活動のご案内

食の安全・安心

食の安全・安心シンポジウム テーマ「信頼」(1)

滋賀の生協 No.153(2010.12.10)
食の安全・安心シンポジウム テーマ「信頼」
2010年10月21日(木) コラボしが21 3階大会議室
主催: 滋賀県
共催: 滋賀県生活協同組合連合会/滋賀県農業協同組合中央会/社団法人滋賀県食品衛生協会



コーディネーター 柴田 克己さん(滋賀県立大学人間文化学部教授)
アドバイザー 大谷 敏郎さん(内閣府食品安全委員会事務局次長)
パネリスト 西山 実さん(滋賀県生活協同組合連合会専務理事)
藤井 巧さん(滋賀県農業協同組合中央会農業対策部長)
遠藤 仁兵衛さん(社団法人滋賀県食品衛生協会副会長)
山中 幾治さん(滋賀県健康福祉部技監)

 食の安全・安心の確保を図り、安心して暮らせる社会の実現を目指して、二〇〇九年一二月、滋賀県は「滋賀県食の安全・安心推進条例」を制定しました。食の安全・安心確保のためには、行政と生産者・事業者、そして消費者が、それぞれの立場で役割を果たし、相互に信頼関係を構築する必要があります。「食の安全・安心シンポジウム」では、これらの関係者が一堂に会し、「信頼」をテーマに、それぞれの取り組みや立場について語り合い、相互理解を深めました。

   食の安全・安心と信頼醸成措置

柴田 コーディネーターとして本日のパネルディスカッションを進行させていただきます滋賀県立大学の柴田と申します。

 「食の安全・安心の信頼」について少し私の考え方の話をさせていただきたいと思います。


柴田 克己さん
滋賀県立大学
人間文化学部教授
 「信頼」という言葉を辞書で引きますと、「信じて頼ること」。例えば「同僚を信頼する」「信頼に応える」「全幅の信頼を置く」。こういう例文が載っています。電子辞書でしたので「ジャンプ機能」を使いましたら、「信頼醸成措置」という言葉が出てきました。

 「信頼醸成措置」という意味は、「国家間の緊張の緩和、又は不必要な緊張の回避のためにとられる措置。具体的な例として、軍事演習の事前通告など」と書かれていました。

 この「信頼醸成措置」という言葉を、「食の安全・安心」にあてはめて考えてみますと、新しい食料資源の開発、新しい食品添加物の開発、新しい農薬の開発、新しい食品の開発など、予めどのような目的、方向性で進んでいるかを説明しておくということになるのではないかと思います。

 例えば世界中の人々が健康で文化的な食生活を送るため、必要な食料の安定供給のために生産性の優れた新しい農産物、生産性を高める農業技術、農業科学、食品の鮮度を保つ食品添加物、食品の嗜好性を高める食品添加物などを開発する重要性を事前に説明しておくことは、消費者の理解を得られやすくなると思いますし、消費者からの支援も得られることと思います。

 私どもはこの世に生れて、朝・昼・晩と一日に三回食事をしています。私は六〇歳になますが、計算してみると六五万回食事をしたことになります。間食もありますので、大雑把に言うと十万回も食べているわけですが、この間一度も不安に思ったことはありません。ほとんどの方は私と同じ感覚であると思います。どのお店で食料を買っても、どの食堂で食べても全幅の信頼を置いておられると思います。ですので、消費者はこの全幅の信頼が裏切られれば烈火のごとく怒ります。この「裏切られた」という怒りを速やかに沈める処理方法・対策が信頼を回復し、信頼の継続の維持につながるものと考えます。

 「食の信頼醸成措置」。良い言葉だと思います。

 最近の具体的な事件を挙げますと、産地や期限表示の偽装、中国産冷凍餃子への農薬混入事件などがあります。その結果、輸入食品や食品関連企業に対する信頼がゆらぎました。毎日の食事に不安を感じるのは極めて異常な状況です。消費者の信頼を回復し、不安を軽減するために重要なことは、食品関連事業者が法令順守の意識を高めて、規制違反を起こさないことです。その上で、生産者、製造加工業者、流通業者、小売業者、消費者全てが、食の安全を守るという目的を共有して、お互いの信頼関係のもとにそれぞれの立場で努力することが必要であると考えております。

 では、食の信頼を回復し、食の信頼の継続を維持するためにはどうしたら良いのか。どのようなことが行われているのか。ディスカッションを始めたいと思います。

 それでは四名のパネリストのみなさまから、自己紹介を兼ねまして、本日のパネルディスカッションのテーマであります「信頼」について、組織の取り組みや、常日頃どのようなことをお考えになっているかについて、発言をお願いしたく思います。

   情報の共有化によって安心感のある行政を

西山 滋賀県生活協同組合連合会専務理事の西山です。


西山 実さん
滋賀県生活協同組合連合会
専務理事
 私ども、生活協同組合は消費者団体の一面もありますが、安全で安心できる食べ物を協同して利用するという事業者団体の側面も持っています。食の安全・安心というのは、生協の歴史的な課題でもあるということです。
 そのような中、二〇〇八年一月に「餃子の中毒事件」がありました。「原料偽装」などいろいろな場面にも遭遇した経験もあります。

 それ以前にも、食に関わる様々な不安要素がありました。一番大きかったのが「BSEの発生」です。その時、消費者は「どのように動いたら良いのか」「どこに聞けば一番的確な情報が与えられるのか」。そんなことも含め、私ども生協にも「本当にこれ食べてもどうもないの?」というような、いろいろな声をいただいたことを鮮明に覚えています。また「鳥インフルエンザ」の時には、「鶏肉は食べられないね」とか、「玉子はどうなの?」とか、いろいろな不安を組合員さんからお聞きしました。

 私どもは、「食の安全確保というのは自己努力だけではできないのではないか」「社会的な仕組みが必要ではないか」ということで、二〇〇〇年から「食品衛生法」の改正の署名運動を行い、滋賀県で二十三万筆の署名が集まり、全国で一千三百七十三万筆という大きな署名が集まりました。二〇〇一年にBSEが発生したこともあって、国会は「食品安全基本法制定」に向けて大きく動いたという歴史的経過があります。
 さらに、「食品安全基本法」の趣旨にのっとると、国の施策と同時に、地方自治体にもそれぞれの責務があると思います。国との適切な役割分担をふまえて施策を策定実施するということです。

 滋賀県では「食の安全・安心アクションプラン」がありました。私もその制定に関わらせていただいたのですが、そのよりどころとなる条例制定がどうしても必要である。もし県が「やめた」と言ったら止められるような施策ではなく、「食の安全・安心の基本的な骨格を、条例として定めてほしい」と、二〇〇七年から運動を取り組ませていただきました。JA中央会、漁連、そしていろいろな消費者団体とともに、生産者、消費者、事業者、また行政も巻き込んで「三方良しの条例を作ろう」という取り組みでした。私たちは消費者の立場から、「安全・安心をもう一度生産者と一緒に考えよう」ということで、条例制定運動をやらせていただいて、昨年十二月制定になったという経過がございます。
 滋賀県生協連としてこの条例の制定を大いに歓迎するとともに、県民の食の安全を担保するということで言いますと、「安心感ある行政」というのが、柱として一つあると思っています。食品被害を未然に防止するとともに、生産者と消費者、事業者、そして行政、それぞれの情報を共有化することによって、少しでも「安心感のある行政」を実現していきたい。それが「信頼」につながるのではないかと思っております。

 消費者自らが食の安全をしっかりと正確につかむ。そういう努力も我々一人ひとり求められていると思っておりまして、会員生協ともども、学習やこのような情報の提供や発信のために、多く関わっていこうと思っております。

   工程管理・環境こだわりそして日本の食の見直し

柴田 続きまして藤井さん。お願いいたします。

藤井 JA滋賀中央会農業対策部の藤井と申します。


藤井 巧さん
滋賀県農業協同組合
中央会農業対策部長
 まさに今秋真っ盛り、収穫の秋ということで生産者も喜んでおりますが、今年に限りましては、夏の猛暑の影響を受けまして、滋賀県の農産物の品質が非常に悪くなっています。
 特にお米につきましては、昨年の秋以降米価が非常に値下がりをしてきて、生産者も非常に危惧しております。今年の新米を販売するにあたっても、昨年と比べますと大きく米の値段が下がってきたことの苦しみを味わっております。

 それに加えまして、今年の夏の猛暑の影響を受けまして、お米の品質が非常に悪い状況になっております。特に夏場の昼と夜の温度差があまりなかったことが一つの要因で、お米は「一等」「ニ等」といった品質の格付けをしますが、「一等米」の比率が極端に悪い。滋賀県だけでなく新潟とかの米処でも、滋賀県以上にご苦労いただいている状況です。

 そういった中で、我々JAグループといたしましては、日本国民の主食を預かる生産者の立場として、「消費者の信頼に応える形で如何に生産物を食卓に届けるか」と、日頃から取り組みをさせていただいています。

 その一つが、生産履歴の記帳です。みなさま方の食卓に届けられた農産物が、「どういった肥料、農薬を使って生産してきたか」とか、「どのような形で生産に取り組んだか」ということを記録する取り組みを進めてきました。日誌という形で記帳しながら、何か問題が発生した時には生産の現場にさかのぼって「どういった形で栽培されたものなのか」をすぐさま調べられる。こういった取り組みは、一〇年前、二〇年前にはできていなかったというのが正直なところだったのですが、食の安全・安心を脅かすいろいろな事件が発生したことが、「生産の現場でもこういった取り組みをしていかなければならない」という、一つのきっかけになったと思っております。

 こういった取り組みをもう一歩進めまして、「農業生産工程管理」。「HACCP(ハサップ)」と言われている製造工程管理を農業の現場においても導入し、みなさん方に提供する製品がどういった工程管理をしてきちっと安全で信頼が置ける製品を提供できたかということを保証する。そのような取り組みをすすめています。

 お米を例にとりますと、お米を植える段階で、田んぼがどういう土壌になるかといった管理から始まって、田植えから最終収穫を経て出荷していくまで、農薬、肥料を投入した日時とか量を責任持ってきちっと管理していく。出荷時には、お米の中に髪の毛などの異物が混入しないよう細心の注意を払っていく。このように、お米の生産から出荷までの間にトラブルが発生しないような取り組みを、近年生産の現場でもさせていただいています。

 もう一つ特徴的な取り組みとして、滋賀県が「環境県」であることから、農産物についても「環境にこだわった農産物をつくっていこう」ということで、「環境こだわり農産物」「環境こだわり農業」という取り組みを県行政と一緒に行っています。

 「滋賀県で生産されている農産物は、環境にこだわってつくられている農産物」というのが、当たり前になるよう、面積の拡大にも取り組んでおりまして、今現在、お米でいますと、作付面積の三分の一まで広げています。

 通常使う農薬、化学肥料の量を五割以下に少なくした農産物を「環境こだわり農産物」と呼んでいます。「環境こだわり農産物」には「認証制度」もあり、全国に無い形で「安全・安心プラス環境に優しい」農業に取り組んでいます。

 「環境こだわり農産物」の面積は、滋賀県が全国では一位。二位は農業県である北海道です。耕地面積から言えば北海道は滋賀県の数十倍も面積があるのですけれども、環境にこだわった取り組みの面積は北海道を超えています。

 さらに、私どもJAグループは「みんなのよい食プロジェクト」といったキャンペーンを行っています。

 現在、食料自給率が四〇%ということで、六割を外国に依存している。こういった日本の食を消費者も生産者も今一度見直していこうという運動を、JAグループの方から呼び掛けをさせていただいています。あらゆる国民のみなさんが日本の食について考え、少しでも国産の農畜産物の消費を増やそう。そういった取り組みを行っています。

   琵琶湖食品自主衛生管理認証制度がスタート

柴田 どうもありがとうございました。続きまして、遠藤さんお願いします。

遠藤 滋賀県食品衛生協会副会長の遠藤です。どうぞよろしくお願いいたします。


遠藤 仁兵衛さん
社団法人滋賀県食品衛生協会副会長
 近年消費者の方々の、不安や不信感は、滋賀県で毎年十件から二十件前後発生しています、ノロウイルス、カンピロバクター、ぶどう球菌、等の食中毒や、消費、賞味期限、アレルギ-物質、遺伝子組み換え等の食品表示に付いて、大いなる関心を持っておられます。

 そこで、私どもの、食品衛生協会は、昭和二五年に設立以来、食の安全・安心を追及して、お客様に信頼して頂くよう、事業を展開してきました。協会事業について、六点ほど具体的にお話させていただきます。

 (1) 活動の中核をなす食品衛生推進員は、食品営業者の中から、現在県下で六百人弱の方々が、知事さんから依頼を受けて、定期的に食品関係施設を巡回し、現場での助言や情報の提供を通じ、自主管理、衛生水準の向上に努めています。
 特に、食中毒ゼロを目指し、食中毒注意報の伝達や、手洗いの重要性、従事者の、健康管理や、設備の点検記録などの、保存を指導しています。

 (2) 食品の安全確保を図るため、製品の微生物検査や理化学検査、検便検査及び、井戸水検査等を、県食協九支部で、窓口受付して、利便を図っています。

 (3) 食品営業施設で、設置義務の必要な、食品衛生責任者の資格認定講習会を、知事さんから、指定を受けて、毎月開催して年間千二百人弱の方々が、資格を取得されています。

 (4) あってはならないことですが、万一の事故に備えて、協会会員むけに有利な(安心フード君)賠償共済制度があります。
 このような賠償共済に入っていないと、お客様は元より営業者も大変です。これらの普及にも力をいれております。

 (5) 後継者育成の為、青年部活動を十年前より始め、巡回指導や、びわこ食品自主衛生管理制度の研修会、手洗いの講習等を幼稚園等の施設で行って、自主的に研修しています。

 (6) 平成二二年一一月一日からスタートします「びわ湖食品自主衛生管理認証制度」について説明いたします。
 「滋賀県食品基準条例」で、営業者による自主的な衛生管理は、従来に増して強く求められております。協会といたしましても、条例の普及啓発に総力をあげ、推進いたします。
 協会独自の「びわ湖食品自主衛生管理制度」を導入し、条例に定められた、自主衛生管理や、法令の遵守等の実施状況を評価して、一定の水準にある施設を、認証して、より安全、安心な食品を提供することを目的としております。

 対象業種は、三四の許可業種と、届出業種の固定店舗です。また認証期間は三年で、それ以降は更新が必要です。
 くわしくは、後日食協のホームページか事務局へお問い合わせください。
 私も、ホームページから、ダウンロードして弊店に会う衛生点検チェックシートにいたし、活用しています。
 以上が事業の概要です、完遂のため、新聞「食品衛生」二回、支部で一回、発行いたし、又推進員、対象に、条例等の研修会を県食協、支部共、各一回以上開催しています。
 結びとなりますが、消費者、行政、製造生産者、一体となって食の安全安心を推進して、食の信頼を得られるよう、全力で取り組みます。ご指導、ご意見お願いいたします。

   食の安全性の確保と食への安心感の醸成

柴田 それでは滋賀県健康福祉部技監の山中幾治さんお願いいたします。

山中 県での取り組みについて、説明させていただきます。

 まず、「滋賀県食の安全・安心推進条例」のあらましですが、昨年の一二月二五日に県議会の方で上程され、公布されたところです。


 ご存知のようにこの条例制定に向けては、いろいろなところでいろいろな要望もございました。先ほど西山さんの方から「食の安全・安心条例化を求める滋賀県県民会議」の話もございました。

 また、滋賀県内の平成一四年以降、滋賀県内だけではなく、全国的でも起こった、非常にたくさんの食品の事故を受けて、県民の方々が食に対する信頼を無くしておられた。私どもの方では県政モニターの方に「食の安全に関するアンケート」を実施しているわけですけれども、平成一九年、平成二〇年には、「食に対して不安である」という方が四〇%を超えたという事態が続いておりました。

 平成一九年には、大きな菓子メーカーが消費期限の済んだ原材料を使ってシュークリームをつくったとか、「食肉」の事件、伊勢の方のお菓子の事件なり、料理屋さんの事件、そうした事件が多発しました。また表示関係でも毎日のように回収事例の報告が新聞に載る事態でありました。そうしたことから、食に対する「信頼」というものが無くなってしまった。

 滋賀県では平成一五年に、「食の安全を確保するための基本方針」を定めて、「食の安全・安心アクションプラン」に基づく二〇の取り組みをすすめてきました。そういう意味では「滋賀県では食の安全・安心取り組みがかなり出来ている」と私は思っていたわけです。ところがアンケートをさせていただくと、一九年には「食に対して不安である」が四〇%を超えた。「どちらかと言えば不安である」という方を合わせると、八〇%だったのです。五人に四人の方が「食に対して不安である」という、こんな結果が出ました。

 「今までのアクションプランで十分できる」と判断しておったわけですけれども、「これではいかん」ということで「条例化」ということになったわけでございます。

 ご存知のように、今生産者と消費者の関係が非常に遠くなっている。昔ですと「近くのお豆腐屋さんがつくった」「つくっているところがわかった」「あの方がつくられたものを私は食べる」という関係があったわけですけれども、生産者、製造者と消費者の関係が、非常に「希薄」になったのでなく、「遠く」になっている。そういう意味では、生産、製造の状況がわからない。それがまた信頼をさらに無くしているといいますか、得られにくくなっているのではないかなと。

 こうした、生産、製造、流通、消費者が一体になって、安全・安心に向けた取り組みが必要ではないかということを、この条例の中に規定したわけでございます。

 この条例の特徴は、「食の安全性の確保」と「食への安心感の醸成」ということです。(図1、図2)

(図1)

(図2)
 まず「安全に関わる事項」ですが、「食による健康被害の防止」。そのために条例で何を規制して行ったら良いのか。基本的には「食品衛生法」という安全を確保するための法文がございます。「そこに県の条例はどういうものを載せていったら良いのか」ということを考えまして、県条例として「生産段階における生産工程管理(GAP)の導入」、それから「製造段階でのHACCP(ハサップ)」。平成一八年から、滋賀県では試行的に、「SーHACCP(エスハサップ)」という制度を導入しておったのですけれども、条例の中で「知事認証」という条例に基づく認証制度を規定しました。

 それともう一つは、問題のある商品を流通させない。また早期に、速く把握するということで、「通報制度」「自主回収報告制度」というものを入れました。

 また、輸入食品等の問題が多発したことから、「輸入業者の届け出制度」もこの条例の大きな特徴でございます。

 それから「安心に関わる事項」ですけれども、「食の安全性への信頼の確保」。安全に対する信頼を確保するために、消費者のみなさんに食品そのものの安全性に対する理解を深めていただく。そのために、県が知識の普及をやります。「消費者の方は知識をつけてください。それが消費者の責務ですよ。力をつけていただくために県も一緒になってやりましょう」ということを条文の中に規定しました。

 また、生産者、食品事業者と消費者が意見交換等することによって、製造者の思っておられること、消費者の思っておられることの相互理解が深まるのではないか。それによって信頼が向上するのではないか。そうした事業を県としても支援していこうという施策です。

 さらに、「地産地消」につきましては、県民に身近なところで生産と流通がされるものですから、「食品そのものの現状への理解を得る」「食品を扱う人に対する信頼を得る」という二つの取り組みを重視する。そして、生産振興、県民に対する情報提供を行うことによって、信頼というものを推進していきたい。また、「地産地消」をすすめていきたいというように考えております。

 今日は、消費者の方々、生産者、製造者の方々、それぞれの立場のご意見をお聞きして、今後の施策の参考とさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

   毒と薬の違いは量で決まる。農薬、添加物と「量」の概念

柴田 それでは、私から質問を兼ねまして、少し議論を深めていきたいと思います。

 「安全・安心条例」に、一つのキーワードとして「食への安心感の醸成」という言葉があります。(図2)この図には、作る人と食べる人と行政が「信頼」という言葉でつながっています。

 しかし、一方ではこの関係に、食への「不安」「恐れ」でつけこむ人もいるのですよね。そういう点で、「毒と薬の違いは量で決まる」という、農薬、添加物などの「量」という概念がかなり重要だと思います。

 この点について生協の西山さんから「消費者も勉強をしている」という話がありましたが、食品添加物の量に関してはどのような勉強会をされているのか、話していただけますか。

西山 例えば、「メタミドホス」餃子中毒の農薬の汚染は一番高いレベルが一万九千PPMだった。後日、それは残留農薬ではなく意図的な混入であったことが明らかになりました。当時、我々は公言してはいませんけど、最初から「これは意図的な混入だな」ということで、「そのためのフードディフェンス(食品防御)を、いろいろな角度でとる必要がある」という話をしていました。

 私ども、今までは漠然と「安全か安心か」「白か黒か」と言っていたのですが、そうではなくて、例えば「ポジティブリスト制度」にある、〇・〇一PPMという量は、競技用プールにスプーン一杯ぐらいの濃度である。その濃度は体にどれだけの影響があるかということを含めて、科学的に立証されているものをしっかりと学ぼうというふうに変わってきました。漠然と不安を与えるだけではなくて、消費者もしっかり、残留農薬や化学物質についての知識をつけようという学習会もすすめさせていただいているところです。


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