活動のご案内

消費政策の取組

コロナ禍を乗り越えるかしこい消費とつながりづくり〜持続的な未来を築くために〜

滋賀の生協 No.188(2021.8.4)

特集

消費者月間セミナー
コロナ禍を乗り越えるかしこい消費とつながりづくり
〜持続的な未来を築くために〜

と き 5月29日(土)14時〜16時
ところ コラボしが21 3階 大会議室
共 催 滋賀県 特定非営利活動法人消費者ネット・しが

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講師 阿南 久氏
(消費者市民社会をつくる会代表・元消費者庁長官)

プロフィール
東京教育大学体育学部卒。生活協同組合コープとうきょう理事、全国消費者団体連絡会事務局長歴任。2012年8月から2年間、消費者庁長官を務める。現在(一社)消費者市民社会を作る会代表理事、NPO法人消費者スマイル基金理事長。

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 消費は、弱者に何ができるのか。貧困や命の危機に何ができるのか。疲弊した地域、破壊される地球環境に何ができるのか。元消費者庁長官阿南久さんは「誰一人取り残さない消費活動には、世界の未来を変える力がある」と訴えます。

 

 みなさま、こんにちは。

 このセミナーではコロナに関連したお話をさせていただきたいと思います。

 今、失業者、自殺者、家庭における虐待も増え、貧困家庭の命が危機的状況に脅かされている。どこかで子どもたちが泣いている。本当につらくてたまらない。そんな気持ちを込めて、みなさんの心と共感できるお話になれば幸せだなあと思っております。

 ともに学び賢い消費者になろう

 2011年3月11日の東日本大震災の時、私は全国消団連で事務局長をしておりました。四谷にある事務所が揺れて大変な状況でした。コンビニもスーパーも食べ物がなくなっている状態の中、「情報を全国で共有しよう」と、翌日から事務局で手分けして、コンビニやスーパーの棚を調べに行きました。

 あるお店の前に、ポスターが貼られていました。

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 「お客様へのお願い」「この度の大震災で東北地方の被災者の皆さまが大変な思いをされております。/私たちが冷静な行動をとることで、被災地へ物資が届きやすくなります。/どうぞ買いだめ、買い置きの防止にご協力いただきますようにお願いいたします。/現在、ガソリン不足などの理由でトラック物流が混乱しており、商品の入荷が遅れておりますが、落ち着けば動き出しますので、どうぞ冷静な行動をお願いいたします。」

 このポスターを写真に撮って全国に配信しました。そして、被災地の消団連からも、ほとんど空っぽ状態の棚の写真が送られてきました。

 相田みつおさんの詩の一節「奪いあえば 足らぬ/分けあえば あまる」も発信しました。

 昨年のコロナが始まった頃も同じ。あっという間に衛生用品やマスクがなくなり、食料も不足の状態が続きました。これって、消費者の行動としてはどうなんでしょうか?

 不安を煽るだけの情報提供

 今年一月、コロナ関連の消費者トラブルに関して、消費者庁が「新しい生活様式の定着や、感染リスクが高まる五つの場面の回避が必要だ」という注意喚起を行いました。

 「①行政機関等の なりすまし 、「給付金詐欺」や「フィッシング詐欺」が発生しています。②身に覚えのないマスク等の商品が送り付けられています。③「お試しと思ったら定期購入だった」等のインターネット通販トラブルが増えています。④SNSを通じた悪質商法トラブルの相談もあります。⑤コロナへの予防効果を標榜する不当表示も増えています。」

 全国のどこの消費者センターも、最初にこの情報が載っているんです。

 これだと消費者はどう思うでしょう?「こんな悪質商法があるんだ。気を付けよう」と思う。でも「気を付けよう」と思って、どうするんですか?確かにこういう情報は必要です。でも、消費者が安心できる情報なんてどこにもない。不安を煽るだけの情報提供です。

 消費者の不安を的確につかむ

 安心できるためにどうしたらいいか?消費者の不安を的確につかむことです。

 ワクチン接種にしても、「自治体がこうします」という情報だけです。インターネットに不慣れな高齢者にも「ウェブで申し込んでください」という情報提供しかないんです。

 あまりにも一方的すぎる。「コロナで困っていたら、ここに相談してね」、「ウェブで申し込みをするときはここに相談してね」って言ってください。「どんなことでもいいから、相談してね」ということで、私たちは消費者センターをつくったんです。そこで「どうしたらいいか」その方法をもっと丁寧に。もっと住民の状況に、困っていることに寄り添わないといけないと思うんです。

 現実ー反貧困ネットワーク

 今年の4月4日に、「反貧困ネットワーク」が全国集会を行いました。そのチラシに「生きてくれ」というメッセージが込められていました。

 「...2020年、コロナが到来しました。3月から4月、非正規雇用が真っ先に切り捨てられ、非正規労働者数は、131万人減少。相次ぐ解雇・雇い止め、休業手当不払い。休業を余儀なくされ、収入を絶たれた自営業者・フリーランス。住民でありながらセーフティネットのない外国人。...、コロナは第二波、第三波、第四波へと続き、失業が長期化する中で、求職活動に疲れ自己肯定感を失い、孤立を深める人が増えています。自殺者数は昨年7月から増加に転じ、10月には昨年同月比で39.9%増、うち女性が82.6%増となり、年が明けた2月、女性の非正規労働者数は前年同月比で89万人減少し、減少幅は過去最大...」

 今、この方たちはどうやって暮らしているでしょう?食べ物を買うお金もないかもしれない。「反貧困ネットワーク」は「相談会」を頻繁に開催していますが、そこで提供される食料を楽しみに来る方たちも多いです。それでも救いきれない。こうした現実がある。

 共有ー消費者市民社会をつくる会

 昨年3月から、「消費者市民社会をつくる会」では、「情報を共有しよう」ということで、ニュース「"元気"の分かちあい(Share the Citizen Spirits)」を発行しています。

 3月30日発行の第二号では、「ユニセフ(国際児童基金)」と「人道行動における子どもの保護のためのアライアンス」が、3月20日に共同で発表した「虐待など子どもに及び得るリスクと行動指針を示したガイダンス」を特集しました。

 「①性的搾取と虐待の防止や、懸念される事例を安全に報告する方法など、COVID-19 に関連した子どもの保護リスクについて、保健、教育、子どもへのサービスに携わるスタッフを訓練する。②ジェンダーに基づく暴力(gender-based violence: GBV)の開示を管理する方法(GBVポケットガイド)について担当者を訓練し、被害者をサポートするために保健ケアサービスと協力する。③子どもが利用できる、相談やその他サポートに関する情報発信を増やす。④COVID-19が子どもにどのように影響するかを評価する際に、子どもたち(特に10代の子ども)自身の声を集め、その内容を施策やアドボカシー活動に反映させる。⑤暫定的なケアセンター、子どものいる世帯や里親世帯を含む家族に焦点を当ててサポートを行うことで、子どもたちを精神的に支え、適切なセルフケアに導く。⑥家計の収入に影響が及んでいる家族に向けて、財政的および物質的な支援を行う。⑦子どもと家族の分離を防ぐための対策を実施し、親または保護者の入院・死亡時に、適切なケアがなく取り残された子どもへの支援を確実におこなう。⑧すべての子どもの保護が、感染症対策において最大限考慮されるようにする。」

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 第三号では、冷凍商品が不足しているという噂に対して、日本冷凍食品協会から「倉庫にはまだしっかりとありますよ。大丈夫」という情報提供をしてもらいました。

 それからSWASH(主にセックスワーカーが安全・健康に働けることを目指す活動グループ)の「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金に関する要望」を掲載。そこには「風俗従業者を支援金支給対象者から除外しないでください。今子育てをしながら風俗で働いている人々が求める支援を国が提供することは不可欠です」としています。同時に「厚労省として支援金の支給、不支給要件の見直しと撤回について、周知徹底してください」という要望も出され、これは実現しました。

 第四号では、子どもの虐待が増える中、日本小児科学会・日本子ども虐待防止学会・日本子ども医学会連盟の連名メッセージ「がんばっているみんなへ大切なお願い」を紹介。

 「...ずっとがまんしているといやになって疲れちゃうよね。/もしかしたら、ずっとがまんしてきて、みんなも、みんなの家族も、ときどきイライラしているかもしれないね。でも、それはけっしてみんなや家族が悪いわけではないよ。新型コロナウィルスのせいだよね。/でも、もし、みんなの家族のイライラが強すぎて、みんなが困ってしまったら、ひとりで悩まないで、誰かに相談しようね。/もし、大人の人からたたかれたり、ご飯をもらえなかったりして、みんなが"こわい"とか"苦しい"とか感じたら"一八九"に電話して。そうすれば児童相談所というところにつながるよ。そこはね、子どもを守ったり、助けてくれるところだよ。そこの人にお話ししてね。」

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 同時に「お子様と暮らしている皆様へ」というメッセージ「...限られた生活空間でストレスが溜まり、ニュース等から伝わるさまざまな情報に不安や恐怖、心配を感じている子どもたちもいるでしょう。時には、言葉が乱暴になったり、兄弟で喧嘩をしたり、モノに当たったりなど、普段と違った姿を見せるかもしれません。そうした子どもの姿に自身もイライラが募り、感情的に子どもに当たることが増えてしまい、親子で一緒にいることが辛くなってしまうかもしれません。そうしたことがないよう、あなた自身も、そして、あなたの周りの大人も落ち着いて、安定した気持ちでいられたらよいですね。...」も掲載しました。

 第五号では「自分の苛立ちを知り、リラックスする方法」を掲載。

 第六、七、八号では「マスクの 使い捨て を見直してみませんか」の特集を組みました。不織布のマスクはプラスチック製ですので「絶対に捨てないで」と、リサイクルするお願いを出し続けました。会員さんから「こんなマスクをつくった」という「つくり方のレシピ」の情報が寄せられて、結構ボリュームのある内容になりました。

 第七号は、憲法記念日の発行で「今こそ憲法を活かす時」と、「二五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。/2国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」を紹介。

 できること「シェアする」

 私たちにできることで、何が一番重要か。私は「シェアすること」だと思います。情報をシェアすれば、私たちは自分でできることを考えます。「何かしたい」と思っていても、情報がないからできないわけです。今は政府やマスメディアも頼りにならない。ですから「今、人々の暮らしがどうなっているのか」「誰が苦しんでいるのか」「誰が困っているのか」「そこにどのようなことをやっている人々がいるのか」ということをシェアする。

 元気と、優しさと、愛をシェアすべきだと、痛切に思っています。

 できること「映画上映会」

 一昨年「消費者市民社会をつくる会」は「幸せの経済学」の上映会を開催しました。

 開発という名の消費文化に翻弄されるラダック地方(インド)の人々の姿を追う等、「本当の豊かさ、幸せ」を問うドキュメンタリー映画です。

民族紛争や異常気象、多様性の損失、失業、アイデンティティの崩壊等、グローバリゼーションの拡大が引き起こす問題や、持続可能社会の糸口となる「ローカリゼーション」について語る。そして、行き過ぎたグローバリゼーションから離れ、人や自然とのつながりを取り戻し絆を強める、世界各地のコミュニティやローカルムーブメントを紹介しています。

 「金を持っているかどうかは関係ない」自分たちで野菜をつくって地域でシェアしているアメリカの青年たちの言葉です。まさに「ローカリゼーション」。「遠いところからCO2をまき散らして運んできて食べるんですか?」という問題提起です。

 できること「海洋プラごみ」

 プラスチックが日本の海岸に打ち上げられている状況を調査した環境省の報告や、全国清涼飲料協会の環境課題への取り組み、NPO「JEAN」のゴミ拾いのプレゼンテーションなど「海洋プラスチックごみ問題」の勉強会をして、みんなで考えました。

 海流の関係で太平洋の真ん中あたりに集まるプラスチックを、何とかしようというのが国際的な課題になっているということです。自分が何気なく捨てるかもしれないレジ袋やストローが、川を伝って海に流れ、溶けずに海の生態系を破壊しているという状況です。

【SDGs目標14】海の豊かさを守る 陸上からの排出が主原因である海洋汚染は危険な水準に達し、海洋1平方キロメートル当たり平均で13,000個のプラスチックごみが見つかっています。

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プラスチックごみで埋まっている、インド最大の都市ムンバイの浜辺

 できること「食品ロス削減」

 井出留美さんの「食品ロス削減に向けてできること」という勉強会もしました。

 「日本国内の食品ロスの年間発生量(612万トン)は、世界全体の食糧援助量(約390万トン)の約1.6倍に匹敵。(WFP 2019年資料)

 世界の栄養不足人口は8億2,160万人。(FAO 2018年)」です。

 【SDGs目標12】つくる責任・使う責任 小売店と消費者による一人当たりの食品廃棄量を全世界で半減させる...

 できること「SDGs勉強会」

 「サラヤ」をご存じですか?ヤシの実洗剤のメーカーです。戦後、赤痢とか蔓延して公衆衛生がひどい状況だった時に、洗剤の製造販売を始めた会社です。

 この会社は、まず、洗剤を通して世界の公衆衛生の向上に貢献しています。2010年に「100万人の手洗いプロジェクト」をスタートしました。 石けんを使った正しい手洗いを広めることで、子どもたちの命を奪う原因となる病気を予防する取り組みです。支援先はウガンダ共和国(東アフリカ)。あの地域は乳児の死亡率が極端に高い。トイレに行っても手を洗う場所も習慣もない。それで、感染症の菌で子どもが死んでいくんです。対象となる衛生商品の売り上げの1%を寄付し、ユニセフの手洗い促進活動を支援しています。

 二つ目は、環境保全、象やオランウータンの保護。ヤシの実洗剤の原料はパーム油(油ヤシの実から採れる油)です。油ヤシはボルネオを中心に、プランテーション(単一作物の大量栽培)で生産します。すると、オランウータンや象が影響を受ける。彼らは、一日に一定距離を移動する生態らしいですが、その移動をプランテーションが阻害する。それを環境NGOなどから指摘され、彼らが移動できるようにプランテーションの設置の仕方を変更。それと同時にオランウータンや象を保護する基金を立ち上げました。

188_toku-09.png 「いのちをつなごう」象とオランウータンの写真入りのパッケージ。「ヤシの実洗剤の売り上げの一%をこの基金に充てている」
 国連と持続可能な開発目標

 持続可能な開発目標(SDGs)は、17の目標と169のターゲットが設定されています。(図A)

 2001年の国連ミレニアムサミットで、ミレニアム開発目標(MIDGs)が採択され、極度の貧困と飢餓への対策、致命的な病気予防、すべての子どもへの初等教育普及を始めとする開発優先課題に関し、測定可能な⑧つの目標が設定されました。

 それを2012年、リオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)で、「ミレニアム開発目標(MIDGs)の目処がついたので、新たな目標に発展させましょう」と議論し、2015年に「持続可能な開発目標(SDGs)」として採択されました。

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図A

 SDGs国連報告2020

 去年の10月、SDGsの国連報告が公表されました。国連は毎年、SDGsの進行具合を発表しますが、今回はコロナ禍が始まってからの報告になりました。

 新型コロナウイルス感染症(COVIT-19)以前にも、子どもは多様な形態の暴力の被害者でした。ほぼ10人に8人の子どもが、家庭で精神的又は身体的暴力の対象になっています。また、発見された人身取引被害のほぼ3分の1は子どもでした。

 それがコロナ禍でどうなったか?数100万人の子どもと若者の福祉にコロナ危機が影響しています。コロナ禍による休校で給食を食べられなくなった子どもは、3億7千900万人。世界の児童労働の削減で見られた前進は、20年ぶりに逆戻りしそうです。

 また、80代の高齢者がコロナウイルスで命を落とす可能性は平均の約5倍になりました。

 既存の差別の形態がコロナ危機で、さらに固定化します。

 2030アジェンダ・前文

 2030アジェンダの前文(SDGsの達成を目指す決意)にはこのようにあります。

 「...人間、地球及び繁栄のための行動計画...。より大きな自由における普遍的な平和の強化を追求するもの...。極度な貧困を含む、あらゆる形態と側面の貧困を撲滅することが最大の地球規模の課題...、持続可能な開発のための不可欠な必要条件...。

 すべての国及びすべてのステークホルダーは、協同的なパートナーシップの下、この計画を実行する。...人類を貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒し安全にする...。...この共同の旅路に乗り出すにあたり、誰1人取り残さないことを誓う。」

 「共同の旅路は、誰1人取り残さずやっていく」と宣誓しています。

 そして、17の目標と169のターゲットについても述べられています。

 「...これらの目標とターゲットは、ミレニアム開発目標(MIDGs)を基にして、ミレニアム開発目標が達成できなかったものを全うすることを目標とする...。...、すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児の能力強化を達成することを目指す。...統合され不可分のものであり、持続可能な開発の3側面、すなわち経済、社会及び環境の3側面を調和させるもの...。(2015年9月25日第70回国連総会で採択)」「2030アジェンダ」の魂の部分、通奏低音がこの前文に書かれているわけです。

 国連は第2次世界大戦の経験を踏まえて、1945年に設置されました。そして1948年に「世界人権宣言」が、国連憲章を補完するという位置づけで採択されています。第1条には「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。」と書かれています。

 ですから、国連憲章、人権宣言、さらに女子差別撤廃条約等、その間国連がやってきた仕事を引き継いだものとして「2030アジェンダ」がある。魂の部分は1緒なんです。

 2020年現状ー貧困をなくす

 【SDGs目標1】貧困をなくす あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

 新型コロナウイルス感染症(COVIT-19)以前は、2030年までに貧困に終止符を打つめどは立っていませんでした。

 それがコロナの影響で、世界の貧困はこの数10年で初めて増加。2020年には、新たに7千100万人が極度の貧困へと追いやられると言っています。若年労働者が極度の貧困に陥る確率は、成人労働者の2倍になっています。

 ですから貧困をなくす目標は、おそらく実現はできないという状況だと思います。

 日本でも深刻です。日本財団の「子どもの貧困対策」の資料によると、2015年の子どもの貧困率は13・9%、280万人です。もちろんOECD加盟国の中で最低水準です。

 親の収入が少なく十分な教育を受けられない、進学や就職のチャンスにも恵まれず、十分な収入を得られず子ども世代も貧困になる、という貧困の連鎖が生まれています。

 2020年現状ー飢餓をゼロに

 【SDGs目標2】飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する。

 コロナ禍は食料システムに対する新たな脅威になっています。また、子どもの発育不良と消耗性疾患(発熱が原因で体力を消耗する病気の総称。肝炎・結核・赤痢・コレラ・かぜ等)が悪化する可能性が大です。小規模食糧生産者は本当に大きな危機を迎えています。

 2020年現状ージェンダー平等

 【SDGs目標5】ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメント(能力開化・権限付与)を図る。

 先月、ジェンダーギャップ指数(世界経済フォーラムが、経済参画、教育の到達度、健康、政治参画の4つの分野で、男女不平等の度合いを指数化)が発表され、日本は120位。何が男女平等なのでしょうか。

 コロナウイルスの影響で、女性と女児に対する暴力のリスクは増大しています。身体的暴力、性的暴力、精神的暴力。家庭内暴力の件数が30%増加している国もあります。

 また、コロナウイルス対策で、女性が最前線に立っています。医療従事者とソーシャルワーカーに女性が占める割合は70%です。これ「女性活躍」って言うんですかね?

 コロナ禍で、女性が家庭で強いられる負担は増大しています。企業は「リモートワーク」とか言って、男が家で仕事をする。そして、家事もしなければ育児もしない。そんな人たちが多いわけです。家事も育児も介護も全部平等に担当すべきです。そうでないと女性が参ってしまう。また、離婚したり、暴力を受けたりするんです。

 孤立防止ー見守りネットワーク

 2015年「消費者安全法」の改正により、高齢者、障がい者、認知症等、判断力が不十分になった人等の消費者被害を防ぐため、地域連携で「消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)」が設けられました。今、全国336自治体でつくられている状況です。

 ちょうど私が長官の時に検討して導入したものですけど、高齢者の3つの不安(お金・健康・孤独)を解決して、高齢者を守っていくためにつくった制度です。

 滋賀県では、高島市、大津市、甲賀市でできて、その他にも「おせっかいネット」というのが野洲市に、認知症の高齢者の見守りが草津市にもできていますね。

 SDGsな消費者政策の推進

 消費者庁はSDGs達成に寄与するための消費者政策をまとめています。

 主な施策として、①消費者の安全の確保、②表示の充実、③適正な取引の実現、④エシカル消費、⑤被害救済と保護の枠組みの整備、⑥国や地方の消費者行政の体制整備とあげられています。しかし、特に⑦国や地方の消費者行政の体制整備については、消費者庁の趣旨からいって、どんどん後退しているなという印象です。

 自治体の消費者政策も、交付金が減らされ後退している。私も横浜市の消費者協会の理事長をやっていて、横浜市消費生活相談センターの運営を任されていますが、年々予算が削られています。横浜市は市の税金から結構出してくれていますけど、それでもやっぱり限界があります。だから、消費者支援、情報発信あたりを削らざるを得なくなる。

 適格消費者団体も、消費者裁判特例法に基づいて裁判をしたくてもお金がない。総理大臣が指定する団体なのに、援助もしないで「仕事してください」って、それはないでしょう。

 私は「認定NPO法人 消費者スマイル基金(消費者被害防止救済基金)」の理事長もしていますが、ここも寄付金が集まらなくて、みなさんたちへの支援も、本当にスズメの涙ほどの財政支援しかできない。もうちょっと国にしっかりしてもらいたいですよね。

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 エシカル消費で暮らし見直し

 消費者施策の4つ目「エシカル消費」。どんなことができるでしょうか。

 世界の未来を変えるのは、あなたの日々の消費です。エシカル消費ってつまり、何を買うか考えるときのひとつの尺度です。

 環境を考えて買い物をしようね。社会を考えて買い物をしようよ。フェアトレードの商品をできるだけ選ぶようにしようよ。障がいのある人の支援につながる商品を選ぼうよ。認証ラベルのある商品を使おうよ。MSC認証、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物を使おうよ。生物多様性について配慮しようよ。地元の商品を使うようにしようよ。

 特に「地産地消」は消費者の応援なくしてはできない。今農業もコロナで大変な状況です。ですから、できるだけその土地を応援する取り組みをしていきたいものだと思います。

 誰でも安心して暮らせる滋賀県

 内閣府の「SDGs未来都市」に滋賀県の基本構想が選定されています。各SDGsの目標について「滋賀県の県民としてこんなことをやろうね」と言うことが書かれています。

 みんなやりやすいものばかりで、滋賀県独特な産業や農業を応援することができます。

 食品ロスの削減目標、地元農家を応援して自然環境保全に貢献、湖国の未来を担う子どもたちを育成する「ラムサールびわっこ大使」制度、ごみゼロ大作戦や琵琶湖森林づくり等...滋賀県のホームページを見ますと、環境・自然のジャンルがすごく充実しています。

 そして滋賀県は「SDGs日本モデル宣言」を行っています。「SDGs全国フォーラム2019」で、全国93自治体の賛同を得て発表。2021年4月現在、410自治体が追加賛同しています。

 「私たち自治体は人口減少・超高齢化など社会課題の解決と持続可能な地域づくりに向けて、企業・団体、学校・研究機関、住民などとの官民連携を進め、"日本のSDGsモデル"を世界に発信します。」

 その中で、「①地域に活力と豊かさを創出します。②民間ビジネスの力を積極的に活用し、課題解決に取り組みます。③誰もが笑顔あふれる社会に向けて、次世代との対話やジェンダー平等の実現などによって、住民が主役となるSDGsの推進を目指します。」と言っています。「住民が主役」です。SDGsはお役所だけが言っても全然広がらないし、住民、企業の協力・連携がなければできていかないと思います。

 また、森林づくり活動を行う企業や団体、学校などが整備する森林の2酸化炭素の吸収量を数値化し、認証する取り組みを行っています。「森林整備が促進されることで、琵琶湖を取り囲む森林の多面的機能を高める。そして地球温暖化防止にも貢献できる。」と説明をして認証をすることで、取り組みが広がっています。

 「木育(森林教育)」で、子どもたちが環境を考えたり楽しい思いをして「自分たちの森を大事にしていこう」と思う。いいですよね。

 消費者憲章ー消費者の5つの責任

 国際消費者機構(CONSUMERS INTERNATIONAL)は、ケネディが「消費者の権利」を提唱した1962年ころから、消費者の権利の確立のため活動している団体です。世界中の消費者団体と消費者政策にかかわる政府組織が参加し、全国消団連も会員です。

 その国際消費者機構が定めた消費者憲章が謳う「消費者の5つの責任」です。

 ①批判的意識(CRITICAL AWARENESS) 商品やサービスの用途、価格、質に対し敏感で問題意識を持つ消費者になる責任。②自己主張と行動(INVOLVEMENT OR ACTION) 自己主張し、公正な取引を得られるように行動する責任。③社会的関心(SOCIAL RESPONSIBILITY) 自らの消費行動が他者に与える影響、とりわけ弱者に及ぼす影響を自覚する責任。④環境への自覚(ECOLOGICAL RESPONSIBILITY) 自らの消費行動が環境に及ぼす影響を理解する責任。

 とりわけ、「③弱者に及ぼす影響を自覚しよう。」全国の消費者団体も、この責任を果たすという意味で活動していると思います。なかなかコロナで大変な状況ですけど、それでも自分たちでできることを、身近なところからやっています。ちょっと近所のひとり暮らしの高齢者のお宅の様子を見てみるとか、子ども食堂へ行って手伝うようなこともやっている。そういうことをやっていくのが消費者団体ということです。

 最後に5番目の責任の「連帯」。これが一番大事ですよね。

 ⑤連帯(SOLIDARITY) 消費者の利益を擁護し促進するため、消費者として団結し、連帯する責任。

 消費者のための取り組みと言っても、ひとりではなかなか難しい。だから、みんなで協力する。そのネットワークが大事です。適格消費者団体も、ネットワークがありますよね。それを大事にして、みんなで手をつないで歩んで行く。それが責任ということです。そうすれば、周りの人たち、近所の人たちの信頼も厚くなってくるんだと思います。

 「私、適格消費者団体にいて、今こんな情報があるんだけど気を付けようね」って言う。そして「相談してみてね」と言う。1言声をかけるだけでも全然違うと思います。ヘルパーの方が行ったら亡くなっていたとか、ひとり暮らしの高齢者の方は今大変な状況なので、このネットワークの力で1人でも2人でも救済することができていけばなあと思います。

 ハートフル・アクション・ナウ

 最後にメッセージです。

 「今すぐ行動しよう。Heartful action now」。今やるべきことはこれです。

 滋賀県内には「遊べる、学べる、子ども食堂」が138か所あるそうです。いいですね。そして開催日時も滋賀県ホームページで情報提供されています。どれだけの子どもたちが救われているか。企業もネットワークに参加されている。セカンドハーベストジャパンやフードバンクなどと連携すると、そこがコーディネートしてくれるので、子ども食堂にも商品が渡るようになっているという状況です。

 無駄な買い物をしている消費者が多い中、「あなたが今捨てているものを、求めている人がいるんだよ」ということがわかる。子ども食堂の取り組みを共有して、情報発信をする。子どもたちに声掛けをする。これが大事。行きたくても行けない子どももいるはずです。

 今、「家から出るな」「来るな」「人としゃべるな」の世界です。何か悲しいですよね。

 私の友達の大学生の息子が在宅でリモート授業なんだそうです。その大学生が団地の自治会で開かれた「ワクチンの申し込みの支援活動」に参加をしているんです。

 そういう優しい活動をやっていけたらいいなと思って、みなさんももちろん既にやってらっしゃることも多いと思いますけど、ぜひ、もう1歩、もう1つ、優しい行動をできるようにお願いを申し上げて、私の今日のお話を終わりにさせていただきます。

 ご清聴いただきましてありがとうございました。