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安心して住める「福島」を取り戻すために(4)

滋賀の生協 No.161(2012.12.25)
滋賀県生協連役職員研修
安心して住める「福島」を取り戻すために
~つながろうCOOPアクション・福島原発事故から見えてきたもの~

2012年9月15日 コープしが生協会館生文ホール

講師 熊谷 純一氏(福島県生活協同組合連合会会長理事)

   仮設住宅、避難先の問題

 四つ目の課題は「避難先の問題」です。仮設住宅は狭く、夏暑く冬寒い、六割の高齢者に生活機能低下があり、お亡くなりになる方も多い。また、家にばかりいるので飲酒によるアルコールストレスで、肥満と肝機能異常が増えています。

 「仮の町構想」。例えば会津若松市に大熊町、福島市に飯館村と、自分たちの町をつくる構想です。これも自治体との関係で揉めています。でも「やろう」と言っています。

   地域再生・福島ビジョン

 五つ目の課題は、「福島県復興ビジョン」です。これは県民の心を映した画期的なビジョンです。「三つの基本理念」と「七つの主要政策」で構成されています。

 「三つの基本理念」は「(1)原子力に依存しない、安心で安全で持続的に発展可能な社会作り(2)福島を愛し、心を寄せる全ての人々の力を結集した復興(3)誇りあるふるさと再生の実現」です。

 実は「原子力に依存しない」という言葉をめぐっては、委員会で激論がありました。しかし世論が「原子力に依存しない」という流れになり、それを反映したものです。

 「七つの主要施策」は「(1)応急的復旧・生活再建支援・市町村の復興支援(2)未来を担う子ども・若者育成(3)地域のきずなの再生・発展(4)新たな時代をリードする産業の創出(5)災害に強く、未来を開く社会づくり(6)再生可能エネルギーの飛躍的推進による新たな社会作り(7)原子力災害の克服」です。

 「未来を担う子ども・若者育成」は、子どもたち自身がビジョンづくりに参加できるシステムを作ろうということです。「(6)再生可能エネルギーの飛躍的推進による新たな社会作り」は、福島県を再生可能エネルギー基地にしようということです。

   そもそも!!地震列島

 世界の面積のほぼ三〇%が陸地です。日本は、その陸地の〇.二五%です。日本の原発は五四基。世界の原発の一二.五%です。一九九四年から二〇〇四年の十年間、世界のM六.〇以上の地震の二〇%は、日本で起きています。日本はそもそも原発を置いてはだめな国なのです。我々福島県は子どもの将来のためにも「脱原発だ」ということです。

 私たちは再稼働を許さない署名運動に取り組み、福島県内での署名が二十一万筆を越えました。ぜひこの運動での協同もお願いしたいと思っています。

   福島県の生協の決意

 (1)平和と脱原発の運動の先頭に立つ(2)生協の取扱い品は国の安全基準を守ることはもちろん、できる限りND(not detected 放射性物質不検出の略)のものを供給する(3)放射能から健康を守る活動をする(4)「子供保養プロジェクト」を進め、子供を守る。

 これが福島県の生協の決意です。東日本大震災は、人と人が本当に助け合うことが何よりも大切なことを教えてくれました。これは協同組合の心そのものです。

   子どもを守る

 私たちは、「子供保養プロジェクト」に取り組んでいます。皆様には子どもを守る活動での、末永いご支援をお願いいたします。

 文科省関係、つまり幼稚園児、小学生、中学生への支援は、足りない部分もいっぱいありますが、一応予算もついてプロジェクトも持っています。

 しかし、「乳幼児」を助けるところがないのです。唯一生協が取り組んでいるだけです。

 乳幼児は、出産や子育て初期の不安感も相まって大変深刻です。子どもは放射能に対する感受性が高く、大人の三倍程度の癌リスクを持っています。セシウムは八日間ぐらいで体から抜けると言われています。ですから、本当は一か月ぐらい低線量のところにいると癌リスクが減るのですけれど、せめて夏休みや冬休みを利用して、一週間に二日でもストレスを減らそうと取り組んでいます。

   防御の遅延

 二〇一一年四月、政府は、「三〇キロ以上離れた福島県内の学校における屋外活動について、放射線量年間二〇mSvを暫定基準値」としています。小中学校は「平常通り」に開始し、屋外活動も実施しています。ところが子どものリスクはその三倍でしょう。六〇mSvのところにいるのと同じ状態なのですね。「自然放射線による被ばくを除外して、それ以外の放射線で被曝しても安心できる許容範囲は、平時の基準で年間積算量一mSv」と法律で定められています。しかし政府は「今は緊急時なのだ」と、一年半経っても言っています。親御さんは不安なのです。「いつまで緊急時なのだ」ということです。

 大人も子どもも、胎児も同じ基準。しかも、初期被曝、内部被曝は無視して、「これからプラスしていく分が年間で二〇mSv」というのは、どうも我々は納得できない。「ただちに影響はありません」という枝野幸男官房長官(当時)の言葉で、子どもに「初期被曝」をさせてしまったことを、多くの子育て世代が悔いています。

 ところが除染はとても遅れています。水で洗うだけなので効果への懐疑も広がっています。屋内については基準値なく、一年を経ても子育て環境は「非日常」です。

 線量の高い地区のA保育園の例ですが、除染をしたのに今春またホットスポットが見つかりました。ところが国にも県にも「二度目」ということで断られ、自分たちで除染をしています。ゼロ歳児から一歳児は外に出してもらえない。かわいそうだと思います。

   保養プロジェクトが目指すもの

 一九八六年のチェルノブイリ事故では、欧米や日本など約三〇か国が被災した子どもを受け入れました。目的は病気療養、被曝の軽減などです。しかし今回、日本の子どもを本格的、継続的に受け入れている国は、まだ無いようです。

 「子どもの保養をどうするのか」という法律を作って、国が子どもを低線量の地域で保護する。そしてそこには宿泊施設も学校もあるという体制を作る必要があると思います。この点でも支援をお願いしたいと思っています。

 私たちの「子ども保養プロジェクト」では、子どもたちを温泉に連れて行って一緒にお風呂に入ります。そして子どもの体に痣などを見つけると、その親と話し合い、カウンセラーなどしかるべきところへ繋ぎます。

 子どもより親が病んでいる場合があるのです。父子家庭で、アパートで二人暮らしというお父さんも病んでいました。放射能についてもものすごく勉強をして、子どもを守ろうとするのですね。それが高じて少し精神的な袋小路に迷い込んだという例も見つかっています。子どもの問題は、親の問題でもあります。

 子どもは安心・安全な社会で育てるのが基本です。今「子ども条例をつくろう」という運動をやっています。福島市では議会を通りました。

   放射能から健康を守る

 「ホールボディ・カウンター」は、今郡山生協が一台持っていますが、後二台購入して、三台の運用で、医療生協を中心に組合員の健康を守ろうと考えています。

 ホールボディ・カウンターというのは、自分がどのくらい放射性物質を含んでいるかを測る機械です。約十五分の計測時間が必要だった今までの計測器と違い、二、三秒で測れます。それを車に積んで、組合員さんの自宅の近くまで行って計測する。そして異常があれば原因を追究し、場合によっては大学病院と繋ごうという取り組みです。

 「簡易食品放射線計測器」は生協のお店に置きます。そして生協で買ったものでも、あるいは他店で買ってきたものでも、測ります。

 県にも計測器はあるのですが、「流通している商品は安全」が県の建前です。だから自家製の作物しか計測してくれません。「スーパーマーケットで買ったものは安全だから測らない」ということです。「生協さん。もしも生協で買ったものから放射線が出たと言いふらされたらどうしますか」と、県から言われました。

 僕はコープあいづで、中国の餃子事件を体験しました。この餃子は、発覚する二か月前に「危ない」ということで、日本生協連に全部返品しましたが、返品したものから農薬が出たわけです。しかし、マスコミが殺到して、「どういう経路でこの商品が入ったのか説明しろ」と言うわけです。「日本生協連に説明を求めてください」と言っても、マスコミは許しません。「あなたには販売責任がある。どこから買ったかわからないのですか」と言われ、翌日の新聞に「生協は販売経路を把握せず」と書かれました。マスコミはひどいと思いましたけれども、必ず「販売責任」は追及されるものなのです。

 ですから自分たちで計測しておいた方が良いわけです。組合員も安心できます。

 その計測データは統一して、福島大学にある「うつくしまふくしま未来支援センター」と提携をしていくことにしています。

   土壌スクリーニングプロジェクト

 「汚染マップ」はイメージが悪いということで、「土壌スクリーニング」と言い換えることにしました。

 これは、より安全で安心な生産・流通・消費のシステムを作る一番基礎的な調査です。今、学者と生産者が測ってはいるのですが、生産者と学者だけの計測では、消費者は信用しないですね。だから、生協や、消費者も含めた団体で、「土壌スクリーニング」を行い、その結果を地図で可視化していこうというプロジェクトです。

 安全・安心システムの可視化により、出荷前検査のみの対策から、もっと総合的な対策へ、風評被害からも脱出し、さらに生産者との新たな協同を構築しようということです。

 これは被曝しません。記録する係です。三人一組で、田んぼや畑、果樹園を測ります。ぜひ興味のある方は参加してみてください。


   みんな仲良く

 福島県連の考え方は「みんな仲良く」ということです。生協にはいろいろな考え方がいっぱいあります。そのいろいろな考え方の違いをぶつけていくというよりも、「あなたの考えはこうです」「私の考え方はこうです」「お互いに意見交換をしました」「あなたの意見と違っているけれども、協同組合は心を寄せ集めるのだから、ここだけを寄せ集めましょう」ということで、「みんな仲良く」というテーマでまとめています。

 ご清聴ありがとうございました。

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