滋賀の生協 No.155(2011.4.12) |
2010年度県連役員研修会 日本の生協2020年ビジョン 2011年2月11日 ライズヴィル都賀山 日本生活協同組合連合会政策企画部 高橋 怜一さん |
「二〇の論点」と全国論議・東京 |
「二〇の論点」の全国論議のキックオフは、大阪、名古屋、東京の三か所で、外部有識者に二人ずつ来ていただいてご意見をいただきながら学習会をするということから始めました。 東京会場では、株式会社成城石井の前代表取締役社長の大久保恒夫氏に来ていただきました。最初に「店舗事業で経常利益が出てないのは組合員さんに支持されてないからではないのか」ということをズバッと言われました。成城石井では、全体の二割ぐらいの固定客で供給の八割を支えているそうです。「会員組織である生協さんも、そういうことがもっとできるのではないですか」という提起もいただきました。三つ目は、「お店というのは現場の人たちの力をどう発揮できるかということが大切だ」とおっしゃっていました。印象的だったのは挨拶をしっかりやることが大切だという話です。九州でホームセンターを立て直された時、「挨拶をしっかりすることで苦情が半分に減った」ということもあって、「お店の基礎的なマネジメントを一つでも二つでも実行することが大事ではないか」という提起には、共感する参加者も非常に多かったように思います。 東京会場の二人目は、立教大学の岩間暁子教授に来ていただきました。岩間先生は、「家族構成の多様化」や「女性の階層分化」を研究されています。「標準家族が多かった時代には生協は活躍したが、家族が多様化する中でうまく広げられていないのではないか」、「今後、増えてくる外国人をもっと取り込んでいくような事ができないか」ということをおっしゃっていました。生協は「夫婦と子ども」という家族を想定して頑張ってきたのですけれども、「単身世帯が増えている中でどうすればいいのか」ということも考えなければいけないと思いました。 |
「二〇の論点」と全国論議・名古屋 |
名古屋会場の外部有識者は、金城学院大学の朝倉美江教授でした。福祉がご専門で、「制度(共同で創った社会サービス)には限界がある。制度外のところをしっかり担保できる協同組合の福祉に期待したい」とおっしゃっていただきました。「『生協だから
』でつながるのは価値があることだが、生協組合員でない人の排除にならないようにしなければならない」との懸念も示されています。 名古屋のお二人目は、名古屋市立大学の向井清史教授でした。「これまでの生協の発展・成長は日本社会で九〇年代後半まで残存した『家族主義』によるところが大きい」ということと、当時は食品に公正さ、信用性が求められていましたが、「公正な取引が求められる領域は時代とともに変わる。エンゲル係数の低下につれて、食品分野から相対的に対人サービス分野に比重が移っているのではないか」ということで、「今後生協には経済的役割、社会的役割、政治的役割を期待する」ということをおっしゃっていただきました。経済的役割は、「生協の商品購入の中で、それが社会貢献とか、社会参加につながるような背景とかストーリーがあってほしい」ということ。「買うことでもっと社会参加につながるような商品を作っていってもらえないか」という期待ですね。社会的役割は、地域社会の中でNPOを生み出すことや、何か困ったら「駆け込み寺」的に相談に乗れるような生協であってほしいという期待です。政治的な役割としては、「健全な市民組織としてずっとあり続けて欲しい」ということを言われました。 |
「二〇の論点」と全国論議・大阪 |
大阪会場の外部有識者には、桃山学院大学の津田直則教授でした。津田教授は欧州の生協の動向に関心を持たれていて、「連合体をしっかり日本でも作っていくべきだ」というご意見と、協同組合間提携に非常に期待をされていて、環境・農業・エネルギーなど、スマートグリッドも言われている新しい分野に、「協同組合間提携で何か新規開拓ができないか」という期待を語られました。 最後は、IT化の流れもあるので学習的な意味合いを含めて、フリージャーナリストの西田宗千佳さんに、iPadなどのクラウドコンピューティングが、パソコンのわずらわしさから中高年の方を解放した意義は大きいということを学習しました。 |
全国論議・地域運営委員会など |
全国論議の二つ目ということで、日本生協連地連運営委員会のところでも議論をしました。 「協同組合の基本的価値に立ち戻ってビジョンを作りたい」という意見が多かったのが特徴かと思います。 |
全国論議・組合員ワークショップ |
全国の六ケ所で、組合員理事を中心に集まっていただき、ワークショップをして「一〇年後の生協のありたい姿」等について語っていただきました。 参加者のくらしの関心ごとに関する集計では、多い順に「格差」「高齢化」「食・健康」「つながり」となりました。「生協に期待する役割」は、「地域の中でのつながりづくり」や「ネットワークづくり」に集中しました。 「日本の生協の二〇一〇年ビジョン」策定検討時(二〇〇四年)にも、東西二か所だったのですけれども、同じようなワークショップをしました。当時は「多様性」「柔軟性」とプラスに評価されていた個性が、今では時代を反映して「格差」「希薄化」「孤立」などとマイナス評価に移ってきていいるのが特徴でした。 その他、お子さんの結婚とか就職の心配がどの会場でも出されたということと、ご自身やご両親の老後への不安が非常に顕著に出てきたというのが特徴になっています。 |
全国論議・職員ワークショップ |
次世代を担う全国の中堅職員の方に集まっていただいて、十年後の生協事業の革新やアイデアを出していただきました。 「宅配事業のインフラを強みとして、IT化による利便性の向上ができないか」、「福祉サービスと併せて付加価値を上げていけないか」という提案が多く出されました。また、農業に積極的に関わっていくという提案も非常に多く出されています。一方で、苦戦している店舗事業に関する提案はほとんど出されませんでした。 |
全国論議・ビジョンサイト |
ビジョンのサイトでも「みんなの声」を募集しました。あまり多くの声は寄せられなかったのですけれども、高齢期の生活への懸念とか、生協の期待では「宅配を何とか生かしていってほしい」ということころが特徴だったかと思います。 |
第一次案の論議状況 |
こうした「二〇の論点」を使った全国論議を踏まえて、「第一次案」をつくり、二〇一〇年一一月から二〇一一年一月に全国論議を行いました。 二五以上の会員生協でワークショップや学習会を開催していただき、日本生協連の機関会議でも議論をし、ビジョンサイトで意見を募集しながらやってきました。 第一次案への主な意見ということで、いくつかご紹介させていただきます。「地域の過半数の参加を目指そう」という提案に対して、「そのことが地域にどういう役割、責任があるのか」「それで何を実現したいのか」というご意見が多かったと思います。 「ビジョンを実現するための組合員の主体性が不足しているのではないか」というご意見も多く出されました。 アクションプラン(1)では「事業課題の展開が、羅列的で弱い」「IT技術の活用や店舗事業の記述の弱い」というご意見が出されました。 アクションプラン(2)では「地域社会への貢献」というタイトルに対して「地域社会へは貢献なのか」「もっと役割を果たしていく表現をするべきではないか」というご意見が出されました。 アクションプラン(3)では、「組合員組織の担い手不足等への提起が弱い」というご意見です。 アクションプラン(4)のところでは、「中央会機能、県連の記述が少ない」というご指摘がありました。 「若い世代の声を聞いてほしい」というご意見は、日本生協連理事会からも含めて出されました。 |