私たちは、協同組合のアイデンティティに関するICA声明と生協の二一世紀理念『自立した市民の協同の力で人間らしいくらしの創造と持続可能な社会の実現を』を生協の事業・活動に貫きます」と宣言させていただきました。

 「第一次案」の論議の中で「地域の過半数で何を実現するのか」というご意見もありましたので、失われつつある人びとのつながりを新たに紡いでいく、そのために「それぞれの地域で過半数世帯の参加をめざし…協同組合の価値を広げます」ということを掲げています。過半数の参加をめざすためには、生涯を通じて利用できる事業・サービスが必要だということで、「生協の総合力を発揮し…人びとのつながりと笑顔、くらしの安心の実現をめざします」ということを、最初のありたい姿を提案させていただいています。

 二つ目に、生協だけが頑張っても地域や社会は良くならないので、地域社会の一員として「生協の事業・活動のインフラを活用し…さまざまなネットワークを広げながら、地域社会づくりに積極的に参加します」ということです。

 三つ目に、「持続可能な社会の実現に向けて、積極的な役割を果たします」という宣言の上で、「お互いが信頼して助け合う新しい消費者市民社会を創り上げていきます」と提案させていただきました。

 「第一次案」の論議の中で、地域で過半数の参加を実現するのに、事業面では「宅配や共済だけでは難しい。店舗の確立が不可欠だ」という意見がありました。二〇〇九年度推計で全国平均組織率は三四・八パーセントです。二〇二〇年にそれぞれの地域で過半数参加をめざすには、アクションプラン全体を通して、連合会や会員生協、組合員、それぞれの立場で過半数参加のイメージを捉え、掲げていきたいということにしています。

 都道府県別に見ますと、宮城県が七割近い組織率を持っています。以下、兵庫県、新潟県、四位の北海道まで五割を超えています。滋賀県は二〇〇八年度で二六・八パーセントという組織率ですが、それぞれ都道府県単位では難しくても、小さな単位で挑戦していけないかという提起とさせていただいております。

   五つのアクションプラン

 「アクションプラン」のご紹介をさせていただきます。

 「五つのアクションプラン」の位置付けを図で示させていただいています。※(図2)

 ICA声明の定義に、「協同組合は、共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的ニーズと願いを満たすために…」とあります。ICA声明を貫く意味では、第一に「アクションプラン(1)」は「ふだんのくらしへの役立ち」として中核に位置づけています。その「ふだんのくらしへの役立ち」から始まって「アクションプラン(2)地域社会づくりへの参加」、「アクションプラン(3)世界と日本社会への貢献」へとつながっていくという位置付けを明確にさせていただきました。

 このアクションプラン(1)から(3)を実現していくために、「アクションプラン(4)元気な組合員組織と職員組織」と、「アクションプラン(5)さらなる連帯の推進と活動基盤の整備」が必要であるという位置付けとさせていただいています。



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