地域防災・減災の学習会
発災時にいのちを守るために
~家族と自分のためにできること~
地震や豪雨の大災害が現実味を帯びてきています。「家族や自分の命を守るために、今何が必要なのか?」「災害前の備えと発災時に取るべき行動は?」。ボランティアの防災士として、地域や自治会で「防災・減災の学習会」を行ってきた滋賀県共済生協の本田泰幸氏に講演いただきました。
講師:本田泰幸氏(防災士・滋賀県勤労者共催生協)
日時:2022年11月18日(金)
場所:コラボしが21
会場参加者:15人 オンライン参加者:10人
■災害は突然やってくる
今年の10月31日までの10か月で、日本に震度1以上の地震は1,676回ありました。震度3は173回、震度5弱以上は、昨年は10回でしたが、今年は14回です。
滋賀県では、震度1が23回、震度3が1回、3月31日に京都南部で震度4の地震があり、大津では震度3の揺れでした。気象庁の震度データベースには、1919年からの記録があります。滋賀県で起きた震度5弱以上の地震は4回。そのうちの2回は、「阪神淡路大震災」と「大阪北部地震」です。
日本は、4つの「プレート」が重なり合った珍しい地域です、これに合わせて「断層」があります。「阪神淡路大震災」以降、有名になった「活断層」とは、過去の地震で崩れておかしくなった地層のことです。日本に約2,000カ所あります。世界第4位の地震大国と言われています。
▪減災・防災対策していますか
「せんだいタウン情報machico」が、主に東北地方にお住まいの方に毎年実施している「震災の関する意識調査」で、「防災減災について何か対策をしていますか(複数回答)」という質問の9位の回答は「何もしていない」です。
もう一つ興味深いことは、「3位、家具の固定」「8位、自宅の補修・強化」は地震に備える準備ですが、それ以外は「地震後のための対策」です。地震で命が助かること前提の対策であって、地震前の対策は、ほぼできていないというのが現状です。
一方、セコムが、全国の人を対象に実施したアンケートの3年間(2018年~2020年)の比較では、「何か防災対策していますか?」の質問に、いずれの年も、40%前後が「なにも対策はしていない」と回答しています。
対策をしている人が増えた2018年は「大阪府北部地震(6月18日)」がありました。
▪人はなぜ避難(準備)しないのか
今日の講演のテーマは二つ。一つは「人はなぜ行動しないのか」。そのバイアス(自分の思い込みや周囲の環境といった要因により、非合理的な判断をしてしまうこと)を打破することです。もう一つは、「命は守ることが何よりも大事だ」という「優先順位」です。
まずは「バイアス」の打破です。「バイアス」は、人が成長していくために必要なリスクでもあります。例えば、子どもが熱いものに触って火傷する。子どもはリスクを十分理解していません。でも、リスクがわかっていないからこそ、いろんなことを試し失敗し、成長発達します。失敗しないことは、問題解決のスキルが身に付かないことです。でも、防災ではこの「バイアス」が邪魔になります。
「バイアス」は4つの人間心理から読み解くことができます。
「バイアスは重要ですが、防災上は邪魔になる」この点を理解していただきたいと思います。
■自然災害
「災害対策基本法」は自然災害を「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火、その他異常な自然現象により生ずる被害」と定義しています。最近は「異常な自然現象」が多発しています。
日本は世界でも自然災害が特に多い国です。少し古いデータですが、2000年から2009年、マグニチュード6.0以上の地震回数の20.5%が日本です。
日本で自然災害が多い理由は、位置、気象、地形、都市構造、地球温暖化だと、私は考えています。
「位置」的には、4つのプレートが重なる場所に日本はある。「気象」は、アジアモンスーン地域に当てはまりますが、地球温暖化の影響も重なり雨が多くなっている。「地形」的には、日本の70%は山地、丘陵です。にもかかわらず、埋め立てて家を建てる。におの浜、打出浜周辺も高層マンションが建っていますが、ほぼ埋立地です。それから「都市構造」。これは埋め立てに加え、河川や橋、山、湖岸、ぎりぎりまで家を建てています。
▪雪害
昨年も雪の被害がありました。実は日本の半分以上の県は、豪雪地帯と定められています。滋賀県も、特に余呉は特別豪雪地帯です。木之本、浅井、西浅井、高島、マキノのあたりも豪雪地帯と定められています。「毎年降ってもおかしくない」地域であることを、改めて知っていただきたいと思います。
【図1】滋賀県の豪雪地帯
・雪害の主な8対策
これは、代表的な例でしかありません。ネットとか見れば、いろんなことが書いてあります。
みなさまにご紹介したいのは、「家族と安否確認について話し合っておく」です。
「171の電話(災害発生時、被災地への通信が増加しつながりにくい状況になった場合に提供が開始される声の伝言板)」は有名です。オススメは、「google:パーソンファインダー」「NTTレゾナント:J-anpi」です。アプリが使えることが条件ですが、災害発生時にだけ提供される安否確認サービスで、家族や友人の「安否を確認する機能」と「自分の安否を伝える機能」が用意されています。
確かな積雪・雪害情報を手に入れることは大事です。家にお年寄りがいて、「まだ昔のテレビなんだよ」という方には、「光テレビ」の導入も留意していただければと思います。
Check!! (代表的な例でしかありません)
・作業環境や天候を確認しつつ、定期的に除雪作業を行う
・転倒防止のため大雪の際にはなるべく外出をしない
・車の運転をする場合は、路面やタイヤを確認する。
・防災グッズ(備蓄品)を見直しておく。
・外出ができなくなる可能性があるので常備薬の準備をしておく。
・家族と安否確認について話し合っておく。
(『171』もいいが、オススメは「google:パーソンファインダー」「NTTレゾナント:J-anpi」)
・災害情報を確認する。(光テレビの導入)
・モバイルバッテリーの携行(発電機、蓄電池、ソーラーパネル)
▪水害
「びわ湖は数百年かけて北へ移動している」という説をご存じですか?「もともと伊賀の方にあった琵琶湖が、時代とともに北へ北へと琵琶湖の位置が変わってきたと言われています。
【図2】琵琶湖移動
洪水浸水想定区域図の、ピンク色になっているところに、琵琶湖の移動図をあてはめてみると、琵琶湖が移動してきたあたりが弱いということに気づいていただけるのではないでしょうか。
【図3】淀川水系琵琶湖 洪水浸水想定区域図(想定最大規模)(全体図)
・水害の主な11対策
唯一予測できる災害が「水害」です。だから「水害」は、人災です。「台風が来ているのに、なんで屋根に上るの」「なんで海に行くの」と思いませんか。「バイアス」を打破して、「まあ、避難せんでええやろう」じゃなくて「しっかり逃げる」正しい避難行動をお願いします。
意外と知られていないのが、「下水の逆流防止」。洗濯機やお風呂の排水口に「水を入れた袋」をのせてください。ここから水があふれた水害は、「床上浸水」ではないので、保険の対象になりません。
動きやすい服、しっかり縛れて機能的なスニーカーで逃げてください。長靴は、かえって危険です。
車が冠水、水没して、ドアを開けることができない場合があります。ハンマーを積んでなければ、ヘッドレスト(車のシートの上についている枕のようなパーツ)を引き抜いて、二本の棒の一本を、窓の隙間に差し込んでテコの原理でガラスを割る。これで水圧を回避してドアを開けることができます。
【Check!!】 (代表的な例でしかありません)
・唯一、災害を予測できる。(アンダーパス等の掘り下げ、くぐり抜け式道路の確認等)
・必要な正しい避難行動を知る。
・雨水枡、排水路の清掃。(雨樋)
・下水の逆流防止。(これ意外と知られていません)
・非難は早めに。
・動きやすい服(スニーカー)二人以上で行動。
・歩ける深さは約50cm(流れがあるときは約20cm)
・傘などで足元確認しながら移動。
・リュックは前方に。(少しずつビニール袋に詰めて)
・車はマフラーを超えるなら、進入禁止(閉じ込められたらヘッドレストを使って)
・情報は正確に入手。
■第壱話 地震襲来
▪南海トラフとは
「南海トラフ地震」は、マグニチュード8~9クラスの地震の30年以内の発生確率が70~80%とされています。(2020年1月24日時点)「南海トラフ地震」が怖いのは、「3連動(東海地震、東南海地震、南海地震がほぼ同時に発生)」に付随して、富士山が爆発する可能性。それに誘発されて、「関東大震災」クラスの「首都直下型地震」という「4連動」の可能性もあるということです。
「南海トラフ」とは場所のことです。四国の南の海底にある水深4,000m級の深い溝(トラフ)のことです。ここで、マグニチュード8クラスの地震が100~150年周期で繰り返し発生います。そして、1854年の安政東海地震以来発生していません。
南海地震、東南海地震、東海地震の3連動で、西日本大震災が起こる可能性があります。江戸時代以前にまで遡ると東海地震、東南海地震、南海地震はほぼ同時に発生したことが確認できます。南海トラフにおける海溝型地震は、一定の間隔で起きる「周期性」と、同時に起きる「連動性」が大きな特徴です。
3連動があった「南海トラフ地震」は、167年間来ていないということは、今すぐに来てもおかしくない。これが「発生確率が70~80%」という根拠です。ただ、見方によっては、1946年の「昭和南海地震マグニチュード8.0」から74年しか経っていないとも言えます。
「今来てもおかしくないし、もう少し先なのかもしれない」。しかし、「いつどこで何が起こるかわからない」「この瞬間に起きてもおかしくない」というところを、改めて知っていただければと思います。
【図4】東海・東南海・南海地震の発生状況
▪南海トラフの巨大地震による震度分布
「南海トラフ地震」が起きれば「滋賀でも震度約6強~5弱の地震になるだろう」ということです。
もう一つ、30年以内に震度6弱以上に見舞われる確率の分布図でも、琵琶湖が移動してきた跡あたりが、非常に地盤が弱いということです。
【図5】30年以内に震度6弱以上に見舞われる確率の分布図
出典:防災科学技術研究所 https://www.j-shis.bosai.go.jp/map/
▪被害予測は条件で変わる
県の「南海トラフ地震の被害想定」では、死者が300人から500人、負傷者が約10,500人、停電が約80万戸、断水が約70万戸ですが、震源地がどこになるかで数字は変わります。
想像していただけますか。「東日本大震災」が、朝6時前だったら、たぶんもっと多くの方が逃げ遅れていたでしょう。「阪神淡路大震災」が午後3時に発生していたら、街には大量の人がいたでしょう。要するに、季節や、時間や、発生の条件で被害は大きく変わるということです。
大切なことは、滋賀県が決して安全ではなく、地震が来た時をイメージし「正しく恐れる」ことです。
▪「長周期地震動」と「短周期地震動」
震度6弱の揺れとはどれくらいか?「・立っていることが困難になる。・固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。ドアが開かなくなることがある。・壁のタイルや窓ガラスが破損、落下することがある。・耐震性の低い木造建物は、瓦が落下したり、建物が傾いたりすることがある。倒れるものもある。」と予想されています。《出典:気象庁(平成31年2月》
ちなみ、「大阪府北部地震」では、高槻市で震度6弱、大津市は震度5弱、彦根・長浜でも震度4を計測しました。「阪神淡路」では震度5でした。このころは、「強」とか「弱」はありませんでした。
地震の揺れには種類があって、周期別に6種類に分けられます。大きくは、「長周期地震動」と「短周期地震動」という波の違いです。
「短周期地震動」とは「直下型地震」です。小さく強い縦揺れが起きます。一軒家の揺れがひどいです。5,6階建ての学校や病院から、20,30階マンションになるほど揺れが少なくなります。
これに対して「長周期地震動」は、遠くで強い縦揺れがあり、それが段々波になって、大きな揺れがやってきます。すると、一軒家よりも、5,6階建ての学校や病院から、さらに20,30階マンションの揺れの方が大きいです。「東日本大震災」も「長周期地震動」でした。「東京タワーの先っぽが少し歪んだ」というニュースを聞きませんでしたか。大阪ワールドトレードセンター(265.55m5階建て、震度3)で、最大振り幅は2.7mでした。反復横跳びの距離ぐらいです。それが1.5秒間隔でゆらされました。家具の固定が重要です。固定されてなければ、凶器のように飛んできます。今度の「南海トラフ地震」では、この大きな揺れがやってきます。大阪府北部地震とは、全く揺れの種類が違うということです。
じゃあ、「長周期地震動なら、一軒家は大丈夫」と思われますか。例えば、瀬田川の地下には大きな岩盤が通っています。この岩盤に「長周期地震動」が当たって屈折すると、その周辺だけは「短周期地震動」になる可能性もあるということも、併せて知っておいてください。
【周期別でみる地震動】
➃ 稀(やや)長周期地震動。周期2秒~5秒の地震動。巨大タンクや鉄塔など、中規模建築物が最も揺れやすい地震動。
➄ 長周期地震動。周期5秒以上の地震動。高層建築物や鉄塔など、超高層建築物が最も揺れやすい地震動。周期が短い揺れに比べ、建物などの揺れる幅が大きく、重いものが建物の揺れにあわせて高速で移動し、人やものを傷つけるような被害が起きる。
➅ 超長周期地震動。周期数百秒以上の地震動。地球全体が最も揺れやすい地震動。
※高層建築物とは、国土交通省の法令運用では6階以上の建築物を呼ぶことが多い。消防法では高さ31mを超える建築物。
※超高層建築物とは、統一した定義はないが、高さ100m以上の建築物を呼ぶことが多い。
■第弐話 未だ知らぬ津波
津波の最大値(予測)です。身近な場所、串本町、南あわじ、住之江区に★をつけました。住之江区へは1時間50分後に約5mの津波が来ると予測されています。これも震源地がどこなのかによって全く波が変わってきますが、これぐらいを予測しておけばということです。
大阪のWTCがある住之江区は1時間50分後なのに、南あわじには39分で到着します。これは淡路島があって一旦海の幅が狭くなる。ここで一回スピードが止まり、力を蓄積して津波の高さが上がります。しかしこれで時間を稼ぐことにもなります。
参考までに、淀川を遡上してくる津波は、大体枚方あたりまでと言われていますので、滋賀県にはほとんど関係がないのかもしれません。
【津波の最大値(予測)】
高知県黒潮町(8分後) 34m
高知県高知市(16分後)16m
和歌山県串本町(2分後)18m ★
大分県佐伯市(18分後)15m
宮崎県延岡市(18分後)14m
愛媛県宇和島市(29分後)13m
徳島県徳島市(44分後)7m
兵庫県南あわじ市(39分後)9m ★
大阪市住之江区(1時間50分後)5m ★
香川県高松市(1時間56分後)4m
愛媛県松山市(2時間17分後)4m
長崎県長崎市(2時間28分後)4m
岡山県岡山市(3時間21分後)3m
広島県広島市(3時間42分後)4m
▪液状化
滋賀県において問題になるのは、「液状化」です。「長周期震動」では「液状化」が問題になってきます。滋賀県は埋立地が多く、オレンジ色になっているところが危ないです。
【図6】液状化の可能性
「液状化」の対策は、方法はありますけど、「ほぼ無理」なんです。
「液状化」で問題なのは「傾き」ではなく、傾きが人体に及ぼすストレスです。家の傾きの許容範囲は、新築の家なら0.17度以内、中古住宅なら0.34度以内とされています。それを超えると、平衡感覚が狂い、めまい、浮遊感、吐き気、頭痛、肩こり、腰痛、睡眠障害、食欲不振などの健康被害が出てきます。
液状化実験器具はコープしが4店舗のカウンターに置いていますので、体感しに行ってみてください。
▪揺れから身を守る(家の中編)
「とにかく扉を開ける。(特にトイレ中)」。地震に一番強い場所はトイレです。次に強いのは玄関です。ただし、扉を閉めっぱなしにしたトイレは、揺れが収まった時に開かなくなる場合がありますので、揺れたらとにかく扉を開けるようにしてください。
【Check!!(家の中)】(代表的な例でしかありません)
▪タンスの中身は重い物から下から上に。
▪倒れやすい家具や家電を固定。
▪飛散フィルム(滑り止め)。お皿は大中小ではなく、中小大。
▪高いところに物を置かない。
▪スリッパor靴を寝室に。(サイリウムが役に立つ)
▪玄関と寝室には物(家具)は極力置かない。※動線確保
▪役割分担を決めておく。
▪揺れがおさまってから、火の始末。(ブレーカーを落とす)
▪とにかく扉を開ける。(特にトイレ中)
▪揺れから身を守る(外出中)
「家族との連絡方法や集合場所を決めておく」というのは、よく聞くと思いますが、「時間を決めておく」ということも大切です。集合場所を決めるだけでは、その場所を離れることができません。例えば「8時、12時」と決めておくと、8時に来なくても希望を見出せ、次の12時までは別の行動がとれます。
この辺りは、本、ネットなど情報収集をしておいていただきたいと思います。
【Check!!(外出中)】(代表的な例でしかありません)
▪カバンを頭に。(上着を丸めて頭を守る)
▪自動販売機、門扉などの近くは避ける。
▪公園や学校が近くにない場合は、根の張った街路樹の下。
▪車が多く停まっているような駐車場は避難場所から避ける。
▪デマに惑わされない。
▪家族との連絡方法や集合場所を決めておく。(時間が重要)
▪地下は安全。停電時に慌てずパニックにならないことを注意。
▪運転中なら落ち着いて車を左に寄せて止めること。
非難に車を使わない。ドアロックはせずに鍵はそのまま。揺れがおさまったら、車は空き地に移動。
■第参話 つかない、電気
「非常用持ち出し袋」には「種類」があります。今日は、「地震が起きたから」ではなく、「常日頃から準備しておきたい非常持ち出し袋」についてお話します。
その前に、私は「100均1,500円で供えるぞ」グッズをカバンに常時携帯しています。「結束バンド」、「簡易トイレ」は「阪神淡路大震災」で有名になりました。「歯磨きシート」は「東日本大震災」の時に、阪神神戸の方々が救援物資として送っています。「テーピングテープ」は芯をとって圧縮しています。
みなさんに常時持ち歩いて欲しい非常袋の中身は、「ラジオ」、「懐中電灯」、「笛」です。「スマホ」にこの三つのアプリを入れていただいても結構です。すると、「モバイルバッテリー」も必要になります。
「100均」のキャンプ用品のコーナーに「ご飯が炊ける炊飯袋」があります。実際に、米を入れて蓋をして、お湯の中に入れるとご飯が炊けました。皿が汚れませんから節水にも役立ちます。
▪独断と偏見。防災3種の神器
NO1.「新聞紙」。新聞紙を水につけて絞り乾かせば、薪になります。炭のようにゆっくりと燃えます。じっくり揉むと柔らかい布のようになり、服の間に入れると暖がとれます。靴下の中に入れればスリッパ代わり、俎板代わりにもなります。細かく切れば消臭効化もあります
NO2.は「食品用ラップフィルム(サランラップ)」、NO3. は「レジ袋(ゴミ袋)」。このようなものはネットで、事前に知っておくといいのではないでしょうか。
▪支援可能地域が全滅
「南海トラフ地震」が発生すると、おそらく東は千葉から南は鹿児島まで壊滅です。近畿、瀬戸内海は「津波」が5m~7mで全滅です。「東日本大震災」は東北だけでしたから、首都圏から応援・支援が可能でした。しかし、「南海トラフ地震」は支援可能な地域が全滅します。ですから十分な備えが必要です。「三日分の備え」とか言われますが、「1週間から10日分以上」を目指してください。
▪命の72時間
「東日本大震災」における自衛隊による人命救助者数の数を見ると、概ね発災から72時間が経過した段階で、自衛隊が救助できた人数が大きく減少しています。つまり、生存者を救える数は、いかに迅速かつ大規模な人員を人命救助活動に投入できるかで、活動の成否が分かれるということです。
逆に言えば、72時間は、生き残った私たちが非難所に行っても、誰も何もしてくれないということです。避難所運営は誰がするのでしょう。行政でしょうか。最初は自分たちでしなければなりません。
【グラフ1】東日本大震災において自衛隊が救助できた人数と派遣隊員数
2012年防衛白書の資料より抜粋
■第四話 避難所の闇の中で
▪在宅避難のススメ
避難所は予想以上に大変です。プライバシーがないだけじゃない、家族の安否がわからない方の負の空気に押しつぶされそうになります。そういった中で、どうすごすのか。
【東日本大震災の被災地住民への内閣府の実態調査より】
・避難所に何日、滞在をしたのか? 751人
・1日16% ・2~3日33% ・4日~2週間16% ・2週間~1か月10%
・1か月~3か月8% ・3か月~6か月4% ・それ以上13%
・(自由記述の意見から)
・プライバシーがない ・板の間の生活 ・必要なものが手に入らない
・いつまで頑張ればいいのかわからない
「東日本大震災」の被災地域住民の約5割の方が、3日以内に避難所を後にして、自分の家に帰っています。大きな地震などに遭った後に、自宅で生活することを「在宅避難」と言います。住み慣れた環境でプライバシーも保てますが、安全に暮らすには日頃からの準備が必要です。
そのために、一部屋でいいから「災害部屋」をつくってください。箪笥などの物を置かない部屋です。もし置いたとしても固定しておくようにしてください。
【在宅避難。その判断基準は】
➀ とにかく準備ができている。(ガスコンロ・ボンベなど)
※最低でも1週間分の水と食料の確保。いや、それ以上に準備を。
▪ライフライン復旧の目安
電気の復旧は意外と早いです。ですから、IHやガスボンベなどは早い段階で活用できそうです。
【ライフライン復旧】
▪熊本地震 電気・水道:約1週間 ガス:約2週間
▪東日本大震災 電気:約1週間 水道:約3週間 ガス:約5週間
▪自宅キャンプのすすめ
家族には何も言わず、いきなりブレーカーを落とします。「今、この瞬間に地震が来た。電気、ガス、水道が止まった。どうしよう?」を体験させます。楽しみながら、防災を考えることができます。何より、そこに「気付き」があります。ないモノ、あったら便利なモノ、意外に子どもたちが教えてくれます。電気・ガス・水道は使えない生活が、どれだけ大変か、いろんな事を、遊び感覚で楽しみながら、その解決策を体験や子どもたちが教えてくれます。季節ごとに試してみることがポイントです。
■再建(被害を最小限に留めるために)
せっかく助かった命です。再建についても考えましょう。
「うちは耐震構造だから大丈夫」「地震保険に入っているから大丈夫」と言われる方がおられます。
しかし、日本の「耐震構造」は、「短周期地震」に対する基準であって、「長周期地震」には対応していません。さらに「耐震構造」とは、「倒壊しない」という意味であって、「壊れない」わけではありません。
「地震保険」の目的は、「生活再建」の費用補填であって、「家の再建」ができるわけではありません。
【再建】
▪生活に必要な経費
※当面の生活が確保できた時期までに掛かった経費
「200万円以上の支出」が最も多い。(※こくみん共済COOP調べ)
▪住宅再建費
※住宅の建設・購入・賃借の経費
全壊・大規模半壊・半壊ともに2000万円以上が最も多い。
【耐震改修費用の目安】
木造住宅 鉄筋コンクリート造建物
改修費用 (木造住宅1棟当たり) 床面積1㎡当たり
150万円/棟~200万円/棟 15,000円/㎡~50,000円/㎡
備考 在来工法 建築物の規模、改修の程度等により異なる。
(構造用合板や筋違いによる補強) 設計・工事監理・改修工事
(補強前0.5程度~補強後1.0程度 (躯体工事のみ)の合計
▪被災者生活再建支援法
阪神・淡路大震災を契機とし、1998年に「被災者生活再建支援法」が成立しました。これにより次の公的な支援制度ができています。この支援法制定に向けて一緒に署名活動をした方もおられるのではないでしょうか。令和2年には、支援法の改正でさらに補償が充実してきています。(令和2年12月4日の一部改正。中規模半壊(30%)での加算支援金が追加されています。)
【被災者生活再建支援法】
対象となる支援災害。10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村や、100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県など。
対象となる被災世帯。 ⓵住宅が全壊した世帯。
②住宅が半壊、または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯。
⓷災害による危険は状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長時間継続している世帯。
➃住宅は半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯。(大規模半壊世帯)
対象となる自然災害。 ⓵基本支援金...100万円(大規模半壊は50万円)
⓶加算支援金...建設・購入200万円、補修100万円、賃貸50万円。
■1995年阪神淡路大震災
■さいごに
「今私にとって大事な人、大事なもの」をイメージしてください。
「阪神淡路大震災」の死者は約6,500人、「東日本大震災」は約20,000人、「熊本地震」は約50人、「大阪府北部地震」は6人。一人の人が20,000人死んだのが「東日本大震災」ですから、20,000の悲しみがそこにある。またそこに身内がいると、また感じ方も違うと思います。
11月11日から、新海誠監督の最新作「すずめの戸締まり」が公開されています。平穏に暮らしていた少女が一人の青年との出会いをきっかけに、災いを呼び込む扉の戸締の旅に出るアニメです。監督は、東日本大震災から10年以上経過し、「今ならまだ多くの人が想像力を働かせることができるのではないか」と"地震"をテーマにしています。このアニメの中に、「いってらっしゃい」「おかえりなさい」という言葉がありました。この当たり前の言葉を、もしかしたら言えずに会えなくなるのかもしれません。ぜひ、自分の大切な人を守るために、何か行動に移していただければと思います。
ご清聴ありがとうございました。